見果てぬ王道(川越宗一 文藝春秋)
孫文の財政的スポンサーで日活の創始者:梅屋庄吉の生涯を中国の革命情勢とともに描く。
本作の表向きの主役は庄吉や孫文、あるいは宮崎寅蔵といった革命の主導者たちなのだが、彼らはどこか間が抜けていて、女癖が悪く、日常生活においては無能力者に近い。そんな男たちを支えていたのは、庄吉の母ノブ、香港におけるパートナー:登米、妻のトク、孫文の(2人目の)妻:宋慶齢たちだった、というのが本書のテーマかな?と思われた。
特に庄吉に姓をつけさせようと豚を自ら捌いてしまうトクが印象深かった。
孫文の革命は何回も失敗して、そのたび彼は諸国をさすらうのだけど、庄吉や慶齢の実家:宋家は一貫して彼を支える。それだけ人間的魅力に溢れていたのか、それとも革命のシンボルを担える人が彼しかいなかったのかは本書からはよくわからない。
庄吉は、写真館や映画という当時としては怪しげな事業を営む新興起業家で、宋家は出版業から財をなしたとはいえ、やっぱり成金の類だろう。そんな頼りなさげな金主がメインスポンサーなのに、世界最大級の大国の革命が一度は成就してしまった、というのが、本書を読んでの一番の驚きだった。
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