田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

殺されるのは、イヤダァ イジメ教師は悪魔の顔/ 麻屋与志夫

2011-10-10 21:55:44 | Weblog
作者からのお詫び。
まちがいました。ごめんなさい。
12と13節を入れ違いました。
この12節をアップするのが、あとになってしまいました。





12

「わが主。わが主は、今朝はお疲れのようです。夜の間なにかあったのですか。なにか起きたのですか。もっと精のつくようにいくらでも新鮮な若い血をさしあげます。燔祭の焼き肉でも捧げましょうか。主。わが主、声を聞かせてください」

職員室の方角に逃げるもの。
校庭に向かうもの。
廊下をただ走っているだけのもの。

満足しきった声を張り上げている。 
我田先生は楽しんでいる。

だれに、聞かせているのだ。
だれに、話しかけているの。

生徒たちは夢中で逃げながら、不思議に思った。

だれと話しているのだ。
だが、確かめてはいられない。
そんなことを!!
確かめようと立ち止まったら。
殺してくださいというようなものだ。   
切り裂かれ!!
ピンクの肉を見せている被害者たちを。
のたうちまわって痙攣し苦鳴をあげているものたちを。
血だまりを……。
先生は見つめている。
ニタニタ笑いながら――。
楽しそうに――。
じっと――。
見つめながら――。
ボソボソつぶやいている。  

富子は保健室にのこっていた。
親友の秀子の身を案じていた。
それに恐怖から立ち上がれでいる。
金縛りにあったように。
体が竦んで動けないのだ。  

秀子の運命がわかった。
殺されていた。
カッターナイフの薄く鋭い刃で刻まれている。

こんどは、富子だ。
襲ってくる我田先生をさけようと富子は前に手をつきだした。
フロントのワイパーのように両手を扇形型に動かす。

「あら富子ちゃん。秀子みたいにきざまれたいのね。いい子だわ。なかよしでしたものね。秀子と天国へいったら。あらまちがえたわ。あんたらのいくとこは地獄だよ」

「アッチヘイッテ」

「あらどうしてかしら」

「コナイデ、コナイデ」

「富子ちゃんのすきな我田センセイですよ。どこから刻んであげましょうかね。どこからでもいいですよ。はっきりこたえてくださいな」

いつもとちがう。
優しすぎる声。
目は白目だ。
眼球が反転している。
白い目が床を見ている。
瞳のない白い目が床を見ている。
ときどき真っ赤に光る、白い目が生徒たちの動きを追う。    

血を見たい。
血の臭いをかぎたい。 
血を主が飲みたがっている。
血がほしい。
切り裂きたい。
やわらかな瑞々しいこどもたちの肉を。
殺したい。
断末魔の叫びをききたい。
血が見たい。
飲みたい。
ドクンドクンと血を飲みたいと、主がいっているの……。

我田先生のまわりにブルーのフレイヤーが揺らいでいた。
だれか他の人がいるみたしいだ。

フレイヤーに縁取られた先生が狼みたいに見える。

わたしは狼に襲われる赤ズキンちゃん。

もう助からない。    
現実にはいない狼を想像したことで、恐怖はさらに強くなった。
 
後にすさる。
ベットの縁に背中がつきあたった。 
もうこれ以上後ろにさがれない。

ダメだぁ。

なにかが手にふれた。

冷たい手。

秀子なの? 

富子は股のあいだが濡れている。

オシッコをもらしたのだ。
オシッコをもらした。

秀子の手をひいた。
秀子の運命がわかった。
殺されていた。
カッターナイフの薄く鋭い刃で刻まれている。

青い血のけを失った顔がベッドのしたからのぞいていた。

青白い、死んだ顔。

頸椎だけを残してほとんど円を描くように切り裂かれた首。
恐怖のために、顔はゆがんでいた。
痛みのために顔はひきつり泣いていた。
顔が涙でくしゃくしゃだ。
こんな顔で死ぬなんてヤダァー。

こんどこそ富子は絶叫していた。

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ミンナコロシタイ!! イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-10 11:33:08 | Weblog
13

「わたしまえから。知っていたよ。先生がナイフで翔太の鞄、切ったの見ていたよ」

我田は手近にいた。

逃げ遅れた。

生徒の喉首を。

冷ややかに切り裂いた。

いっきにナイフをさしこみリンゴの皮でもむくように円く切り裂いた。
だいぶ、なれてきた。
もう何人殺したろう。
どうせなら、生徒をみんな殺してやる。
ナイフから伝わってくる生徒たちの恐怖がたまらなく楽しい。
教室の支配者は先生だということを刻み込んでやる。
わたしは喉切り魔。
生徒たちのかわいい喉を切り裂いてやる。

ナイフが迫ってくる。
富子は必死で避けた。
それでも肩に痛みが走った。
 
このとき、床下で高い声がした。
ボーイソプラノ。
いやもっともつと高いハイトーンのひびき。
ひびき?
そしてやがて――。
そのこえは三重にかさなってひびいた。
超衝撃波のような振動がする。
あまり高すぎて肌がひきつれる。
耳に衝撃がある。
先生の動きが一瞬とまった。
富子はそのすきに逃げた。

「翔太の声みたい。どうして翔太の声がするの。イジメぬいて追放したのに」

そうだ。
あれは翔太の声だった。
富子は肩を押さえて廊下を逃げた。
翔太に救われた。
どこにいるの。
翔太。

「我田先生。止めなさい」

やっとほかの先生が保健室に飛び込んできた。
中島先生だ。

「我田先生。止めなさい。止めるんだ」
とは中島はいわなかった。
生徒が期待したようなことばは。
中島先生の口からはでなかった。

「どいてよ」
だから我田先生もそんなことはいわなかった。

「きみたち、どうしたの? 我田先生にさからっちゃダメだよ。先生にさからうとどういうことになるか……ヨウク考えたかな。先生にさからうとこうなるんだよ」
中島先生もニタニタ不気味に笑っている。
血をふいてたおれている生徒をゆびさして。
女児を頭の毛をつかんでひきまわしている。
まだ血を吹いて呻いているのに――。
逃げ遅れて保健室いた生徒たちが悲鳴をあげてドアへ殺到する。
我田がナイフを横に振る。
そこに中島に胴があった。   
ドバッと血がふきだす。
「我田先生。ぼくを刻むなんてヒドイ。ヒドイですよ」


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カッターナイフの恐怖 イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-10 05:43:03 | Weblog
11

「先生、秀子はどうしたの」

我田先生に声がとんだ。
先生の顔が赤い。
興奮している。
なにか楽しいことをしてきたみたい。

クラスの女生徒全員が不安を感じた。

保健室から先生だけがひとりでもどってきた

「気分がわるいっていうから、やすませておいたわ」
「うそよ。先生……秀子になにかしたでしょう。なぐったの」

富子が叫ぶ。
すばやく立ち上がった。
クラスの過半数の生徒が秀子の身を案じて教室をとびだした。

「血だわ。血だ。先生……」

あとから保健室に駆け込んできた先生を生徒たちがふりかえった。

そして、固まった。   
瞬間冷凍にあった魚のように口を開いたままだ。 

だれも、動けない。

なにか滴が先生の手からポトっと落ちた。

水ではない。
汗でもなかった。

滴には色がついていた。
スッと糸をひいて落ちた滴は赤かった。
血だ。
血だ。

どうして、先生の指先から血が滴っているの。                  

「あらあ、秀子ちゃん、どこにいるの」

先生もおどろいている。
秀子の死体が消えていた。

「おう、わが主(マイ ロード)、わたしの捧げた生け贄を受け取ってくださったのですね。もっともっと捧げます。もっと生け贄をお望みなのですね。ハイハイ。わかりました。わかりました」

まるで、できのわるい少女ホラー漫画のようなセリフだ。
漫画のフキダシのなかだけでしか通用しないセリフだ。

先生がポケットから大型のカッターナイフをとりだした。
まるで死神のもつ刈り取り鎌のようにみえる。

白く鋼が光った。    
刃が白くきらめいた。

何人かの生徒が絶叫した。    
腕や肩が血を噴いた。

天井まで血が噴き上がった。
そして排水口に流れ込むように。

床の一か所に集まる。

血のスダレ越しに我田先生が顔をひきつらせた。

笑っているのが異様だ。

「わが主。わが主」

恍惚の表情にかわった。
うっとりと虚空を凝視する。
表情に残忍な笑いが浮かぶ。

先生は楽しんでいる。 
あんなに、楽しそうな先生を見るなんてはじめてだ。

「わが主。わが主。もっともっと生け贄をささげます。どうぞ、その御姿をあらわしてください。拝ませてください」

ナイフが生徒たちに襲いかかる。
やっと、生徒は逃げること。
逃げなければならないことに気づいた。
先生から逃げなければ。
コロされる。
コロされてしまう。
切り刻まれた友だちが床でのたうっている。
友だちをたすけている余裕はない。
痛みを訴え泣きさけんでいるクラスメイト。 
でもじぶんたちだけで逃げなければ。  

コロされる。

コロされる!! 



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