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海図なき海原に向かって:海洋温度が記録的高温に

2023-07-13 12:43:33 | 環境問題
「海図なき海原に向かって:海洋温度が記録的高温に」
The Guardian 2023年4月8日  Graham Readfearn氏記す

現在、世界各地で異常気象が報道され、そして私達自身も体温を超える気温の中での暮らしを強いられています。かかる状況の中、見た目の事象の根っこの部分の要因を捉える姿勢が、今現在およびこれから我々が生活していく上での大切な指針を与えてくれるものと思い、若干古い記事ではありますが、人新世の加速化時代に伴う海水温の異常についての記事を紹介します。この4月ごろに他にも多くの同種の記事が出ております。敢えてここではThe Guardianを取り上げましたが特に選択に意図はありません。

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科学者らが更なる海洋熱波を警告している。これにより極端な気象事象の増大につながる恐れを指摘している。

世界の海洋表面温度はサテライトを利用して観測されているが、記録を取り始めて以降で最高となる海水温を記録した、と米国政府機関が報告し、海洋熱波につながる恐れを指摘している。
国家海洋大気局(National Oceanic and Atmospheric Administration;NOAA)からの先行データによると、海洋表面の平均温度が、4月のスタートとともに2016年に記録していた過去の最高温度21℃を超えて21.1℃になった、と気候科学者らが語っている。
「現在進行している道筋の方向は、予測が出来ない状況であり、過去の記録を塗り替えつつある」とNew South wales大学のMatthew England教授が語っている。

3年にわたる太平洋のラニーニャが温度上昇抑制に役立っており、増大する温室効果ガス(GHG)の作用を弱めてくれていた。
しかし科学者らは今や海洋表面は熱で暖められ始めているとし、今年後半に発生が予想されるエルニーニョ(6月9日気象庁はエルニーニョ現象が既に発生していると発表している)を指摘して極端な異常気象のリスク拡大と更なる地球温暖化記録更新拡大を警告している。
NOAAのMike McPhaden博士は「三段底を記録した最近のラニーニャは収束を迎えている。この長く続いた寒冷期は、大気中のGHG増加にもかかわらず地球表面温度上昇を押し止めていた。ラニーニャが今や去り気候変動の兆候が強くそしてハッキリと現れてきている」と語っている。

熱帯の太平洋の中央部そして東部の冷却と強い貿易風とで特徴付けられるラニーニャの時期は地球に冷却の影響が出る。一方エルニーニョの時期は海洋温度が通常より上昇し、地球温度を上げることになる。

観測データは大半がサテライトからの観測値だが、船やブイを使っての観測データからも裏付けられている。そしてデータには極地のデータは含まれていない。

化石燃料を燃やすことや森林伐採推進の結果発生する新たに追加されるGHG排出分に基因する過剰熱エネルギーの90%以上が海洋に吸収されている。
昨年発表された一つの研究によると、海洋中に吸収され蓄積される熱エネルギー総量が加速度的に増大しており、そしてより深い所まで侵入しているとし、結果として極端な気象事象の火に油を注ぐ形になっているとしている。
この研究の共同研究者のEnglandさんは「我々は今、海洋表面温度が最高記録を達成している状況を目撃している。このことは我々にとって緊急警報がなっていることであり、我々が世界の気候システムに人間の活動の足跡を拡大しているということを示す極めて明らかな証しである」と語っている。

海洋表面から2kmの層の観測データは、この海洋の上層部に急速に熱エネルギーが蓄積されていること、そしてそれが1980年代以降、特にその速度が上昇していることを示している。

米国国立大気研究センター(US National Center for Atmospheric Research)の著名な研究者のKevin Trenberth博士は観測データが、熱帯地帯の太平洋の熱エネルギーが100m以上の深くまで拡大していることを示していると語り、そしてこの熱エネルギーが海洋上の大気に効果を波及して、より大きな熱エネルギーを大気の気象事象に供給して海洋熱波を形成する原因となっているとも主張する。

UNSW気候変動研究センターの助教授のAlex Sen Gupta博士は、サテライト観測データによると海洋表面の温度上昇が1980年代以降ほぼ直線的に生じていると語っている。
「ラニーニャ現象が発生していたにもかかわらず、最近の3年間が暑かったということは極めて驚くべきことで、そして現在も暑さ記録が更新されている」と語っている。

少なくとも5日続けて、温度がその時期の年間記録の上位10%範囲に入る海域を海洋熱波発生域としているが、現在の観測データによると「中等程度~強度の海洋熱波」がいくつかの地域で見られるとし、それらがインド洋南部、大西洋南部、アフリカ北西部沖、ニュージーランド周辺、オーストラリア北東部沖、中央アメリカ西部であるという。Sen Gupta博士によると、同じ時期にこの様に多くの地域に海洋熱波が観測されるのは極めて異常だとしている。

海洋熱波は局地的な気象条件に左右される部分がある一方で、研究によると海洋が暖められるにつれて海洋熱波はその頻度と強度を増大させることが認められており、人間の活動を基因とする地球温暖化の予測される進行状況につれて海洋熱波の問題が悪化していくことが見込まれる。
より暖かい海洋が、大気中により多くの熱エネルギーを風雨に供給することで暴風雨化し、併せて氷床の融解の促進を行うことにより、海面の上昇をも促すことになる。そして海水の温度上昇はそれ自体、海水の熱膨張を引き起こすもので、この点からの海面上昇も加わることになる。

海洋熱波は海洋野生生物に壊滅的な影響を与え、熱帯のサンゴ礁・サンゴの白化を引き起こす可能性がある。実験によると海洋温暖化により食物連鎖に根本的な変化が起こり、藻類(algae)の成長が促進される一方で、人間が食べる種類は減少する可能性があると指摘されている。

Monash大学の気候科学者のDietmar Dommenget教授は人間が引き起こす地球温暖化の兆候は海洋中では、よりハッキリと姿を現すと語っている。
「明らかに我々は迅速に進行する温暖気象の中におり、そして類例を見ない新しい記録を観察している。我々の大半はエルニーニョの発生を予測している。エルニーニョが発生すれば、我々は新しい記録を海洋でも陸上でも観測することになるだろう。そして我々は現在既に記録が達成されているのを見ているし、今年後半には更に多くの記録が生まれるだろう」とDommenget教授は語っている。
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海洋温暖化が大気の異常気象を誘発する側面の最近の話題を紹介しましたが、コインの裏側に海洋の酸性化という大きな問題も隠れて存在しています。海洋の温暖化も海洋の酸性化も海洋野生生物の生態系に大きく影響する事柄になります。

いろいろな視点から人新世の加速化時代に伴う異常事象の根っこの要因を紹介していきたいと思います。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan

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