老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

厄介な食べ物から子供達を守るのに必要な情報とその政策化のヒントになる世界動向

2024-04-18 13:20:20 | 社会問題
「厄介な食べ物から子供達を守るのに必要な情報とその政策化のヒントになる世界動向:過剰な糖質分を含む食べ物から子供達を守る施策をどう作っているかに焦点を当てる」

糖質の過剰摂取の問題が注目されている。今回はこの問題に焦点を当て、ことに子供達が糖質の過剰摂取の環境に置かれ、太りすぎや肥満に導かれやすい構造が世界に存在しており、この状況を放置していると糖尿病や心臓血管系疾患等の慢性疾患に苦しむ将来が彼らに待ち受けていることが大いに懸念される所である。

今回は、世界の特に子供達の糖質過剰摂取の状況を検分し、なぜ糖質の過剰摂取が問題なのか、そして世界がこの問題に対してどんな対応を試みているのか等、を紹介してみたい。

この課題を世界がどう見て、どう対応しているかを色々な角度から見ていくことが、企業主導でない「市民が主導する人々の考えに基づく持続可能な目標」SPOGs(市民の、特に子供の健康を守る)を提案する上で、参考になるだろうとの考えから取りまとめてみたい。

今回、SPOGsという用語を使っている。これはSustainable People-Oriented Goalsの略。
以前提案のSPGsとSOGsの二つを1つに纏めることが出来れば、望ましいのではとの考えから作りだした造語です。今後はこの言葉を「人々の思いに根ざした持続可能な目標」の意味合いから使っていきたいと思います。

今のSDGsは「企業の思いや願いに根ざした持続可能な(再)開発目標」と思います。
***

まず、事実の紹介から始める。
1. 世界の子供の肥満の実態と今後の予測
(1) WHO「肥満(Obesity)と太り過ぎ(Overweight)」2024年3月1日から引用
2022年の世界の思春期の子供らの肥満は、1990年と比較して4倍化している。
2022年の世界の5才以下の子供らのうち、太り過ぎのこどもは3700万人、5~19才では3.9億人以上が太り過ぎであり、その内で肥満者とされるこどもは1.6億人。

(2) アメリカの実態: Centers for Disease Control and Prevention(CDC)による「Childhood Obesity Facts」データ、最終更新日:2022年5月17日から引用
2017年から2020年の期間、2~19才の肥満者割合は19.7%(人数:1470万人)
内訳として:2~5才は12.7%、6~11才は20.7%、12~19才は22.2%
別の内訳として、スペイン系の子供は26.2%、非スペイン系黒人の子供は24.8%、非スペイン系白人の子供は16.6%、アジア系の子供は9.0%

(3) EUの実態:OECD/European Union(2020),“Overweight and obesity among children and adolescents”, in HEALTH AT A GLANCE:EUROPE2020から引用
2018年:太り過ぎ及び肥満の15才の子供の割合は、EU諸国平均で19%、2010年の16%と比べて上昇。 男女の内訳は、男子23%、女子15%。
EU域内の地域差は大きく、最少はオランダの12%、最大はマルタの36%と3倍の開きがある。
家庭の経済状況による太り過ぎの割合の格差の存在が認められており、恵まれない家庭の子供らの太り過ぎの割合は、恵まれている子供らに比べて50%大きいという。

(4) 日本の実態:最近の25年間の栄養調査(Obesity Research,2004)から引用
1976年から2000年の期間、6才~14才の男児29052人と女児27552人を対象として調査した結果、1976~1980年にかけて肥満男児割合が6.1%、肥満女児割合が7.1%だったのが、1996~2000年にかけては肥満男児が11.1%、肥満女児が10.2%へと、男女ともに肥満率が増大している。
地域による特性として、9~11才の男児女児共に小規模の都市に住む児童らが20年間の期間にわたり最も大きな肥満率の増大を示している。一方大都市の女児に関しては20年の期間の間に肥満率の増大は見られていないという。

2.糖質分の摂食状況
(2-1)アメリカの実態:Get the Facts: Added Sugars, Centers for Disease Control and Prevention(2~19才の砂糖摂取量の調査、2017から2018年)から引用。
一日の砂糖摂取量:男子は72g、女子は60g
内訳:
2才から5才児:黒人52g、白人48g、ヒスパニック44g
6才から11才:黒人76g、白人72g、ヒスパニック64g
12才から19才:黒人80g、白人80g、ヒスパニック60g
20才以上:男子76g、女子60g、黒人76g、白人68g、ヒスパニック64g

(2-2)日本の実態:農村の児童・生徒の嗜好飲料・冷菓からの砂糖摂取量(栄養学雑誌,1980年)から引用。
幼稚園児:男子33.6g、女子31.1g
小学校5・6年生:男子36.3g、女子33.5g
中学2年生:男子63.8g、女子47.3g
高校2年生:男子42.4g、女子32.4g

(2-3)日本の実態:日本人の澱粉と糖分の摂取状況調査 Nutrients2018,10月、1474ページより引用。
調査対象:18~35カ月の乳幼児368人、3~6才児376人、8才~14才の小中学生915人、20才~69才392人
結果:平均澱粉一日摂取量について
女性乳幼児の55.6gを最小として男性小中学生206gを最高とする範囲
年齢性別に関わらずに、50%以上の澱粉は米と穀類から取り入れている
平均砂糖一日摂取量について
乳幼児(女)の46.1gを最小として小中学生(男)68.7gを最高とする範囲

摂取糖質の形は、ショ糖が18.2~34g、グルコースが7.8g~13.1g、ラクトース(乳糖)が5.3g~13.1g、フラクトース(果糖)が7.6g~11.1g。

3.砂糖等の許容摂食量:(2015年3月WHO発表1日の砂糖摂取量の目安)から引用。
1日の総摂食エネルギー量の5%未満が目安。
例えば2000Calを1日に食べている人は、100Cal(砂糖25g)が上限目安。
小学生の場合は20g以内が目安。
海外では2歳児までは砂糖や還元糖の摂食は避けるべきとされている。

一方、The Institute of Medicineは、砂糖の適正摂取量に関して公表していない。

米国心臓学会(The American Heart Association)は女性には24g以下、男性には36g以下を推奨している。子供は12g以下を推奨している。

日本の厚生労働省:砂糖の1日摂取量目標を、成人男性8g、成人女性7g
2015年版基準の目安では、成人は10g、1~2才は5g、3~5才は7gとしている。

4.良く購入されている加工食品中の糖質分含有量の例
(4-1)アメリカ人は、砂糖等をどのような加工食品から摂取しているのか。
炭酸飲料/エネルギードリンク/スポーツ飲料から:42.2%
穀類ベースのデザート類から:11.9%
果物飲料類から: 8.5%
牛乳ベースのデザート類から: 5.5%
キャンディー類から: 5%
直ぐに簡単に食べられる穀物食品から: 2.9%

(4-2)良く見かける食べ物や飲み物に含まれる砂糖・糖質分
コーラ:100ml当たり11.3g。コップ1杯は約200mlなので23g程になる。500mlボトルには56.5gが入っていることになる。
M社シェイク:バニラMサイズには糖質68.4g、Sサイズには41.2g
R社シェイク:バニラ(サイズはS相当か)には26.3g
あんぱん(80g):砂糖23.4g
レモン風味炭酸水(500ml):砂糖43.2g
大福(70g):砂糖10.8g
スポーツドリンク(500ml):砂糖32.4g
オレンジジュース(果汁50%、180ml):13g
つぶ入りオレンジ(250ml):32g
ショートケーキ:28.8g
シュークリーム:8.3g
コーヒーゼリー(100g):10.4g
コンビニ・プリンタルト類:糖質33.4gと食物繊維0.5g
コンビニ・プリンサンド類:糖質28.6gと食物繊維0.2g
果汁グミ:一粒に砂糖2gが一般的。子供の場合は2~3粒で目安に達する
チョコレート付きビスケットの一例:一箱50gに糖質31.3g、カロリー266Cal(植物
油脂やショートニングとして14.5gを含有)。糖質のCal/全Cal=47%
チョコレート:50g、砂糖28.3g、植物油脂16.6g、278Cal。糖質Cal/全Cal=40.7%
蒟蒻菓子:1袋(25gx12個入り)1個25gに糖質6.2g。1個で目安に達する
フルーツセラピーホワイトピーチ:1個150g、糖質(果糖ブドウ糖液糖と砂糖)26.6g、106Cal、糖質Cal/全Cal=100%

5. 加工食品製造時に砂糖が使用されるが、1980年代頃からコーンシロップを原料にした色々な甘味材が主として生化学的手法を用いて作られ、砂糖より安価であること及び食品のシェルフライフを伸ばすこと、そしてこれら甘味材を使用すると加工食品や加工飲料のフレーバー性やテクスチャー(のど越し等の食感)が向上すること等が評価されて、現在ではこれらの甘味材が多いに加工食品に使われている。これらの甘味材の種類には、以下のものが知られている。

ブドウ糖果糖液糖(果糖含有率が50%未満のもの)
果糖ブドウ糖液糖(果糖含有率が50%以上90%未満のもの)
高果糖液糖(果糖含有率が90%以上のもの)
砂糖混合異性化液糖(上記の液糖に10%以上の砂糖を加えたもの、例えばその
液糖がブドウ糖果糖液糖なら砂糖混合ブドウ糖果糖液糖となる)

2つ目の果糖ブドウ糖液糖と3つ目の高果糖液糖(High Fructose Corn Syrup:HFCS)は、「果糖(フラクトース)」が多く含まれ、砂糖より価格が安いこと、砂糖より20~50%甘みが強いこと、そして保湿性や吸湿性に優れていることから、焼き菓子に加えるとシットリさを高める働きがあることから寵用されている。その他の利用例ではジュースなどの清涼飲料水、スポーツドリンク、ドレッシング、焼き肉のたれなどの多くの食品に配合されている。

加工食品に使われる甘味料は砂糖だけではないということが、肥満と甘味料との関係や表示問題を考える際に砂糖だけを取り上げての議論では不充分になる、という点に留意する必要がある。

実際、HFCSは1967年に市場に導入された後、直ちに市場に受け入れられ、急速に拡大して、1980年の1人当たりの消費量は年間18.9ポンド(8560g、23.5g/日)になった。
甘味料市場におけるHFCSのシェアはカロリーベースで15%とされる(A Trend Projection of High Fructose Corn Syrup Substitution for Sugar, Amer. J. of Agricultural Economics,64,625-633、1982)。

2017年のHFCS生産量(830万トン)から計算するとアメリカ人のHFCS摂取量は69g/日に達している(High Fructose Corn Syrup Market Size, Trends and Forecast 2030Credence researchデータから引用)。

因みに、日本のHFCSの生産量は2021年に113.1万トンとなっており、国民一人当たりにすると、ほぼ1日25gになる勘定である。

日本を含めて世界は、甘味量の罠に嵌り込まされていると言える数字である。

6. 砂糖やHFCS等の糖分を過剰に摂取することによる弊害(The sweet danger of sugar 、Harvard Health Publishing 2022年1月6日より引用)

砂糖は炭水化物を含む通常の食べ物に自然に含まれているものであり、果物や野菜や穀類や乳製品等、普通見られるものである。これら食材中に含まれる砂糖は健康上問題になることはない。理由は、これらの食材は体内に取り入れられた後、「ゆっくりと」消化され、含まれている砂糖は細胞への安定したエネルギー源として働くからである。

一方、加工食品の日もちやフレーバー性や嗜好性を改善する目的で、加工時に外部から投入される過剰な砂糖や果糖その他は、吸収性の早さの問題とその糖分量の多さの2つの点で問題が発生するのである。

糖質分の吸収性の早さについては、次にデータが知られている。

お米等の穀物に含まれる澱粉は、体内で消化され吸収されるまでに3~4時間、砂糖や乳糖などの2糖類は10分~1時間、そして問題となる単糖であるグルコースや果糖(フラクトース)は数分で体内に吸収されてしまうのである(HFCSは、コーンシロップ中の澱粉を酵素分解や酵素的転換反応を用いて、人間では3~4時間を要するグルコースや果糖に変換する消化工程を、工場内で済ませてしまっていると言える)。

吸収の早さの問題も重なる形であるが、摂取糖分量の過剰さの問題として、次のことを知っておくことが大切である(Harvard Health Publishing,2021年7月1日、High-glycemic diets could lead to big health problemsから引用)。

我々が日々食べる食物に含まれる糖質分の健康に及ぼす問題を考える場合、一つの物差しとしてGI(glycemic index)値を知っておく必要がある。
先ほどの体内への吸収の早さのデータを使って、GI値を説明すると、体内で消化され吸収されまでに3~4時間が必要なお米等の穀物食品は「GI値が低い」食べ物であり、一方、数分で体内に吸収されてしまうグルコースや果糖(フラクトース)を多く添加した工業的に加工製造した食べ物や飲み物は「高いGI値」を持つものになる。

そして「高いGI値」の食べ物・飲み物を摂食すると、吸収性が早いことから血中の糖分レベルが急速に上昇することになり、膵臓からのインシュリン放出が促進されることとなる。そしてインシュリンの放出により、血中濃度は急速に低下することになる。

ここで2つの事柄が問題となって来るのである。一つはインシュリンの放出による血中濃度の急速低下により、欠乏感と渇望感が生じる可能性がある。これが、甘味食べ物と飲み物が持っている麻薬性・常習性とも言える性質であろう。
もう一つの問題は、この高GI値の食べ物と飲み物を頻繁に摂食して、上記のサイクルを頻繁に繰り返していくと、体重増加やインシュリン抵抗性や2型糖尿病に繋がっていく恐れがあること、そして心臓血管系の疾患リスクを高める可能性が高まるということである。

砂糖等の摂食と、それによる健康面の問題との間に因果関係・相関関係があると紹介する文献が多く発表されており、ここでの話の流れもそれらの文献を中心に紹介する形を取っているという点を指摘しておきたい。そして、研究者の中には、因果関係がある、と断定することは現時点ではできないとの立場の人々もいる、ということを紹介しておく。

とはいえ、砂糖やHFCSのような果糖が多く含まれている加工食品の使用実態や問題点をみていくと、「加工食品の全部」に懸念を持つのはやりすぎであろうが、特に一部の加工した食べ物や飲み物(超加工食品と呼ばれる範疇の加工食品群にかぶさる部分が大いにあると思われる)には、注意を向ける動きも必要なのではと考える。

かかる懸念をもっての世界における興味ある動きを以下に紹介していく。

7. 加工食品の包装前面(Front of Pack:「FoP」)に栄養成分を表示する世界の動向

食事と健康とを改善していくことを目指して、WHOは2004年にFoP栄養ラベル表示方式を提案し、パッケージ前面への表示を推奨する動きを始めている。

2つの目標を念頭に置いており、一つは消費者に対して健康的な食品の情報を提供すること、もう一つは食品工業界に対してより健康的な商品の開発を促すことであった。

その後、数多くの包装前面表示方式が、多くの国から提案され、どの方式が最も効果的なものであるか、をめぐって検討が続けられているのが現状と言える。

Food Quality and Preference誌(2023年3月、An 18-country analysis of the effectiveness of five front-of-pack nutrition labels,S.Pettigrew et al.)によると、
代表的な方式として5つがあるとしている(星の数表示方式・多面的な交通信号方式・栄養素スコア表示方式・推奨摂食表示方式・警告表示方式)。

8. 「交通信号式」要注意成分を表示する世界の動向(Traffic Light Labelling: A Guide for Food Businesses、Ashbury 2024,Jan.24から引用)。

英国では多くの食品事業者が、消費者の購入の利便性向上の目的から製品包装材の前面に栄養情報を色分けして、表示する方法を採用している。英国では信号ラベルと呼ばれており、世界中で採用されている食べ物や飲み物の包装の前面ラベル表示法(Front of Pack, 「FoP」)の一つである。

信号ラベルは、購入食品に含まれる主要な栄養素情報が一目で理解できるという利点がある。しかしながら、すべての食品企業と飲料企業が、かかる有用な情報を、何時の段階に、そしてどのように表示するか、を正確には理解していない状況にあるとしている。

(8-1)信号機(TL)ラベルとは?
包装済み食品や飲料製品の前面に、信号ラベルが使用され、栄養情報の迅速かつ明確な表示に役だつ。消費者は購入製品の購入時に必要な情報をそれから得ることが出来る。各栄養素(脂肪・飽和脂肪・糖分・塩分)は推奨される一日摂取量に基づいて、赤・オレンジ・緑で評価され、表示される。
赤はその栄養素が多く含まれており、食べ過ぎに注意が必要だと明示している。
オレンジはその栄養素が適度に含まれており、好む時に適量の摂食は問題ないことを意味する。
緑はその栄養素の量は少なく、日々定常的に摂食することが可能である。

(8-2)摂食量の目安
信号ラベルには成人の1日推奨摂取量に対するその栄養素が含まれている量の割合が%で表示されている。このラベル数値を参考にして、そして摂食する別の食品の栄養素を勘案して健康な食生活が送れるよう各自が考えることが求められる。

(8-3)FoP信号ラベルの表示義務はあるか?
表示義務はない。英国で販売される商品への信号ラベルシステムは自主的な制度であり、表示に義務はない。しかし、大半の小売店と食品企業が情報の利用を許諾している(opted in)。許諾を選択している企業は、カロリー・脂肪・飽和脂肪酸・糖分・塩分の量についての情報の提供に同意していることを意味する。

英国のスーパーの棚の商品の約2/3にFoPラベルが表示されている。これらの表示は保健省のガイドラインに従う必要がある。

FoP信号システムは任意だが、ほとんどの包装済み食品では、包装の裏面に重要な栄養情報の表示が義務付けられている。

9. 学校から要注意加工食品を追放するという動きがある(Advocates hope Rio’s ban on ultra-processed foods in schools triggers wave、NCD Alliance 2023, August 11から引用)。

2023年6月にリオデジャネイロ市で、公立と私立の学校内での超加工食品の販売を禁ずるという法案が可決されている。1月のニテロイ市に続く2番目の法案可決だという。校内での販売を禁じる対象としては、クッキーやキャンディーやソフトドリンクなどの砂糖等や脂質を多量に含んでいる食べ物・飲み物という。

2016年に超加工食品の栄養成分を包装前面に表示することを始めているチリの動向(Advocates hope Rio’s ban on ultra- processed foods in schools triggers wave、NCD Alliance 2023, August 11から引用)から見ると、適切な前面表示を行えば、施行2年後に高含量糖分を含む食べ物の販売は26.7%の減少が、高食塩商品は36.7%の減少が、高脂質商品は23.8%の減少が起こっているという。

学校から健康に良くない食べ物・飲み物等を追放することや、購入加工食品に適切な表示をしていくことを検討し推進していくことで、少なくとも幼児・児童・思春期の若者らや保護者らがこの問題に対して、適切な判断をする材料や判断する機会が得られ、結果的に彼らの健康を守っていく社会作りが醸成される方向性が見えてくるのではと思う。

但し世界に巨大食品・飲料メーカーが存在しているのも事実で、食品・飲料メーカートップ10社が世界で販売されている食品売上げの80%をコントロールしており、そして彼らが稼ぎ出す総利益は毎年1000億米ドルを上回っており、その利益の3/4が超加工食品からのものだという事実があることも侮れないものであろう。

最後に「肥満に打ち勝つ力と智恵は、若者たちが与えてくれる」との情報を紹介して、締めくくりとしたい(Giving young people the power to beat obesity、 Horizon The EU Research & Innovation Magazine、2022,2月14日By J.Smithの情報を引用)。

若者たちの健康改善を目指す政策設定や決定を行う時点で、若者たちの発言機会はほとんどない。しかし、政策の立案と決定権を持つ人々に何を、如何に変えていくことが望ましいかを伝えることが出来るのは、若者たち以上に適格な存在はないのである。

若者たちに権限を与えて政策を描き、若者たちが変化の主体になっていくことになれば、どんなことが起こるであろうか?
10代の若者たちの太りすぎの問題を解決したいのならば、先ず始めに行うことは若者たちの声を聞くことが解決に向けて新しい政策を立案する上で必要なことだと、研究者らが作る国際的組織が指摘している。

太り過ぎの原因と解決方法についての若者たちの意見は非常に重要なものであるが、現実には政策決定権者や研究者らに見過ごされている、と著名な研究者であるKnut-Inge Kleppさんは語っている。 Kleppさんは、青年期の諸課題を研究することで、若者たちの肥満問題の世代間ギャップを埋めることを目指している研究団体(CO-CREATE)の主要研究者である。

「政策を執行し、確実な効果を生んで行くには、政策設計段階に若者たちが参画することが決定的に重要なことである」とKleppさんは指摘する。「若者たちは、政策による介入がどのように効果があるのか、如何に適切なものであるかを、理解している人々だ」。

この考えを基にして、欧州の5カ国で16-18才の若者の参加のもとで「思春期の太りすぎ削減課題」を解決していくことを目指すCO-CREATEプロジェクトが立ち上げられた。
その結果、専門家らや大人たちでは想像出来なかった政策的アイディアが、多数若者たちから展開されることになったのである。以下に例を挙げると、

授業時間外での学校の体育施設の利用・ジャンクフードの広告制限を提案しているノルウェーの若者がいる。 そしてノルウェーの若者たちは健康に良い食べ物が、販売されている数多くのジャンクフードに比べて割高だ、という点を指摘している。
即ち、健康に良くない食べ物の広告を制限し、健康的な食べ物の競争性を高めれば、若者たちの食に対する行動を変えていくことが出来るだろう、とノルウェーの若者たちは発言している。

オランダのアムステルダムとアルメレの若者たちは、学校での調理教育実習の活動や学校食堂に、学生ら自身が工夫したメニューで作った温かで健康に良い美味しい食事を提供するシステムを持ち込むことを提案している。
オランダの若者たちはまた、消費者への意識付けならびに生産者に対しては砂糖の添加量を下げるインセンティブになると期待できる、砂糖税(1g当たりに課税する)の導入を提案している。彼らはまた、健康に良い食べ物や飲み物の価格を引き下げる行動や、スーパー等における健康に良い食べ物や飲み物の販売場所を消費者に判りやすい場所に移すことを提案している。

ポーランドとポルトガルの若者たちは、同様にスーパーの課題を取り上げて、健康に良い食べ物をもっと目立たせることを狙った活動の必要性を指摘している。
ポーランドの若者たちは、健康に良くない食べ物が販売店において過剰な仕方で数多く陳列されており、それが購入時の選択に影響している点を懸念している。またポルトガルの若者たちは、それら健康に良くない食べ物が入り口付近やレジ近くに配列されているという問題点を指摘している。

英国の若者たちは、健康的な食生活習慣の支援の為にソーシャルメディアの利用を提案している。 現在、若者たちはソーシャルメディア上で、ジャンクフードの市場戦略の攻撃に曝されている状況と言える。このジャンクフードの攻撃から子供達を守るには、学校レベルだけでなく、地域レベルでも国レベルでも健康的な食べ物の情報が入手できるソーシャルメディアのアカウントの作成が求められると指摘している。

***
SPOGs(市民の、特に子供の健康を守る)のテーマとして、例えば交通信号表示システム運動やパッケージ前面への表示義務運動を組み合わせた最適な表示方式を検討して、表示を義務化する運動やTVその他の媒体を利用して高含量のHFCS等糖質分を含む商品(一個や一本で30~40gの糖質分を食べてしまうことになるようなもの)を広告宣伝する業者に対して課税することや販売店内の商品陳列様式の規制を設けるとか、色々と考えられることは多いのではと思っております。

「護憲+BBS」「新聞記事などの紹介」より
yo-chan
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