蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

村上ラヂオ2

2014年08月10日 | 本の感想
村上ラヂオ2 (村上春樹 マガジンハウス)

村上さんの小説は人気がありすぎて敬遠気味。
でもそれは長編の話で、短編の方は8割方読んでいると思う。そして、短編の方がはるかに優れていると思っている。
でも、「走ることについて語るときに僕の語ること」を読んだ時は、エッセイもいいねえ、と思ったのだが、本書を読んで、むしろ著者の本領はむしろエッセイかも、と感じた。それくらい良かった。

本書の最後のエッセイは、それまでのものと違って「これだけはいっておきたい」という、主題を持ったものだった。
著者はこれまで何度かとてもつらい目にあってきた。その時、救ってくれたのはいくつかの音楽であった(その一つが、イタリア滞在時代に聞いた小泉今日子の「バラードクラシックス」だった、というのはビックリ。著者のイメージとはかけ離れているだけに、かえって真実味が感じられた。そして、私にとっても「バラードクラシックス」は何度も聞いた思い出深いCDだった。特に「木枯らしに抱かれて」が良かったなあ)。
自分が書いた小説がそういう役立ち方をしてくれたらありがたい、というのが、その最後のエッセイのテーマであった。

その他に印象に残ったものは、次のとおり。

・アンガーマネージメントの大切さ。かっとなってもすぐに行動に移さず一息置く。たいていはトーンダウンしていく。

・オレゴンにある究極のジョギングコースの素晴らしさ。勾配もカーブも理想的で森を抜けるコースは雰囲気抜群。しかもうっかり他社のシューズしか持ち合わせてなかったのにシューズを貸してくれた。

・昔の銀座線は、駅の手前で必ず停電して車内が暗くなった。それによって人生のなにごとかを学べた。今の電車はつまらない。(銀座線のこの現象を知る人もだんだん少なくなってきているんだなあ。若い人には信じられないような現象だろうなあ)

・村上さんは、毎晩のようにテレビでプロ野球を見て、スポーツニュースをチェックする。暇さえあれば神宮球場に通い、枝豆をつまみ生ビールを飲む。(村上さんはヤクルトのファンクラブ名誉会員で、ファンクラブのサイトにエッセイを寄せている。それだけでも(他球団のファンである私は)羨ましいと思っていたのに、直近のサイトを見たら、2編目までも寄稿している。これを見て、毎晩スワローズの結果を確認しているというは、まんざら嘘でもないかも、と思った。
「ヤクルト・スワローズ詩集」を再版してくれたら(他球団のファンである私でも)即買うんだけどなあ。ヤクルトのファンクラブ会員向けでいいから出してくれないかしら。

・古いアナログレコードの蒐集家を「ビニールジャンキー」という。マニアには一枚の珍重なレコードがもたらす興奮と快楽はすごいものらしい。


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