田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

悪意の正体か見えてきた イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-04 14:39:33 | Weblog
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翔太を揺り起こす。

「ジイチャンがあぶない」

寝言をいっている。
だが――。
あまりにことばがしっかりしている。

「ジイチャンがあぶない」

部屋の外からは……。
都会の明け方の騒音が忍び込んでくる。
都会はもう目覚めているのだ。
翔太の声を聞いているうちに。
誠も父の姿が見えてきた。

暗い洞窟にうずくまっている。
黒っぽい後ろ姿がイメージできる。
父の前方にさらに暗い闇がわだかまっている。
なにか蠢いている。
なんであるのか?
その実体は分からない。       
タールを流したような闇が幾重にも重なっている。
圧倒的に邪悪なものが父に迫っている。
分厚い闇のなかで――。
なにか巨大な〈悪〉が始動している。
忌まわしいもの。
動きだしてはいけないもの。
凶悪な物の怪‼。 

翔太が見ているものを――。
――誠に転写しているのだ。
翔太の圧倒的な能力。
誠はうれしかった。
ついに、誠がうけつぐことのできなかった。
超能力。

隔世遺伝だ。

翔太が成尾家の能力を受け継いだ。

誠には漠然とリスクを予知することはできても。
イメージとしてとらえることはできない。
迫りくる悪意の波動を。
おぼろげではあるが。
感じることができる。
その能力のために。
いままでどんなに助けられたか。      
そうした能力は母から受け継いだものだ。
幼いときから、イジメにあってきた。
その危険な辛さと。
戦うための能力の発現は。
誠にはあった。
はやくからかった。

だがそこまでだった。

能力というものは、親から子へと伝わりつづける。
それがありがたいことに翔太には。
誠より強く伝わったらしい。
翔太は。
いま。
その能力が。
ますますつよくなっている。

進化しているのだ。

翔太が熱をだしたのは。
知恵熱のようなものだった。
能力に目覚めるための通過儀式だった。
翔太がいよいよ目覚めた。
うれしさのあまり。
誠は感激の涙をこぼしていた。

「翔太……起きて。翔太……どうしたの。熱はないわ」

妻は誠を見ていう。

熱はない。
そういうことではない。
熱にうかされているわけではない。

翔太……なにがあるんだ。

なにが起きているんだ。



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