デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
 



加藤徹 著『京劇―「政治の国」の俳優群像 』 (中公叢書)、加藤徹 著『梅蘭芳―世界を虜にした男―』 (ビジネス社)読了。
中国の京劇とその俳優の生涯をとおして、その魅力と中国の姿を浮き彫りにした二冊。舞台劇に関わる人々というのは外交的営業的な性格および生活スタイルにならざるを得ないところもあるから、京劇を知れば中国のことがわかるとは飛躍的な表現かなと思いはした。しかし、思いのほか歴史の長くない京劇がいかにも昔から中国にあるアイデンティティーを投影していること、中国を統治した人々や革命に関わった人が京劇を愛し、また宣伝に使っていた歴史を知ることができ、その詳しい内容はすこぶる興味深かった。
おもしろいことに京劇制作に関わった統治者たちのエピソードは旧約聖書に出てきそうなものもあったり、中国以外の演劇好きの女帝が同じようなことをしているなぁと思わせるようなものもあったり、いい意味でどこかで読んだり見たり習ったりしたような内容が多くて、読んでいて思わず笑みを浮かべてしまうこともあった。
京劇と日本との関わりは思いのほか深く、とくに梅蘭芳の存在感は大きい。他国との国交を樹立させるには民間交流、なかでも芸術文化の輸出は大きな武器になる。実力があり人とのつきあいの立ち振る舞い方が洗練された芸能人・名俳優が事実上の外交官となって活躍するさまには脱帽するしかないが、舞台に立つにも殺される可能性が低くなく、交通網が発達しておらず乗り物の危険度も高く国際情勢も一歩間違えば民間機であろうが問答無用で即撃墜されそうな時代に、よく世界中を公演してまわったものだと思う。
あと、私の何の根拠も無いところからの勘だが、梅蘭芳と周恩来は生涯が多忙であっただけでなく二人は生きる哲学というか信念や性格が似ているように思った。

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