バッハの「無伴奏チェロ組曲」を好んで聴くようになるまでに、13年かかった。
初めて聴いたのは、静岡のSさんの車の中。カザルスのCDをかけてくれた。クラッシック音楽=オーケストラと思い込んでいた私は、チェロという楽器を単独で演奏する曲があることを初めて知った。「なかなかシブイな」と思った。間もなく私もカザルスのCDを手に入れ聴いて見た。太極拳や気功教室のBGMなどにも使い、頻繁に聴いた。しかし、その曲は相変わらずシブイままで、好きにはならなかった。
その後、バッハではヴァイオリンやピアノの曲に興味が向いて、「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ」や「無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ」「平均律クラヴィーア曲集」などを好んで聴いた。「無伴奏チェロ組曲」もカザルス以外の演奏者も聴いて見た。「シュタルケル」「フルニエ」「ロストロポーヴィチ」など。私は「エンリコ・マイナルディ」という人の演奏がゆったりとして、伸びやかな音色で、抵抗無く聴けた。
最近になって何故か、「無伴奏チェロ組曲」が聴きたくなる。身心がそれを欲している。朝、仕事に出かける前に聴きたくなる。帰って来た後にも。休みの日の午前中にも聴きたくなる。或いは「立つ練習」のBGMに・・・
私は音楽を勉強したことが無いから、音楽をどのように理解すれば良いのかを知らない。名曲とは一体何を指すのかを知らない。ただ私は、自分の身体の欲するものを聴きたいと思っている。今の私は「無伴奏チェロ組曲」を欲している。演奏はカザルスが多い。