蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

アンネ・フランクの記憶

2014年07月26日 | 本の感想
アンネ・フランクの記憶(小川洋子 角川文庫)

「アンネの日記」のアンネ・フランクゆかりの地と関係した人々を訪ね歩いた旅行記。

小川さんの小説はほとんど読んでいるのですが、本書はたまたま本屋の店頭で見かけた時に「未読の小説だ」と勘違いしてしまい、紹介文も読まないで買ってしまったのですが、読んでみたら純粋な旅行記だったので、ちょっと残念でした。

潜伏中のフランク家を援助し続けた婦人との会見記(なぜ彼女は、雇用者と従業員(あるいは友人)という関係でしかなかったフランク家を命がけで援助したのか、その理由はわからないままなのですが、確たる理由はなくても、そういう行動が現に行われた、という事実が貴重なのでしょう)
と、
アウシュビッツなどの収容所跡を見学した記録(恐ろしいほど整然とした収容所跡と、ユダヤ人から収奪したメガネや鞄や靴や髪の毛(!)などが山のように積まれて展示されてりることを対比させた描写が強烈)
が特に印象的でした。

「アンネの日記」等の訳者で知られる深町眞理子さんが、解説の中で、
凡庸な読者は「アンネの日記」を反戦・反差別の記号化されたイメージでしか捉えられないのに対して、小川さんは「アンネの日記」を純粋な文学として読み、「言葉とはこれほど自在に人の内面を表現してくれるものかと驚いた」ことを賞賛していらっしゃいます。
私自身、大昔に「アンネの日記」(しかもダイジェスト版)を読んだ時は、正直言って多少退屈に感じたので、やっぱり感受性の違いってあるような~と思わされてしまいました。


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