老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

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映画「ぼくは君たちを憎まないことにした」

2023-11-29 11:47:26 | 社会問題
実話です。パリに住む小説家志望のアントワーヌは、メイクアップの仕事をする妻のエレーヌ、3歳のメルヴィルの3人家族でした。

2015年11月13日(金)バタクラン劇場に出かけた妻が夜遅くなっても帰宅しません。その日、パリ同時多発テロが起き、シリアで計画されて送り込まれた8人のISは、バタクラン劇場、サッカー競技場、カンボジア料理店とイタリア料理店を襲い、130人の犠牲者と300人以上の負傷者を出したのでした。

アントワーヌはエレーヌに連絡しても携帯は留守電になっています。病院を訪ねて探し回っても、名簿にはエレーヌの名はない。そして月曜日、ようやくアントワーヌはエレーヌの遺体に会えたのです。

父子2人暮らしになり、公園で父親と遊んできて、家に戻ると「ママ!」「ママ~!」と探し回るメルヴィル。野菜ジュースを作ろうとして、蓋をしないで回して噴き出すのに呆然としたり。なにかにつけアントワーヌはエレーヌを思い出します。

そんな中で「僕は君たちを憎まないことにした」(Vous n'aurez pas ma haine…)とアントワーヌはFBに、テロリストたちに宛てた手紙を綴ったのです。

その一文はたちまち拡散され、1日で2万人以上の人が見ました。ル・モンド紙からも連絡が来て、トップページに掲載されました。
https://www.lemonde.fr/attaques-a-paris/article/2016/07/17/vous-n-aurez-pas-ma-haine_4970898_4809495.html

「私はあなたを憎むという贈り物をあなたに与えません」「憎しみに怒りで応えることは、あなたを今あるものにしたのと同じ無知に屈することになります」「幸せで自由な人生を送ることこそが、彼らへの返事なのです」と、アントワーヌは書いたのです。
https://nikumanai.com/

彼、Antoine LeirisのFB投稿がたちまち広がり、3日間で20万人にも読まれたのは、人間には憎しみに囚われないという心の強さがあるからでしょう。

社会にはいろいろな事件、出来事があり、自分が不利益を被ることがある。例え些細な事でも悲しみや怒りが湧くのは当然だと思います。

しかし、怒りや悲しみを超えることも人間には出来るのだと思います。怒りは大きなエネルギーであるから、その怒りの原因となった問題を解決することに振り変えることができます。

怒りや悲しみを乗り越えるのは苦しい作業だけれど、そこには人間への希望が生まれると、私は信じています。

そのことを以前に教えてくれたのは、留学中の息子さんがハロウィンで訪ねた家で銃撃されて命を失った時の、服部夫妻の姿です。

被告は無罪!(何で?)となった刑事裁判後に、夫妻は民事裁判を行いますが、被告は決まった賠償金すらもほとんど支払っていません。

どんなにか辛かったかと思いますが、夫妻が目指したのは米国の銃規制でした。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E7%95%99%E5%AD%A6%E7%94%9F%E5%B0%84%E6%AE%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6

悲しみや怒りを復讐に向けず、罪の根源に向けた。見事な生き方だと思います。

もう1つ思うのは、まるで反対の心性。これだけホロコーストへの怒りを持っていながら、イスラエルはパレスチナの人々の土地を奪い、ガザを爆撃するという圧倒的な武力を振るう。この暴力はナチスと同じです。

日本でも犯罪が起きると、社会に怒りが満ちます。そして「目には目を」のような言葉がネットには溢れます。怖いのは無関係の人達からの悪意と罵倒。加害者の「家族」の名前や住所までを暴き、攻撃する人もいるらしく、これもまた、残酷な犯罪に他ならないと思います。

「幸せで自由な人生を送ることこそが、彼らへの返事」というアントワーヌの言葉は味わい深いですが、もう1つ深いのは「加害者も銃社会の被害者」という服部さんの言葉でしょう。

「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より

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