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田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

血をすするもの イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-08 17:29:11 | Weblog
9

「ここにカツヘイジイチャンの匂いがのこっているよ」
奉安殿の跡に造成した『岩石公園』の植え込みの影だった。
注意して見ないとわからない。
なにやら人が潜れるくらいの穴になっている。
最近だれかが蓋をあけたらしい。
周りの苔が剥れていた。     
もちあげる。  
マンホールのように地下へむかって鉄の梯子が落ちこんでいく。

降りた。
腐った? 土の臭いがする。
いや、土ではない。
ほかのものが腐っているのかもしれない。

「ジイチャンの匂いがどんどん強くなるよ」
「パパにはなにも嗅ぎ取れない。なにも、感じられない」

誠には、腐臭しかかぎとれない。
「こんなに匂うのに……パパかわいそうだね」
「こいつ」
「この時間だと上の教室では授業やってるよね。みんな元気かな」
「ああ、元気だろうよ」
ふたりは声を低めて話あいながら進む。
おぼろげながら勝平のすがたが前方に見えてきた。

「翔太がジイチャンの匂いを追いかけてきました」
「そうか、翔太がおれのいる場所をかぎ取ったのか」
父はそっと翔太に頭に手をやった。
この狭く暗い所で父は恐怖と戦いながら潜んでいたのだ。
 
闇のなかに祖父が穏形していた。
黙っているようにという、サインを翔太におくってよこした。      
ぐいと孫をだきしめて前方を指差す。
黒々とうごめくもの。
形体がある。
でも実体があきらかではない。

誠も見た。
遥か彼方に黒々したた生物がわだかまっている。
口らしきものをあけて上から落ちてくる滴を飲んでいる。
悪魔は食事中なのだ。

「だれかが、生け贄を捧げたのだ」
疲れているはずなのに低くささやく勝平の声にははりがあった。
長い時間、ここにいたはずだ。
翔太が黒飴をジイャンの口にもっていく。
うなずきながら、父が口を開けるのを誠は見ていた。
能力を使い過ぎて疲労困憊していた勝平。
たった一粒の黒飴のカロリーと翔太と誠の存在が勇気をあたえた。

誠は目前の闇が凝固したようなものに注意を集めた。
校舎の地下に、住みついた人間ではないもの。

あらゆる悪の元凶。
悪魔。
人狼らしい姿が見えてきた。

この人狼と戦うのには、ここではだめだ。
ここはヤツのテリトリーだ。
わたしたちに味方してくれる場所。
そんなところがあるとしたら、尾形だ。
 
「ともかく、見てはいけないものをみてしまった。戦いを挑んでも勝算のない相手だ」

「わたしはなんの能力もないけど、お父さんと共に戦います。わたしたちがイジメにあってきた理由がわかりました。翔太だってあのままこの街にいたら命がなかったでしょう。アイツのこの世での存在をあばきだす能力。悪の存在を白昼のもとに暴露できる。その能力があるために、わたしたちは迫害されてきた……」   

「死ぬかもしれないなぞ。負けたら終わりだ」
「生き死には問題ではない。戦うことに意義がある」
「よく言った。おれはながいことなにかこの学校の地下にはいると感じてきた。とても常識ではかんがえられないことがここでは起こりすぎた。ひとではないものがいるのではないかと疑ってきた。そのちからがこのところ強くなった。それでこの場所が特定できた」

「あの、蛇の棲む谷におびき寄せるのよ。尾形で戦うのよ」

お母さん、お母さんなのか? 

並子の声だ。

頭にひびいてきた母の声に誠はおどろいている。
母がわたしたちそばにいる。
そうだ。
現実を超えた声を聞きとる能力はわたしのものだ。
わたしにも、それくらいの能力はあったのだ。

「並子どういうことだ」
勝平が亡き妻にきいている。

三代の家族、勝平と誠と翔太は横穴の入口のほうにすこし後退した。


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お母さん、タスケテ!!秀子死ぬ イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-08 09:02:48 | Weblog
8

調理の時間に魚を三枚におろした。
――ときみたいに。
我田先生は秀子の喉に!!
ナイフ押し当てた。
このあたりから。
――切り裂こうかしら。
と、にたにたわらいながら。
慎重にナイフを喉にあてがって。
見当をつけている。

魚を切るように!!
ナイフを肉にさしこんだ。

そのまま――。
耳ら耳まで一気に引き裂いた。

秀子は首筋に激痛がはしった。
秀子は首筋に手をやった。
ぬらっとした感触。
その上にはなにもなかった。
首はなかばまで切られていた。
重みで前にたれさがっていた。
それを意識できたのは一瞬だった。

真っ赤に染まった手をみられなかった。
なぜなら、それを見るための。
目が。
首が――。
肩からたれさがっていた。

肩の上。
そこにはなにもなかった。

切断面からドバッと吹き出した血。
血血血血血血。
床に溜まることもなく。
一か所に吸い込まれていく。
血が流れていく。

秀子にはそれが見えない。

痛い。
痛い。
ひどく、だるい。
寒い。
寒い。
体が震えだした。
なにも、考えられない。
感覚が麻痺していく。
感覚がなくなる。
それでも、痛い。
いたい。
イタイ。
お母さんタスケテ。
ヒデコはワルイコデシタ。
イイコニナリマス。
ダカラタスケテ。
唇はパクパク動いている。
声はでていない。
オカアサンワタシノサイゴノネガイキイテ。
とぎれる。
意識がもうろうとする。
体がひくひくする。
ひくひく痙攣する。
秀子はまるでバスルームの吸込口みたい、とおもった。
たれさがった首。
そして目。
見た。
血を見た。
もう、痛みも恐怖もなにもない。
それが秀子の最後の意識だった。
死んだ。

……血はぽこぽこと音を立てていた。
床の節穴から地下に流れ落ちている。
いや、よくみると節穴なんかあいていない。
そんなことは、分明だ。
なにかが地下にいる。


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首筋にナイフ イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-08 00:16:52 | Weblog
7

我田先生は、苦しむわたしの顔をうっとりと楽しんでいる。
先生はわたしの顔をのぞきこんでいる。
先生がおかしい。
そうにちがいない。
富子がいうようにおかしい。

やっと秀子にもそれがわかった。
今日の先生はすこしおかしい。
わかったときには、もう遅かった。

必死で先生の手から逃げようとした。
でも先生の腕力には秀子はかなわない。
小柄な先生のどこにこんな力があったの?

「秀子さんは悪い子よね。悪い子にはおしおきがいるのよ。先生がいまオシオキしてあげますからね」

先生が悪魔に変身した。
いやはじめから悪魔だったのだ。
先生が大型のタカッターナイフをとりだした。
いままで、どこに隠していたのだろう。
チヤキチヤキ音を立てている。
引き伸ばす。
音をたてて引き伸ばす。
生け贄の女児を威嚇して楽しんでいる。

恐怖の音。
音で秀子をおどしている。
先生は楽しんでいる。
先生でないものに変容している。  
ナイフを逆手に握る。
握ったナイフをジッと見ている。
ナイフの鋭利な刃をジッと見ている。
潤いのない両目が赤く充血している。
目が赤く光っている。 
光っている。  
赤い。 
秀子は立ち上がろうとした。
恐怖に顔が歪んでいる。
恐怖にガクガク震えている。
逃げようとした。     
片手でがっしりと肩を押さえつけられている。
いくらもがいても動けない。 
小柄な先生のどこにこんな力があったの?
身動きすることすらできない。

ああ、わたしは殺される。
殺される。
刻まれるんだ。
喉にナイフ。
これから刻まれるのだ。
鋭利なナイフだ。
鋼がひんやりとした。

その感触は恐怖だ。 


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