蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ミノタウロス

2007年09月22日 | 本の感想
ミノタウロス(佐藤亜紀 講談社)

時代はロシア革命期。主人公のウラル地方の豪農の息子が内乱に翻弄される様を描く。
表題は破壊の限りをつくす神話上の怪物の名前で、内乱に乗じて強奪や殺人を犯す登場人物たちを象徴していると思われるが、物語の中での悪行は怪物的というほどでもない。

佐藤さんの作品の多くは舞台を近世ヨーロッパとして、超能力者が主人公で、史実とはやや離れた空想小説だったが、本作の登場人物は皆普通の人間で、空想の産物というより種本を脚色したようなもののような印象を受けた。

説明部分が多すぎる小説というのは読んでいて間延びしてしらける感じがある。
説明部分をうまくストーリーに組み込んで説明と思わせない構成を作るのがリーダビリティが高い要素の一つだと思う。また、説明しすぎないことで読書の想像をより刺激することもあると思う。

佐藤さんの作品は、逆に説明部分が少なすぎて、多少読みづらさを感じることもあるが、我慢して読んでいると世界観を自分なり(作者の意図とは違うとおもうが)に構築できてもう一度はじめから読んだみたくなる魅力がある。
しかし、本作では、登場人物が多く(かつ、なじみがない名前で覚えにくい)、ストーリーもけっこう展開するが、そのわりにあまりに説明がなくて最後まで読み通すのに苦労した。
コメント
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