蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

子どもが育つみちすじ

2007年11月21日 | 本の感想
子どもが育つみちすじ(服部祥子 新潮文庫)

著者は児童~思春期の臨床精神医で、数多くのケースを経験してきた。それに基づいて子供の成長に伴い発生する取扱いが難しい時期の乗り越え方を具体的事例をあげながら解説した本。

「親がわが子に向き合う時、愛と英知があればどんなにさいわいか」
「わが子を可愛いと思うこと、わが子に触れて率直に喜び、自然の生命がみち溢れるようにいとおしく感じること。これが愛である」
「しかし親も子も人間である限り、お互いに違和感や不協和音に悩むことも当然おこってくるであろう。その時自然な感情を無理に押し殺したり、作りものの愛を生み出そうとするのはよくない」
「感情は一応横において、わが子を理知的に対象として眺め、興味や好奇心をもって子どもを理解し味わうこと。これが英知であり、親と子のつながりのもつ一つの活力源である」

「愛」は本能的というのか、生物の性として所与のものなので、これを感じ行使することは容易だろう。しかし、理知的になるのは困難だ。そこで著者は自分の豊富な経験から、感情を横において理知的な見方をするとはどういうことなのかを、事例を通して語っている。

精神科を訪れる患者は、大なり小なり感情的(?)になっているはずで、そうした人を理知的に観察し、質問し、心の裡を語ってもらう訓練を受けた精神科医なら、わが子の行動に腹がたっても、理知的な見方をすることができるのだろうが、一般の人にはやはり難しいことだろう。
ただ、かっとなった時に、ふと、著者の主張がふっと頭をよぎれば本書を読んだ甲斐があったといえると思う。

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