動物界における発生リスクのもととなる野生動物の取引市場を監視する手法を、研究者が開発中という。その手法を利用すれば、行政は適切な時期に獣医学的に厳密なやり方で危機回避可能となるだろう。それは単に市場全面停止・禁止という手段より、有効な方法になるだろう。(DeutscheWelle、2021年7月6日)
7月6日は世界ズーノシスの日(World Zoonoses Day:フランスのパスツールが狂犬病ワクチンを初めて投与した日にちなんでの記念日のようです。人と動物とが動物由来の伝染病を介して互いに関連しあいつつ生存しているという哲学的な意識もある記念日のようです)。コロナパンデミックが世界を覆い続けるなか、積極的な施策が動物由来の感染症の更なる流行を抑えるために求められている。
数十年来、科学者は危険な動物由来感染症の存在に警告を繰り返し出している。SARSからMERSやEBOLAに至る動物に起源をもつウイルスにより感染していく。
世界生物多様性カウンシル(The World Biodiversity Council)の報告によると、動物界には170万に及ぶ未確認ウイルスが存在し、その827,000種は人間に感染力を持っている。人と野生動物の接触がより近くより多くなってきている現在、COVID-19が世界規模での最後の最終のパンデミック例であるとは到底考えられない。
“動物由来伝染病の可能性を秘める野生動物取引市場”
コロナウイルスパンデミックの始まり以来、野生動物の販売取引の厳格な規制や完全禁止を要求する声が続いている。野生動物の市場が、潜在的に動物由来感染病のホットスポットになることは、多種の動物種が狭い空間に閉じ込められていることから危険ウイルスの伝染がそこで容易に起こるだろう、ということから容易に想像されることである。
新型SARS CoV-2ウイルスが動物を起源とすることが判明した段階で、WHOは特にアジアとアフリカによく見られる野生動物取引市場に対し市場閉鎖を要請した。
中国が特に非難の対象となり2020年1月野生動物市場の取引をCOVID-19パンデミックが収束するまでの期間暫定的に停止するとしたけれども、結局は市場閉鎖をそう長く続けることは出来ず、希少種の動物や食品の取引はかなり落ち込んではいるものの今では部分的に再開されている。
“食品として又は医薬品として重要な野生動物”
野生動物は多くの人々の文化や伝統に重要な役割を果たしてきており、栄養にもなってきている。通常野生動物の取引や消費を禁止することは現実的でなく、加えて特にインフラの貧しい地域や行政の貧弱な地域では厳格な禁止を追跡確認することがほぼ不可能である。
衛生状態を整えたり取引と消費に獣医学的な条件や制約を加えたりすることの方が有効な戦略であろう。このやり方でもって、潜在的な危険要因を浮かび上がらせることも可能であろう。
“ホットスポットを特定するための危険分析”
香港の研究者と協同して世界自然基金(The World Wide Fund For Nature:WWF)が取引市場の感染症リスクを評価する方法の開発を行っている。
健康科学雑誌に掲載された「危険マトリックス(The Risk Matrix)」は、まず始めにアジア太平洋地域の野生動物市場の分析に使用された。市場を取り巻く販売状況・動物種・それらの取引数が関係項目として組み込まれている。
研究チームはラオスとミャンマーの46の野生動物市場を調査している。その結果、検討した期間の50%以上の日に、高い危険性があったというデータが得られている。
野生動物市場には高い動物由来感染症のリスクが明らかに内在している、とStefan Ziegler氏(WWFアジアの環境問題主任アドバイザー)は指摘している。
“厳格な獣医学的処置対効果の無い禁止”
WWFによると野生イノシシやシカ、ねずみ・コウモリを含めて数百万の野生動物が毎年食品として又は伝統薬として取引されており、それらが多数の病原体の温床となっている。
野生イノシシとシカはドイツでも消費されている。“しかしこれらの取引は厳格な獣医学的制約下に行われている”とZiegler氏はいう。
“動物由来の感染症の防止は世界規模での対処が求められる”
不法なそして獣医学的制約を受けていない野生動物取引を停止していくことは、野生動物市場・野生動物牧場・それらの肉を提供する飲食店を監視していくことと同様に重要なことである、と環境団体はいっている。監視し、法律を適切に適用していく能力を持つことが行政に求められるのだが、多くの地域ではそれが全く不十分であるのが実情だ、とWWFは言っている。
パンデミック防止は世界で取り組む必要があり、国際社会は目標を設定して該当地域の行政力向上に支援を行うことが求められる。“危険マトリックス”の利用は市場の合法化を促し、危険を最小化するのに役立つだろうとしている。
「危険マトリックス」という言葉は理解しにくい点があると思います。
本文中に引用されている文献「アジア太平洋地域の将来の動物由来疾病発生リスクに用いることが可能な野生動物取引市場の迅速評価の道具」(a tool for rapid assessment of wildlife markets in the Asia-Pacific Region for risk of future zoonotic disease outbreaks)(OneHealth、Vol.13、12月Elsevier)があり、参考のために以下に要旨部分を紹介しておきます。
野生生物の取引と消費が重大な動物由来パンデミックを起こすと数十年来警告してきていたが、顧みられることはあまりなかった。今COVID-19禍が世界を覆っていて、もっと破壊的なパンデミックが続いて襲ってくるだろうという恐ろしい予測もある。
野生動物取引に厳格な制限を加える必要性や、更に進めてその完全禁止を求める声がある。一方多くの地域社会がその永続性・持続性に野生動物を根本的に必要としているという理由の下に、慎重な取り組みを主張する人もいる。
広範な禁止措置ではなく、制限と制約を拡大して規制していく方法の方がより現実的な取り組みになるだろうと思われる。
厳格な制約を課していくには、動物種市場に由来する危険性を監視し追跡する必要がある。
利害関係者や政府・行政関係機関の人々が取引市場を評価するのに役立つ道具をここに提示したい。この道具を使えば、現状多くの国で違法状態の取引市場に対して厳格に制御できる政策が導き出され、結果として動物由来疾病の制御に役立つだろう。
アジア太平洋地域で取引されている野生動物種の知識と、および場所場所で異なる市場の形態や取引網に関連しての高伝染性悪性ウイルスキャリアーである野生動物種の知識とに、この道具は基礎を置いている。
「護憲+BBS」「 メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
yo-chan
7月6日は世界ズーノシスの日(World Zoonoses Day:フランスのパスツールが狂犬病ワクチンを初めて投与した日にちなんでの記念日のようです。人と動物とが動物由来の伝染病を介して互いに関連しあいつつ生存しているという哲学的な意識もある記念日のようです)。コロナパンデミックが世界を覆い続けるなか、積極的な施策が動物由来の感染症の更なる流行を抑えるために求められている。
数十年来、科学者は危険な動物由来感染症の存在に警告を繰り返し出している。SARSからMERSやEBOLAに至る動物に起源をもつウイルスにより感染していく。
世界生物多様性カウンシル(The World Biodiversity Council)の報告によると、動物界には170万に及ぶ未確認ウイルスが存在し、その827,000種は人間に感染力を持っている。人と野生動物の接触がより近くより多くなってきている現在、COVID-19が世界規模での最後の最終のパンデミック例であるとは到底考えられない。
“動物由来伝染病の可能性を秘める野生動物取引市場”
コロナウイルスパンデミックの始まり以来、野生動物の販売取引の厳格な規制や完全禁止を要求する声が続いている。野生動物の市場が、潜在的に動物由来感染病のホットスポットになることは、多種の動物種が狭い空間に閉じ込められていることから危険ウイルスの伝染がそこで容易に起こるだろう、ということから容易に想像されることである。
新型SARS CoV-2ウイルスが動物を起源とすることが判明した段階で、WHOは特にアジアとアフリカによく見られる野生動物取引市場に対し市場閉鎖を要請した。
中国が特に非難の対象となり2020年1月野生動物市場の取引をCOVID-19パンデミックが収束するまでの期間暫定的に停止するとしたけれども、結局は市場閉鎖をそう長く続けることは出来ず、希少種の動物や食品の取引はかなり落ち込んではいるものの今では部分的に再開されている。
“食品として又は医薬品として重要な野生動物”
野生動物は多くの人々の文化や伝統に重要な役割を果たしてきており、栄養にもなってきている。通常野生動物の取引や消費を禁止することは現実的でなく、加えて特にインフラの貧しい地域や行政の貧弱な地域では厳格な禁止を追跡確認することがほぼ不可能である。
衛生状態を整えたり取引と消費に獣医学的な条件や制約を加えたりすることの方が有効な戦略であろう。このやり方でもって、潜在的な危険要因を浮かび上がらせることも可能であろう。
“ホットスポットを特定するための危険分析”
香港の研究者と協同して世界自然基金(The World Wide Fund For Nature:WWF)が取引市場の感染症リスクを評価する方法の開発を行っている。
健康科学雑誌に掲載された「危険マトリックス(The Risk Matrix)」は、まず始めにアジア太平洋地域の野生動物市場の分析に使用された。市場を取り巻く販売状況・動物種・それらの取引数が関係項目として組み込まれている。
研究チームはラオスとミャンマーの46の野生動物市場を調査している。その結果、検討した期間の50%以上の日に、高い危険性があったというデータが得られている。
野生動物市場には高い動物由来感染症のリスクが明らかに内在している、とStefan Ziegler氏(WWFアジアの環境問題主任アドバイザー)は指摘している。
“厳格な獣医学的処置対効果の無い禁止”
WWFによると野生イノシシやシカ、ねずみ・コウモリを含めて数百万の野生動物が毎年食品として又は伝統薬として取引されており、それらが多数の病原体の温床となっている。
野生イノシシとシカはドイツでも消費されている。“しかしこれらの取引は厳格な獣医学的制約下に行われている”とZiegler氏はいう。
“動物由来の感染症の防止は世界規模での対処が求められる”
不法なそして獣医学的制約を受けていない野生動物取引を停止していくことは、野生動物市場・野生動物牧場・それらの肉を提供する飲食店を監視していくことと同様に重要なことである、と環境団体はいっている。監視し、法律を適切に適用していく能力を持つことが行政に求められるのだが、多くの地域ではそれが全く不十分であるのが実情だ、とWWFは言っている。
パンデミック防止は世界で取り組む必要があり、国際社会は目標を設定して該当地域の行政力向上に支援を行うことが求められる。“危険マトリックス”の利用は市場の合法化を促し、危険を最小化するのに役立つだろうとしている。
「危険マトリックス」という言葉は理解しにくい点があると思います。
本文中に引用されている文献「アジア太平洋地域の将来の動物由来疾病発生リスクに用いることが可能な野生動物取引市場の迅速評価の道具」(a tool for rapid assessment of wildlife markets in the Asia-Pacific Region for risk of future zoonotic disease outbreaks)(OneHealth、Vol.13、12月Elsevier)があり、参考のために以下に要旨部分を紹介しておきます。
野生生物の取引と消費が重大な動物由来パンデミックを起こすと数十年来警告してきていたが、顧みられることはあまりなかった。今COVID-19禍が世界を覆っていて、もっと破壊的なパンデミックが続いて襲ってくるだろうという恐ろしい予測もある。
野生動物取引に厳格な制限を加える必要性や、更に進めてその完全禁止を求める声がある。一方多くの地域社会がその永続性・持続性に野生動物を根本的に必要としているという理由の下に、慎重な取り組みを主張する人もいる。
広範な禁止措置ではなく、制限と制約を拡大して規制していく方法の方がより現実的な取り組みになるだろうと思われる。
厳格な制約を課していくには、動物種市場に由来する危険性を監視し追跡する必要がある。
利害関係者や政府・行政関係機関の人々が取引市場を評価するのに役立つ道具をここに提示したい。この道具を使えば、現状多くの国で違法状態の取引市場に対して厳格に制御できる政策が導き出され、結果として動物由来疾病の制御に役立つだろう。
アジア太平洋地域で取引されている野生動物種の知識と、および場所場所で異なる市場の形態や取引網に関連しての高伝染性悪性ウイルスキャリアーである野生動物種の知識とに、この道具は基礎を置いている。
「護憲+BBS」「 メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
yo-chan