暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

闘魚は沈んだ

2013-05-01 | -2013
紫色の足の先、
爪がぼろぼろ剥がれ落ち、
滲み出す水の赤黒さ。

彼はとても綺麗な足をしていた。
長い指と、美しい踵。
節くれだったそれでもなければ、
変にやわこいそれでもない。
私は彼の足が羨ましかった。

紫色の足の先、
ひやりと冷たい足の先。
それからぬるむ足の先。

役に立たないのだ、綺麗な足は、
鑑賞用の魚がたやすく死ぬように。
鮮やかな闘魚も闘わせれば襤褸になる。
美しい人形のような足は、
羨ましくもあり蔑んでもいた。

どうか血を通わせておくれ、
どうか熱を分けておくれ。
腐ってしまった痛い痛い、

彼のような足になりたい、
彼のような足などいらない、
長い足も短い足も、
みな美しき鰭を纏っている。
爪は腐り、指は落ちて、
踵は割れ、揖保をこさえた、
水の滲み出す冷たい足など、
ただ沈みゆく闘魚と同じ。
しかし鰭を広げるだけの、
ただ美しきものになど。
どのみちなれはしないのだ、
彼のような足になど、
どのみちなれはしないのだ。

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