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持続可能な農法が如何にエチオピアの農民の役に立つだろうか

2024-02-24 09:48:55 | 社会問題
『持続可能な農法が如何にエチオピアの農民の役に立つだろうか』
   Deutsche Welle、2024年2月22日 Alistair Walsh氏記す

以前Tigrayに関する記事をいくつか紹介したことがある。

農業の世界に2つの大きな流れがあることを「AGRA」と「AFSA」というキーワードを基に紹介もしている。

そして国際間に亘る諸課題(世界の食糧安全保障もその課題の一つ)を解決する際、従来期待されてきた世界各国の政府間協議を前提とした「Multilateralism」の限界が指摘され、修正が求められ、その結果として実行力を期待して、殊に世界規模の国際企業を利害関係団体と認定して課題解決の場への関与を認め、参加できるとした「Multistakeholderism」についても紹介している。 

Multistakeholderismを正に体現している農業システムの普及を目指すアフリカ内の組織がAGRAであり、その長所と短所を紹介した。

そして企業型単一作物栽培に特化した農業システムの普及を特徴とするAGRA型農業だけでは、世界の農業の健全な発展は期待できず、少なくとも同等以上の寄与をAFSA型農法に求めるのが大切な視点であることを指摘している。

今回Deutche Welleに、Tigrayの現在地を含めてのアフリカ農業を考える機会が期待できる一文があったので、紹介してみたい。

***
エチオピアの食糧危機には複雑な理由がある。最大の理由は日照りであり、日照りは地球沸騰化が原因して悪化している。この問題への対応策として、気候変動に配慮するスマート農業(climate-smart agriculture、CSA)に向かって舵を切っている 人々がいる。

「日によっては何か食べ物にありつけるけれども、別の日は腹をすかせて眠りに就いている」とエチオピア農民のGebremedhin Hagosさんが、わずかな収穫物を見せながら話す。

他のエチオピアの農民と同様にHagosさんはここ40年の期間で最悪の日照りに見舞われ、雨が降ることを祈っている。数千ヘクタールに及ぶ作物は既に焼けついた畑で枯れており、数万頭の家畜も既に死んでいる。

「飢えに苦しんでおり、危機的状況だ」と70歳のHagosさんはこの1月に話し、そして「何が出来るのだろうか?どこへ行ったら良いのだろうか?」と語っていた。

Hagos さんと彼の家族は、そのように充分に食べることの出来ない1600万人にのぼるエチオピア人の中の人々である。子供を含めて多くの人々が、永年の戦乱状況・経済危機や長引く日照りの影響から、栄養失調や病気に苦しんでいる。

2年間に亘りTigray地区反乱軍と政府軍との戦乱でTigrayの北部の州が大きく破壊されており、飢餓の拡大により、Tigrayではこの半年で数百人の餓死者がでている、と国連担当者が指摘している。

この危機的状況に迅速に対処するため、国連ではとくにTigray在住の300万人のエチオピア人に緊急支援する計画を立てている。一方他の支援組織らは、これらアフリカの角と称される地域に住む人々が将来に亘って自力で食糧を如何にして確保していくか、という課題の解決を模索している。

「エチオピアの人々の強靭性を強化していくことが基本目標の考えである」と国連世界食糧プログラム(UN World Food Programme、WFP)のスポークスパーソンのClaire Nevillさんは語る。そして「人々自身が持続可能であり、長期に亘り食糧の確保が出来、そして再び食糧難に戻ることがない、という解決策を保証することが目標である」と指摘している。

アディスアベバ大学開発研究学科助教授のAbyiot Tekluさんは「気候変動に配慮したスマート農業(climate-smart agriculture、CSA)がエチオピアやその他のアフリカの角地域の国々の食糧生産の長期的確保に役立つ」との信念を持っている。エチオピアの多くの農民らは自給自足型農業(subsistence farming)を実践してきており、作物向けの用水に雨水を利用してきており、彼らの慣行は気候変動の時期に特に相応しいものと言える。

気候変動に配慮したスマート農業(CSA)とは、永らくそれらの地域で行われてきた持続可能な農法の新しい名称であり、Tekluさんの研究の中心テーマである。この農法では長期の雨季が期待できないアフリカの角のような場所においては、それぞれの異なる固有課題に合わせた対応策を個別に考案していくことが必要とされる。

気候変動に配慮したスマート農業(CSA)の一つが、エチオピア南部で伝統的に行われてきていたアグロフォレストリー(agroforestry)であり、当該地域の高地でも谷間でも良好な結果が提供出来ていると、Tekluさんは語る。これらの地域におけるアグロフォレストリーでは、生産作物の植生の中に高樹木や低樹木を植え、これらの樹木と作物からなる植生の間でニワトリの様な動物を一体的に育てるやり方を採用している。画一的単一作物栽培の方式に比べて、このアグロフォレストリーでは土壌の肥沃化が助長され、従って土壌の流出・侵食が防止できることになる。また生物多様性が改善され、水の損失の軽減も図れるという。

ある研究によると、エチオピアの伝統的な小規模農家の家庭菜園においてはアグロフォレストリーが実践されていることが紹介されており、これらの実践により当該地域の緑化は促進され、一方彼らの生計の助けになるとともに栄養のある食物の入手が出来ることとなっていた、という。

土壌の保護を最大目標とする保全型農業(conservation agriculture)が、もう一つの形の気候変動に配慮したスマート農業(CSA)の例である。この農法では、作物の収穫後に作物の非食部分を畑に残すという小さな修正点を持っているとTekluさんは述べ、それにより土壌の質が回復され、農地を保護出来ることになるという。この畑に残される作物残渣は燃やされて肥料となるか、そのまま家畜の飼料となるかして、エチオピアでは利用されている。

収穫残を畑に残すというような気侯変動に配慮したスマート農業を2年間採用すると、以前は土壌が劣化していたDebremawiの高地地域において作物が生い茂るようになり、そして農民らは小規模な灌漑などの別のCSA技法を取り入れることも出来るようになったという。

Tekluさんは現在の危機が悲惨なものであり、現在の紛争と度重なる危機により、短期的には今述べているような農法の適用は困難だということを認めている。しかし、エチオピアが長期的開発アプローチを採用し、そして地下水系のような未利用資源の開発に着手するのであれば、農民らを支援する機会と方策はあるとTekluさんは信じている。

国連世界食糧プログラム(UN WFP)はまた、エチオピアの食糧危機に対して長期に亘る持続可能な解決策を優先させることを拡大している。

洪水や日照りのような異常気象の早期警報システムを農家へ提供することを検討しており、それにより農家は事前に対策が取れることが期待されている。この方策に合わせてこれらの異常気象からの打撃を和らげる資金的支援を組み合わせることで、追加の食糧や家畜の保護にこの資金を充てることが可能となる。

WFPはまた、エチオピア西部地域のGambelaの以前から自給自足農業を営む農家を支援して作物の栽培を手助けし、その収穫物をWFPに売却するというプロジェクトを検討している。このシステムにより、農家は農耕用機械の購入が可能となり、そしてより良い種子や肥料の調達も可能となり、生産性の向上や農業特有の不安定さの低減に役立つことになる。

「Gambelaの農家から購入したトウモロコシは、南スーダンからGambelaへ逃れた人々へ供給することが可能となる」とこのプロジェクトに関わるClaire Nevillさんは指摘する。

しかし、資金提供を求めて世界各地の危機の間で獲得競争状況が存在する現在、このエチオピアでのWFPの活動の為の資金は不足しており、支援金の大半はエチオピア人への食糧援助支援といった緊急性の高い危機の軽減目的で利用されているという。

エチオピア政府とTigray反乱軍との間の紛争は2022年に終結したとされているが、Tigrayの農業天然資源局の広報局長Mikiale Murutsさんは「220万人が避難し、農業活動から切り離された生活を余儀なくされている」と述べている。

紛争前には、この地域は持続可能なアプローチのリーダ―であり、砂漠化と闘い、人々の食糧生産能力の向上の取り組みに対して、国連が後援する賞を受けたこともある。

しかし、和平が成立した現在も、この地の肥沃な土地の多くが戦闘員に制圧されており、農業は不可能だとMurutsさんは語っている。「現状、食糧支援がなく、これらの地域における食糧不安は更に悪化すると予測され、人々は死に直面している」と指摘している。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan

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