蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

バカと無知

2024年04月17日 | 本の感想
バカと無知(橘玲 新潮新書)

著者の作品はたいてい買って読んでいるのだが、本書は週刊誌に連載中に半分くらいは読んでいたせいかずいぶん長い間つんどくになっていた。

著者の作品のパターンとして、突飛な仮説を紹介し、それを裏付ける実験結果などを引用して一般化しようとする、というものが多い。

例えば、本書の中のある章題は「道徳の「貯金」ができると差別的になる」というもの。善をなすと道徳の貯金箱がプラスになるので、次は悪行をしても許されると考える。従って、善人的行為をする人は同じくらい悪いことをしている、とする説だ。
「そんなばかな」と誰しも思うのだが、著者はここである心理学者がアメリカの有名大学の学生を対象にして行われた実験を証拠?として提示する。その説明がけっこう複雑でいかにももっともらしい。
しかし、実験対象となった人数は130人強だし、紹介されている実験は一つだけ。これではタイトルの命題の成否を確かめるのは難しいといえよう。

この他にも、普通なら非難轟々となりそうな仮説が並んでいるし、おそらく、そのほとんどは有力説ともいえない程度なのではないかと邪推する(実際確かめたわけではありません)。
しかし、著者の作風はそんなもの、と公認?されているのか、似たような内容の作品が次々と出版される。

それでも、私をはじめとして、愛読者が減らないのは、怖いのものみたさみたいな点があるのと、クールな語り口のせいだろう。

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