昨夜は重たい人間ドラマを鑑賞しました。
「ザ・レッジ 12時の死刑台」です。
ある男がビルの屋上の縁に立ち、今にも飛び降りようとしています。
そこへ、刑事が自殺を思いとどまらせようと説得にかけつけます。
男が刑事にここまでにいたる経緯を語りだし、それがドラマになります。
男はホテルの副支配人。
あるアパートでゲイの友人と同居しています。
同じ階の部屋に夫婦が引っ越してきて、夕食をともにします。
その夫婦の妻と、副支配人が純愛と言って良い激しい不倫関係に陥るのです。
男には妻子がありましたが、幼い娘の死をきっかけに離婚。
人妻は元麻薬中毒の娼婦。
その夫は飲む・打つ・買うの三道楽に陥り、妻子に捨てられた過去を持っています。
夫はキリスト教への深い信仰で真面目な生活を取り戻し、妻は夫と出会い、その助けでドラッグからも売春からも抜け出すことができました。
おまけに刑事にも妻の不倫疑惑という問題があります。
問題だらけの登場人物が、新たに不倫という問題を起こし、しかも無神論者の副支配人とキリスト教原理主義者の夫とは思想上の暗闘をも繰り広げます。
妻の浮気に気付いた夫は、正午までに飛び降り自殺しなければ妻を殺す、と副支配人を脅します。
不倫の熱に浮かされた副支配人はその言葉に従って指定された場所に立ち、正午を待ちます。
夫はそこが良く見えるホテルの一室で妻に銃を突きつけて待っています。
かくて副支配人は正午と同時に、刑事の説得も虚しく飛び降り自殺。
夫は逮捕され、妻は良き夫と愛する不倫相手を同時に失い、孤独のどん底に突き落とされます。
結局登場人物のすべてが不幸になるという救われないストーリーです。
この映画、じつは宗教の問題がかなり大きな要素を占めています。
無神論者、キリスト教原理主義者、さらに副支配人と同居するゲイの男はニュー・エイジ運動やカバラ哲学にはまっています。
そして妻は夫に従いキリスト教原理主義を信じているように見えますが、じつは何も信じていないという意味で、無神論者よりも虚無的です。
これらの思想上の暗闘がストーリーに影を落とし、物語に深みを与えているように思います。
ただかなり重い内容なので覚悟して観ないといやぁな気持ちになることは間違いありません。
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