蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

殺人者たちの午後

2016年07月18日 | 本の感想
殺人者たちの午後(トニー・パーカー  沢木耕太郎訳 新潮文庫)

沢木さんの新刊は(翻訳書も含め)たいてい読んでいるのですが、本書は、単行本が出た時は気づいていませんでした。今回文庫にはいって書店でみかけて買いました。

イギリスでは殺人罪が確定すると(殺した人数や情状に関係なく)すべて終身刑になるそうです。終身刑といっても罪状や刑務所での態度により収監期間が決まります。社会に戻しても問題ないと判断されれば(厳格な保護観察付きですが)釈放され、普通の生活ができるとのこと。

本書はそうした殺人の経験がある人たちに生い立ちや犯行状況、刑務所やそこを出てからの暮らしぶりなどをインタビューしたもので、かなり重い内容ですが、やはり訳がいいのか、非常に読みやすい印象でした。

たまたまインタビューされた人がそうだったのかもしれませんが、ほとんどの人は両親に愛された経験がなく、貧しい生い立ちで、動機らしい動機を持たずに衝動的に殺人を犯してしまっています。

だから死刑がないイギリスのような制度がいい、とまで言うつもりはありませんが、矯正プロセスは日本よりかなり充実しているような気がしました。
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教場

2016年07月16日 | 本の感想
教場(長岡弘樹 小学館)

警察学校を舞台に、学生が抱える様々な問題をベテランの教官が解決していく中で、日常の謎系の謎解きをするミステリ。殺人事件がおきたりするわけではないが、非常に厳しい規律のもと、いつクビになるかわからない緊張状態がうまく表現されていてサスペンスフルでさえある。
短編の連作形式なのだが、もともと雑誌連載されていたせいか、各編の終わりが「謎解きは次回で」みたいな感じで尻切れトンボで終わるのがやや違和感があるが、かえってそれが魅力になっている側面もある。

それにしても警察学校って(本書の描写は多少オーバーなのだろうが)時代錯誤的に厳しいところなんだなあ。人手不足の今時、こんなんで警官になってくれる人がいるのか心配になるほど。
まあ、しかし日常的に武装しているわけだから規律にしたがえるような人でないと警官になってもらっては困るわけだけど。
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ユニヴァーサル野球協会

2016年07月09日 | 本の感想
ユニヴァーサル野球協会(ロバート クーヴァー 白水社)

サイコロで一球ごとの結果を決める架空野球ゲームに熱中する主人公は、(そのゲーム中で)大活躍していた新人投手がゲーム中にビンボールに当たって(そういうサイコロの目が出て)死亡したあたりから、ビンボールを投げた投手に復讐する?ためゲームがやめられなくなり、文字通り寝る間を惜しんで続けた結果、勤務する会社はクビになり、仲がよかった同僚ともケンカ別れする・・・という話。

一昔前、「ネトゲ廃人」という言葉が人口に膾炙したことがありました。廃人になるほどではありませんが、私もゲームに熱中したことが過去2回ほどあります。
1回目は大学生の頃、ゲーセンの「ボスコニアン」というシューティングゲームで、いくら使ったか計算するのが恐ろしくなるほど100円玉を投入しましたが、そのうちうまくなりすぎて飽きがきました。
2回目は、パッケージゲームの「ファイナルファンタジー・タクティクス」で、寝ても覚めても(そしてこっそり言うと勤務中も)このゲームのことばかり考えていましたが、ゲーム後半に登場するオルランドゥ(味方)が強すぎてシラけてしまいました。

このような次第で、私も主人公の気持ちはよーくわかりますし、サイコロ野球のNPB実名版があったら是非やりたいです(ていうか、プロスピとかってこれを高級にしたものなんですよね・・・実はハマるのが怖くてプロスピには手をだしていません・・・まあ、プロスピでビンボールでバッターが死亡なんてシーンは用意されていないでしょうが)。

主人公が現実の世界でゲームに熱中しすぎて身を持ち崩していくプロセスを描いた部分はそれなりに面白いのですが、ゲーム世界における空想上の選手たちの様子を描いた部分(とても長い)は、とてもついていけず、最後の方は飛ばし飛ばし読んでいました。
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