ダイニング・ウィズ・ワイン そむりえ亭

料理にワインを
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 樋口誠

ヌーボーの考察

2011年11月18日 04時41分36秒 | ワインの事

昨日の深夜12時に解禁のボージョレ.ヌーボー。

正確にはボージョレ.プリムールと言いますが、それ以外の指定産地のものもヌーボーとして認められています。

基本的に何処の産地でも生まれたてのワインで乾杯することはあって当然ですが、広く流通することはありませんでした。

しかし、多くの醸造か達(とりわけ帝王と呼ばれるデュブッフ氏)の活動で1951年に正しくヌーボーとして認可され67年に最初の解禁日11月15日が定められます。

私がソムリエを始めた頃は今と違って11月15日だったわけです。

当時は本当にうれしかった記憶があります。

みずみずしく香りもチャーミング、するりと喉を滑る感触。新しいワインが来た!!って感じがしました。マセラシオン.カルボニックという製法が出荷早々に美味しく飲める秘訣でしょう。

1985年からは解禁日が土日などで流通が滞らないようにと11月の第3水曜の深夜、つまり木曜の午前0時と変更されます。

バブルの頃ですね。

それ以降もヌーボーの消費量は衰えません。世界で最も多い輸入は日本なのです。

                                                                           

で、最近になって思う事があります。

昔のヌーボーじゃない。新酒として直ぐにでも飲めるように造っていない。と・・・・

温暖化で熟度が上がった。

収穫が早まってワイン造りに掛ける時間が増えた。

製造法も以前と変わってきた。

自然派と呼ばれる人たちの台頭もあり、造りが多様化してきた。

これまでヌーボーを世界に発信し続けてきた大手の生産者に対しての対抗意識もあった。

等々。

色々あるでしょう。

でも濃すやしませんか?と思うのです。

少なくても今市場に出ているヌーボーはこのまま樽に入れて熟成させて出荷すれば「ちょっと高め」で売れるワインが増えましたね。

つまり昔のヌーボーはいかにも今飲むために造っている、今のヌーボーには将来良くなる可能性を訴える為に造られたワインが多くなった。

どちらが良いのか、判りません。

しかし消費者の多くは以前より素直な喜びが少なくなっている様に感じます。

我々業界人は「今年は酸が弱そう」とか「アルコールが高そう」とか、を分析して納得しますが、一般の方々はそうではないはずです。

産地の方々はヌーボーによってキャッシュの回りが早くなっていいと思います。しかし、すぐに飲むワインの代表格であるボージョレが「その内美味しくなる」で産地に未来はあるのでしょうか?

が、世界的に見てボージョレは決して良い状況にはない、と聞いています。

「10年寝かせればコート.ド.ボーヌの銘酒と見分けられない」なんていうボージョレの生産者の宣伝文句があります。

勿論そういうワインがあって良いと思います。私も沢山飲んできました。しかし、ヌーボーでそれを表現する必要は感じません。

その年の状況を確認するのには昔の様な造りでも充分判ります。酸やアルコールやミネラルは造り方では隠せないからです。というか昔の造りのほうが単純で判りやすかったかな、と・・・・

ま、難しいことを書いてしまいました。

でも、昔ながらのヌーボーも実は健在です。私はコンビニ、スーパーで買えるペットボトルのヌーボー、大賛成です。これは難しくない。難しく造ってもいません。500円で買えるのですから、ワインの消費の拡大には最適です。

幅の広がったヌーボー市場。

そむりえ亭にも少しだけ在庫がありますが、ほんとにもう少しだけです。あとはコンビニやスーパーでの気楽な市場に任せましょうかね、と思います。ちょっと冷やして大きくないグラスでやってください。秋刀魚や焼肉と一緒にガブガブと楽しく召し上がって頂ければ幸せですね。