デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
 



昨日の記事を書いてから、自分の中でなにか、もやもや感が残っていた。なにかを、し忘れている気がしたのだ。そこで気づいた。以前から見ようと思っていたのに、ずっと見ないままでにいた、アカデミー賞の7つの部門にノミネートされたのに、受賞はゼロに終わった作品があったことを思い出したのだ。その作品を借りてきて、先ほど見終えた。
作品名は『インサイダー』。この作品は日本でも社会的に影響力のある企業の内部告発者がたどる運命の例えとして、しばしば取り上げられたし、またラッセル・クロウやアル・パチーノのファンということで見た人も少なくないと思う。
物語は人気ドキュメンタリー番組のプロデューサー(アル・パチーノ演じるローウェル・バーグマン)のもとへ、匿名で大手タバコ産業の不正を告発する丸秘の内部資料が送りつけられたことから始まる。バーグマンは、化学者で健康産業畑を歩んだ後、大手タバコメーカーB&W社の研究開発部門副社長に就任したものの「正当な理由なく」解雇されたジェフリー・ワイガンド(ラッセル・クロウ演じる)に、その内部資料についての解説を依頼する。
ワイガンドは家族を養わなければならない身であり、かつ解雇されたB&W社から退職金も手厚い医療保険も受けており、会社との間には守秘契約もある。しかし、ワイガンドにマスコミが接触したことを知ったB&W社は、彼を脅迫する。その後のワイガンドとバーグマンには、あらゆる困難や障害が待ち受けていたのだった…。

作品中に用いられている個人の名前や社名などは実名である。一部に脚色はあるものの事実に基づいた作品だと、ラストの字幕にある。この作品は2時間半近くあるが、その長さを感じさせなかった。
この作品のワイガンドは、きわめて難しい役どころではないかと思う。しかしラッセル・クロウは、一般市民で家族を養わねばならない立場にありながら、信念を貫き通すか、前の会社や司法のプレッシャーに屈するかで、ナーバスに葛藤する普通の男を、鬼気迫る演技で見事に演じきっている。たぶん『インサイダー』を見てから、彼がその次に主演した『グラディエーター』を見た人なら、ワイガンド役とマキシマス役の俳優が同じラッセル・クロウなのか?と自分の目を疑った人もいるのではないか。
周知の通り、ラッセル・クロウは『グラディエーター』(2000)の剣闘士の役で、アカデミー賞主演男優賞を受賞した。しかし、私は『インサイダー』(1999)でのワイガンド役こそ、受賞に値する演技だったのではと思う。ちなみに1999年のアカデミー主演男優賞は『アメリカン・ビューティー』のケビン・スペイシーだ。ケビン・スペイシーの演技も私は悪くないと思うが、ラッセル・クロウの演技の方がより素晴らしかったと思う私の主観とアカデミー賞の選考する独特な映画芸術科学アカデミー会員の主観とは異なっているようだ。(当たり前か(笑))
私は何も自分の主観でよいと思ったものが、受賞に値する作品そのものであるなどとは思っていない。しかし、『アメリカン・ビューティー』が数々の栄誉を獲得した翌年のアカデミー賞では、『エリン・ブロコビッチ』で主演したジュリア・ロバーツが主演女優賞にノミネート、しかも彼女は立派に受賞している。私は、いろんな意味で、こういった現象が付きまとうのもアカデミー賞なのだと思う。
最初に書いたとおり、『インサイダー』はアカデミー賞の7つの部門にノミネートされたが、受賞した賞はゼロなのである。

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