T.NのDIARY

写真付きで、日記や趣味をひとり問答で書いたり、小説の粗筋を纏めたブログ

「ひとでなし」を読み終えて-1!

2011-10-22 14:43:53 | 読書

 澤田ふじ子の時代小説。7編がまとめられた京都の公事宿事件書留帳シリーズ第六弾。

 各編の内容を1行で紹介し、その後に各編のあらすじを2回に分けて紹介する。ただし、私自身が興味を持った京都の風物の記述部分も紹介したかったが、そのあたりは長くなるので省略した。

「濡れ足袋の女」

 不逞な縁を持ったために、悲惨な運命に陥らざるを得なかった大店の女主人の話。

 風邪のため、一人で留守番をしていた鯉屋の下代・吉左衛門は、長屋の軒下で足元を濡らして雨宿りしていた女を土間に招き入れた。

 女が濡れた羽二重の白足袋を忘れて帰ったので、洗濯し物干し竿に干していた。

 数日後、女の土左衛門が上がった。蝋燭問屋の大黒屋のお志乃という女主人だったが、足袋を履いていなかった。

 素足の事を耳にした見物人の中に吉左衛門と同じ長屋の者がいて、長屋に帰ると物干し竿の足袋を見付けて奉行所に届けたので、吉左衛門が容疑者として連行された。

 下代が殺人を犯すわけもなく、鯉屋の者たちは皆で手掛かりを探していたが、中々見つからない中で、少女のお与根が豆腐屋で顔見知りのお鈴に出会った時に、狼狽えて豆腐を落としたことを思い出し、お店さんに告げた。

 吉左衛門が奉行所に連行されていることは内緒にされているのにと、源十郎と菊太郎はお鈴の家に行き、父親の弥七にあった。

 弥七は隠し通せるものではないと、過去の経緯から話し出した。

 弥七の弟・政吉はお志乃の実家で手代をしていて、お志乃は軽はずみから深い仲になり、政吉は金を与えられて店を出され、二人の間に生まれたお鈴は弥七の家に里子に出された。

 大黒屋に嫁いだお志乃は、弥七の幼馴染だといって何かとお鈴に目をかけていた。

 政吉が数十年たって半月ほど前に京都に現れ、志乃に二百両出せと強請りをかけたが、彼の要求を強く撥ねつけ、その結果殺されたのだという。

 吉左衛門のことを気にしていた源十郎は、何故早く申し出なかったのだと、お鈴の気持ちを思う弥七の心は解っていながら叱責した。

 外で聞いていた銕蔵は政吉がいる藩の中間部屋に配下を急がせた。

「吉凶の蕎麦」

 努力して手に入れた蕎麦屋を地上げ屋が買い取ろうとして邪魔するが、菊太郎の思わぬ提案で解決した話。

 夜泣き蕎麦屋の七兵衛は仕事に励んだ結果、店を持つことができて繁盛していた。

 ある日、お得意さんでもある菊太郎のところに七兵衛が相談に来た。

 その内容は、店の裏の土地を誰かが買って、そこに糞尿を入れる大甕数個を埋めたので、その匂いで全く客が入らなくなったとのこと。

 源十郎と菊太郎は酷い話だと蕎麦屋まで行き、現場を見たあと蕎麦を食べようとすると四人の悪党が入ってきて難癖をつけたので菊太郎が痛めつけた。

 後日、鯉屋に同業の鳴海屋が来て、例の蕎麦屋の件で相談したいので改めて会ってほしいとのことだった。

 重阿弥の座敷で両方の主が会い、相手からの五百両での話に菊太郎は千両を積んでくれという。

 そして、この話には麺類売り仲間、町年寄り、糞尿仲間と関係者も多く、今後絶対にこのようなことが起こらないように処理すべきで、そのために多くの金子が要る。また今回は七兵衛を再度夜泣き蕎麦屋に戻す、ただし、その蕎麦屋に権威のある受領名・丹波介を戴き、麺類売り仲間の永代年寄にすべきだと言って話がついた。

「ひとでなし」

 呉服問屋の阿漕なリストラに抗議して、元店員が主人の孫息子を誘拐するが、反対に主人に罰の裁きが与えられた話。

 二条城のお堀に自殺の女土左衛門が上がった。

 その翌日、呉服問屋・高田屋に勤めていた新兵衛が、前日、娘・登勢が入水したこともあって、高田屋の孫息子を人質にとって辻堂に籠ったため、銕蔵が指揮する奉行所が出向いた。菊太郎も一緒に出掛け、新兵衛の頭を冷やし落ち着かせて孫息子を助けることだと替わって指揮を執った。

 高田屋は財産が減っているわけでなく景気が良くなく儲けを減らさんが為だけに、最近一週間の間に8人もの手代、小僧、女子衆に暇を出していた。その中には登勢と夫婦約束をしていた手代頭もいた。それが自殺の原因でもあり、登勢も少し前に暇を出された一人であった。

 新兵衛は、孫息子を殺して、自分も磔で死ぬだろうけど、高田屋も信用が落ちて廃業になるだろうという。

 しかし、新兵衛に孫息子が元々馴染んでいたこともあり、無腰の菊太郎の説得もあって誘拐の状態ではなくなって、新兵衛は菊太郎を信用して外に出てきた。

 菊太郎は奉行所に願い出て、鯉屋の座敷牢に新兵衛に入れて、そこで握り飯を与えられ、奉行所の取調べが行われた。

 奉行所の白洲には奉行名代の菊太郎がいて新兵衛は驚いた。同席の与力組頭の裁定は、高田屋店主は手前勝手な仕置きで本来なら店を取り潰しにすべきだが、それは許すとして総番頭ともども隠居をして、暇を出した者たちは全て呼び寄せろということで、新兵衛は一切お構い無しとなった。

 菊太郎は高田屋店主に、不服があれば、ひとでなしのおぬしに、しっかり引導を渡してやると告げた。

 

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