life goes on slowly

或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「だいたい四国八十八ヶ所」(著:宮田 珠己)

2011-04-10 23:14:14 | 【書物】1点集中型
 タマキング本3冊目は、結果的に「だいたい」ではなく「全部」になってる四国お遍路の旅。本屋で見つけて装丁が気に入っちゃったので(特に帯の「八十八ヶ所道中高低図」が)予約入れて借りてみた。←気に入ったなら買えよ、という突っ込みはなしの方向で。

 神妙でもなければ信心もない、でも歩きたい。そこにスタンプラリーのように札所があるから巡ってみたい……というのは、道の駅巡りする人の気持ちに近いものもあるのか? という気もした(道の駅を歩いて巡ることはあまりないだろうは思うが)。

 出だしから靴の底が外れたりマメ全開だったりと難儀に見舞われていたタマキングだが、相変わらずの変なものに惹かれる視点とか、信仰から出た旅ではないだけに俯瞰した感じのお遍路仲間考察とか。語り口は今までよりも若干ソフトかな? ってまだ2作しか読んでいないが、とか思ったけど、そういうタマキングらしさはやっぱりところどころ思わず吹き出しそうになる。変なもの写真についてるキャプションも含めて。
 個人的には、卯之町の雑巾がけレースに関する所感にけっこう共感した。全長109mの廊下の雑巾がけタイムを競うというシンプルかつ馬鹿馬鹿しいレースなのだが、馬鹿馬鹿しかろうがそうでなかろうが、こういうものってやってみるとその結果に一喜一憂するのが人間というものだと思う(おまけに実際、このレースの最高記録がわりとすごそうな記録であったりもする)。タマキング曰く、

 100メートル走で件大会優勝と言うような経歴も悪くないが、この雑巾がけレース最高記録保持者というのは、かなり素敵な気がした。
 (略)相当速いんだけれども、馬鹿馬鹿しいというか、馬鹿馬鹿しいんだけれども、実際やってみると誰もかなわないという、そのあたりの按配が絶妙だ。馬鹿馬鹿しいことに全力を尽くし、その結果が他の追随を許さないという、そういう人生を私も送りたいものだ。

(「4章 宇和島駅から、今治駅まで」より)

 相変わらず気楽に読ませてもらいながらも、思わず胸に手を当てて自己をの人生を顧みるべきかと考えた一節であったりする。
 タマキングの文章を読んでいると、どこまでがノリでどこからがわりと真剣なのか、常に疑ってかかってしまうようになるのだが(笑)でもそれはどっちでもいい。読んだ自分が感じたことが、自分にとってはすべてなのである。タマキングが歩いて、見て、感じたことだけがタマキングのものであるのと同じように。