近頃ブログの更新が減ってしまいました。
異動して仕事が多忙を極めているせいか、あるいは精神の衰えか。
DVDもコメディばかり観るようになりました。
年を取ると趣味嗜好が変わるのでしょうか。
今日は「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」という作品を鑑賞しました。
妻は落武者風だったり、ワニに食われていたり、様々な趣向を凝らして死んだふりをしています。
そのエキセントリックな行動は観るものを混乱させます。
しかしその底には、幼い頃に母を亡くしたという強烈な経験があります。
寂しくて泣いてばかりばかりいる父を笑わせるために取った行動が、大人になっても抜けないのです。
妻が死んだふりをする以外は、新婚夫婦の何気ない日常が静かに語られます。
変わったことは何も起きない、日常。
その日常は、人間の幸福というものを考えさせられます。
妻はなぜか、昼間でも、よく「月が奇麗ですよ」という言葉を発します。
戸惑う夫。
しかし妻の実家で、文学の参考書をみて、その意味を悟ります。
夏目漱石が、「I Love You」というセリフを「月が奇麗ですね」と訳したことを知ったのです。
日本人らしい、奥ゆかしい表現が泣かせます。
妻はしょっちゅう、夫への恋しい気持ちを言葉にしていたのです。
妻は夫に恋し、夫もまた、妻を必要としていたのです。
突飛な物語が、淡々とした日常のなかに、じんわりと心を躍らせる恋の物語であったことが知れます。
美しい物語です。
ぜひご鑑賞ください。