老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

読売新聞世論調査で、改憲反対が多数に

2008-04-11 09:59:38 | 憲法
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20080408-OYT1T00041.htm
『憲法改正「反対」43%、「賛成」を上回る…読売世論調査』(読売オンライン4/8)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-04-09/2008040901_03_0.html
『「改憲反対」が15年ぶり上回る 「読売」世論調査 「9条守れ」6割に』 (赤旗4/9)

この件について、学生時代、社会調査のゼミにいたものとして、データの読み方を含めて論評します。

まず、読売新聞が、この「日本人」と言う名の調査を始めてから16年のうち、15年ぶりに、改憲反対という人が改憲賛成をわずかながら上回ったというのが、読売新聞の記事の見出しの趣旨である。

正直に言って、0.6%などと言う数字は、統計上の誤差の範囲内である。これをもって、世論が護憲派が多いと断ずるのは早計である。しかし一方で、赤旗の記事中に、グラフで示されているように、改憲賛成が減り続けてきたという「トレンド」を見ることが重要である。

読売は面接方式と言う、社会調査では最も確度が高いという調査手法を取っている(それなりの問題はあるが余談にすぎない)。その中で、改憲賛成が減りつづけ、改憲反対が増え続けているというデータは、日本人の意識上、現行憲法が根付いてきたというべきであって、読売の記事中で言う、「憲法が時代に合わなくなってきたという認識が・・・」と言う一文は、自らの調査の内容を否定する間違った解釈である。

一方、赤旗が「9条の会」の増加を、護憲派の増加と関係づけているのは、必ずしも正しくない。因果関係が不明で、まだ仮説の域を出ないものであり、この点は赤旗の勇み足である。

さて、調査結果の詳細を見ていくと、読売では、自衛軍保持の必要性にある程度の支持が集まったことや、内容もまだ不分明な自衛隊派遣恒久法が必要か否かという設問で、「必要」が多かったということのみを取り出して論じている。

「自衛隊派遣恒久法」は、まだ何も知らされていない状態での設問で意味は全くない。もし自民党がごり押しで成立させ、自衛隊を派遣した場合に死者が出れば世論が一変するのは、イギリスやスペイン、イタリアでのイラク戦争撤兵の動きや、アフガニスタンからのカナダ軍の撤兵を支持する声がカナダで強まっている動きを考えれば、容易に想像できる。なお、恒久法の石破私案では徴兵制まで視野に入れていることを、この調査を受けた人々は知るまい。

私が最も問題にしたいのは、「自衛軍を認めるべき」と言う意見が20%代ながら存在することと、内容も知らずに、自衛隊派遣恒久法に賛成する人が半数近く存在すること、そして調査結果では見えてこない、現在の日本における基本的人権の危機である。

自民党の「新憲法草案」を読まれた方はいるだろうか?私も部分的にしか見ていないが、「新憲法草案」では、現行憲法の平和主義、基本的人権の尊重などに、微妙な言い回しの変化で、大きな制約を加えようとしている。
 
もし、単純に、何の知識もなく、自民党の草案を出された場合、自衛軍を明記しているが平和主義は謳っている(実は穴があり、派遣恒久法と合わせ技で、世界中で「自衛」と名乗り戦争ができる仕組み作りが企まれている)し、人権の項目も、環境権などの新しい権利が加筆され、一見良くなったかに見える。
 
しかし、実は現行憲法第12条、13条で、人権は、「公共の福祉のためにこれを利用する責任」と、「公共の福祉に反すしない限り~最大の尊重を必要」としているものに対し、自民党の草案では、「公益および公の秩序に反しない限り」と言いかえられている。
 
似たような言葉だが、「公共の福祉」は、国民の最大多数の最大幸福を意味すると考えられるのに対し、「公益および公の秩序」とは、行政府の都合を意味する。つまり環境権などを認めたように見えて、実は基本的人権を国民の福祉による制約では無く、行政府の都合で制約できると改訂しているのであり、基本的人権の保障にとって由々しき問題である。私は、この点を今後の護憲活動の焦点の一つに据えるべきと考える。
 
共産党が繰り返してきた、9条護憲も一つの柱だが、上記のような詳細を知らずに、自民党の草案を出された場合、まず自民党の支持層である約30%は盲目的に支持し、さらに事実を知らない人々が加われば、得票の過半を占めることが可能となる危険がある。
 
既存護憲政党による9条護憲連呼は、一定の役割を果たしているとはいえ、それだけでは、自衛軍備を望み、徴兵制の危険を隠して進められている自衛隊派遣恒久法に賛成する人々を説得できない。

今後の護憲活動は、9条ばかりでなく、自衛隊派遣恒久法の欺瞞、12条、13条護持と、25条における生存権を主張した反貧困問題とを絡めて、幅広く憲法の知識と自民党草案の危険性を広めて、憲法全体をより身近なものとするべく呼びかける活動であるべきである。

最近の自民党と日本会議と右翼が結託しての、表現の自由への侵害(映画「YASUKUNI」の上映問題)や、男女平等への挑戦(つくば市における、ドメスティックバイオレンスに関する集会を、右翼の街宣車が妨害した件)など、個々の基本的人権への攻撃は今も激しい。自民党要人が、「人権メタボ」などと言う暴言を吐くなど、日本において、基本的人権は未だ危うい状況にある。このような状況を、単に「共産党だから」、「左翼の言うことだから」と言って無視させないで、国民自らのものとして考えてもらう手段を講ずるべきであろう。

「護憲+BBS」「マスコミ報道を批評する」より
眠り猫
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