蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

僕が殺した人と僕を殺した人

2020年07月18日 | 本の感想
僕が殺した人と僕を殺した人(東山彰良 文春文庫)

主人公のユンは13歳の中学生、幼馴染のアガンやジェイとつるんで不良っぽく振舞う毎日。ユンは教育熱心で神経質な母親が、アガンは怠け者で浮気性な父親が悩みのタネだったが、ジェイの継父からの暴力はもっと深刻だった。ユンとアガンはジェイの継父の殺人を計画するが、その内容は中学生が考える程度の杜撰なもので・・・という話。

タイトルを見るといかにも叙述トリックのミステリっぽい。確かにそれに近い筋立てもあるのだが、それは軽い味付け程度で、ユンとアガン、ジュイの友情が物語の中心。中学生にしてはマセすぎだろ、と思うものの、台湾の熱帯性の暑さが想起されるような濃密な絆を感じさせてくれる。

著者の著作を読むのは3作目で、いずれも台湾を舞台とするもの。モチーフもよく似ている。「流」もとてもよかったが、ノーマル?な恋愛ものだった。本作は(多分)濃厚なBL系恋愛がテーマであったが負けず劣らずの出来だ。
「流」は直木賞をとったことでとても有名になったが、本作の3つの文学賞を受賞しているとのこと。そのわりに評判になってなかったなあ(私が知らなかっただけか?)。内容からしてももっと評価が高まるべきだと思うのだけれど。

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