蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ホンダジェット

2019年01月19日 | 本の感想
ホンダジェット(前間孝則 新潮社)

自動車メーカー:ホンダは、創業者がやがては飛行機の生産販売をしたいという野望を持っていたこともあって、早く(バブル期のころ)からアメリカを拠点として小型機の開発を進めていた。2000年代には翼の上にエンジンを搭載するという革新的なデザインの試作機を完成させ高い評価を得ていたが、量産や販売には踏み込めないでいた。初期のころから開発の中心人物であった藤野道格(みちまさ)は、社長に直訴してそれを認めさせる。そして苦難の末、アメリカでの型式証明を獲得し世界中での販売にこぎつける・・・という話。

本書によると、エンジンの搭載位置以外にも、翼の形状などホンダジェットには、イノベーティブな要素が多数あり、世界中ですぐれた飛行機設計に与えられる賞を多数受けているそうだ。
藤野さんはじめとした開発者たちは、在来の技術の組み合わせで無難な成果を目指す気はなく、未だ誰も利用していないような新技術を取り入れることに拘ったそうである。

藤野さんは1983年入社で、一度だけ創業者の本田宗一郎と(研究所のトイレですれちがっただけだそうだが)会ったことがあるそうだ。
飛行機の研究開発を認めてきた歴代社長(川本、吉野、福井)はいずれも直接に創業者の薫陶を受けてきた人たち。
ホンダジェットは、創業者のスピリッツを理解する人たちによって成功に導かれてきたわけで、営利企業にあっても理念とか風土というものの継承や伝播が大切であることを感じさせられた。

また、本書の章題にもなっている「ハードウエアで世界を変える」という藤野さんの言葉が、ソフトウエア全盛、電子制御全盛の今の世にあっては、かえってなんともカッコいい。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« スウィングしなけりゃ意味がない | トップ | ホケツ! »

コメントを投稿

本の感想」カテゴリの最新記事