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「パパ。オジイチャンを助けに行ってあげて」
翔太がむっくりと起き上がる。
「なにがあったんだ。どうしたんだ」
「オジイチャンが、悪魔と戦っている。すごく恐いヤツ。アノママデハオジイチャンガアブナイ」
遥かな距離をへだてた遠隔の地。
神沼でおきていることを透視する能力も。
翔太に芽生えた。
うれしかった。
泣くほど、うれしかった。
いや、さきほどから、涙をこぼしている。
泣いている。
戦慄をもってよろこびをうけいれた。
翔太は能力者だった。
……遺伝だ。
わたしよりも、先祖の能力をすなおに受け継いでいる。
「ジイチャンガアブナイ」
それだけ言うと、またすやすやと寝てしまった。
まるで、翔太の口をかりて亡き母が、神沼にいる夫の危機を知らせてきたようだ。
こんな超常現象を起こすことのできるのは母だ。
母の並子には超能力がそなわっていた。
といつも思ってきた。
母が孫の翔太にのりうつってくれたのだ。
母が翔太の中にいる。
まちがいない。
父になにか起きているのだ。
それを母が知らせているのだ。
夫の危機を知らせている。
警告を発しているのだ。
「翔太もつれていく」
「やめて。やめてよ。まだ病院から無理につれかえったばかりじゃないの」
美智子は怒りだした。
誠には眠気がまた打ち寄せてきた。
深い眠りの底に連れさろうとしている。
異常なことが起こっている。
明確に認知できた。
そして……眠気はわたしが神沼にいくことをジャマしているのだ。
わたしが父を助けにいくことをジャマしているものがいる。
妻にはわからない。
妻の現実認識と誠のそれが、まったく噛み合わないでいる。
「早稲田にまできて、いがみあわないでよ」
冴子と理佐が口をそろえて父をにらみつける。
女の子はみんな妻の味方だ。
さびしい。
さびしい。
翔太には隔世遺伝でわたしの母の並子の能力が伝わっていたのだ。
どうして、いままでそれに気づいてやれなかったのだ。
いや……目覚めたばかりなのかもしれない。
父のもつ小説を書く才能はどうやらわたしにかろうじて流れている。
ほどほどの文才はあるつもりだ。
だが――なにか得体のしれないものを洞察する能力はない。
受け継げなかった。
父の母、誠からみれば祖母貞子の能力にかんする家族内での言い伝えはかぎりがない。
成尾での尾形一族の家族伝説の中でわたしは育った。
尾形一族から祖母の貞子、母の並子と続いて嫁のきたために。
わが家の武骨な家系に。
能力者を派出する血が流れこんできたのだ。
それを翔太が濃く受け継いでいる。
そうだ、これこそがわが家の血なのだ。
インビジブルなものを視覚化してとらえることができる。
遠隔の地でも一族の危機をシンクロニシテイに察知することができる。
――能力がある。
まだ気づいていない。
未知の力も秘めているはずだ。
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翔太がむっくりと起き上がる。
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翔太は能力者だった。
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わたしよりも、先祖の能力をすなおに受け継いでいる。
「ジイチャンガアブナイ」
それだけ言うと、またすやすやと寝てしまった。
まるで、翔太の口をかりて亡き母が、神沼にいる夫の危機を知らせてきたようだ。
こんな超常現象を起こすことのできるのは母だ。
母の並子には超能力がそなわっていた。
といつも思ってきた。
母が孫の翔太にのりうつってくれたのだ。
母が翔太の中にいる。
まちがいない。
父になにか起きているのだ。
それを母が知らせているのだ。
夫の危機を知らせている。
警告を発しているのだ。
「翔太もつれていく」
「やめて。やめてよ。まだ病院から無理につれかえったばかりじゃないの」
美智子は怒りだした。
誠には眠気がまた打ち寄せてきた。
深い眠りの底に連れさろうとしている。
異常なことが起こっている。
明確に認知できた。
そして……眠気はわたしが神沼にいくことをジャマしているのだ。
わたしが父を助けにいくことをジャマしているものがいる。
妻にはわからない。
妻の現実認識と誠のそれが、まったく噛み合わないでいる。
「早稲田にまできて、いがみあわないでよ」
冴子と理佐が口をそろえて父をにらみつける。
女の子はみんな妻の味方だ。
さびしい。
さびしい。
翔太には隔世遺伝でわたしの母の並子の能力が伝わっていたのだ。
どうして、いままでそれに気づいてやれなかったのだ。
いや……目覚めたばかりなのかもしれない。
父のもつ小説を書く才能はどうやらわたしにかろうじて流れている。
ほどほどの文才はあるつもりだ。
だが――なにか得体のしれないものを洞察する能力はない。
受け継げなかった。
父の母、誠からみれば祖母貞子の能力にかんする家族内での言い伝えはかぎりがない。
成尾での尾形一族の家族伝説の中でわたしは育った。
尾形一族から祖母の貞子、母の並子と続いて嫁のきたために。
わが家の武骨な家系に。
能力者を派出する血が流れこんできたのだ。
それを翔太が濃く受け継いでいる。
そうだ、これこそがわが家の血なのだ。
インビジブルなものを視覚化してとらえることができる。
遠隔の地でも一族の危機をシンクロニシテイに察知することができる。
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まだ気づいていない。
未知の力も秘めているはずだ。
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