蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

半導体超進化論

2023年09月17日 | 本の感想

半導体超進化論(黒田忠広 日経プレミアムシリーズ)

著者は半導体の技術者・研究者で東大大学院教授。1988年日本企業の半導体シェアは50%を超えていたが、今では10%。額としてはあまり変わっていないのだが、世界の市場は年率5%成長しているため。

その要因は、投資不足といわれる。大型投資に踏み切れず、専用チップを志向しても設計技術が追いつけない、という悪循環に陥っている。

昔の半導体は、わずかな電力しか要しなかったが、現代においては省電力こそが効率化のキーになっていて、汎用チップに比べて専用チップは無駄な回路を省けるので電力量を小さくできる。一方、専用チップは数が出ないので、設計費をいかに小さくできるかがコストを決めている、という。つまり優秀な設計者を育成できれば勝てる、ということになる、というまことに教育者らしい結論になっていた。

シリコンコンパイルといって、コンピュータのプログラミングをするような手軽さで半導体も(近い将来)設計できるようになる。そうなれば、半導体が「民主化」されて、さらに多様な技術発展が見込める、という話が面白い。

それにしても、ソフトバンクGが半導体設計会社を買収した頃は、これはほど設計技術の重要性がはやされてなかったような気がする。アリババの後継をちゃんと見つけたというのは、やはり先見の明があるんだろうなあ。


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