老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

農水省は開門して即刻実験せよ(諫早湾干拓訴訟)

2008-06-28 20:49:20 | 社会問題
6月27日、諫早湾干拓訴訟で佐賀地裁の神山裁判長は、3年以内に排水門を開け、5年間常時開門するように国に命じ、漁民の要求を一部認める判決を言い渡した。
http://www.asahi.com/national/update/0627/SEB200806270002.html
http://mytown.asahi.com/nagasaki/news.php?k_id=43000000806280001

まさに、憲法76条3項「すべての裁判官は、その良心に従い独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律のみに拘束される」の規定を踏襲した判決であった。この裁判も典型的な行政訴訟である、今後控訴・上告された場合に上記の憲法規定がどこまで踏襲されるかウォッチングしたい裁判である。

一方、若林農水大臣は上記判決に対し即刻控訴する旨記者会見で述べていたが、同じ農水省管轄の漁民と農民に対して公平な判断とは言い難い。果たして漁民の云うようにノリの収穫に被害がでているのか、或いは農水省が云っているように被害の発生はないのか、このような自然界のことは海洋学者にも容易に分かるまい。まして専門外の裁判官にも科学的な分析は不可能であろう。それだけに神山裁判長の判断は海を極力元の状態に戻し、自然界の浄化に委ね、その結果を見ようと言うことだと思う。誠に物の理にかなった判決である。

それに対して農水省は、ノリ被害との因果関係は不明確との、これまでの机上の強弁に加え、改めて排水門を開くことは既に干拓地で営農している人に新たな被害がでる恐れがあるとの理由で控訴・上告する構えである。高裁・最高裁になれば行政寄りの判決を引き出せるとの思惑が見え隠れする。裁判官は内閣が任命するとの憲法規定に期待していることは言わずもがなである。このような行政裁判にこそ裁判員制度を導入すべきであろう。

仮に最高裁で一審判決が支持されたとしても、裁判が長引く分調整池は濁りでダメージを受け、一方ではノリ漁場が元の海に戻る復元力は低下して、一審判決の5年の調査期間では不十分に成っている可能性も高い。このように閉門期間と復元に要する時間が比例関係にあるとすれば、裁判が長引けば長引くほど5年の固定の調査期間は漁民には不利になるであろう。そのような意味からも農水省は控訴を中止して排水門を極力早く開いて調査協力すべきである。

この事件のような公権力による漁民の排除は、パレスチナの土地にイスラエルが建国されたようなもので、漁民にとってはまさに生活圏を奪われる死活問題である。果たして漁民の主張が正しいか農水省の云うことが正しいのか、人知の及ばぬ自然界のことは、机上の空論での判断ではなく、壮大な自然界の生の実験結果で判断すべきである。敢えて云えば、諫早湾の自然のことは、農水省のエリートよりも漁民の知識に一日の長があるように思う次第である。

「護憲+BBS」「 裁判・司法行政ウォッチング」より
厚顔の美少年
コメント
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