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田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

悪魔を憐れむ イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-19 13:45:46 | Weblog
8

「ぼく我田先生のことウランデなんかいないからね。先生は人狼に憑かれていたんだ。のっとられていたんだね。人狼のいいなりに動いていたんだ。先生が先生でなくなっていたんだ。先生もかわいそうな犠牲者なんだ」

あれほど迫害を受けたのに翔太は泣いていた。
我田先生のために泣いていた。
恨みをのこしていない。

たとえ、悪魔にたいしてでも、完全な憎しみをもってはいけない。
慈しみの心で敵を許すのだ。
悪魔は堕天使だ。
かつては、神に一番近い天使だったのだ。
愛の一かけらくらい、まだのこっているはずだ。
その愛に訴えかけてやるのだ。そうすれば……。

「こうやって、ぼくらは戦ってきたんだね。ジイチャン。勝平ジイチャン。悲しいことだね。でもぼくらは戦いつづけなければらないんだ。セツナイね。むかしから、戦いがつづいてきてるんだね。はやくおわりにしたいね」

「そうだ。戦いのない明日のためにおれたちは戦いつづけてきたんだ」

「ありがとう、ジイチャン。いろんなことがわかってきたよ。戦いのない明日のために、いままたぼくらは戦いはじめたんだね」

ボクはこのとき気づいた。
ジイチャンの体からは血が流れていた。
背中に人狼にひっかかれた深い傷があった。
ぼくはパパに教えた。

「心配するな。これくらいの出血では死にたくてもお迎えがくることはない」



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外皮を脱ぎ捨てて イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-19 11:43:53 | Weblog
7

「これでおわりだ。銀の弾だ」
人狼の体が中空にはねあがった。
地面に落ちてきた。
着地したとたんに、副谷の体となって溶けていく。
井波の体はすぐには溶けださなかった。
しぶとく人の体のままで大地でのたうっていた。
しかし……ドロッとした粘液になっていく。

「この体にはあきあきしていた。もうこんな古い外皮は必要ない。はやく脱ぎ捨てたかった。だがおれは滅びない。器はいくらでもある。またすぐ会えるからな。それに……いまごろ東京でなにが起きているか。楽しみだ。翔太、おまえのに入院した病院は井波総合病院といわなかったか……」

その言葉が誠を恐怖のどん底へ落とし込んだ。
誠は携帯を打つ。
妻のいる東京のマンションへ。

「どうしてなんだよ。どうして我田先生までここにいたの? ひとの姿のまま、先生だけ死んでいるの? 最期まで狼の奴隷としてシンジャッタの?」

人狼に魂まで侵されていた。
我田先生が倒れている。

まだこのとき、翔太は知らない。
我田先生が学校に放火してきたことを知らない。
日本最古の木造校舎の神沼北小学校が全焼したことを知らない。
黒川がある。
日光杉並木が聳えている。
森の奥の尾形だ。
ここまでは火事の騒ぎは伝わってこない。
だれもまだ知らない。 
明日に成れば。
焼け跡から白骨が累々と発見されることを。
白骨はかなり古いものもある。
白骨が栃木県警の鑑識に委ねられて公表されるまでは。
まだなにも知らない。

人狼のいいようにあやつられて。
生徒たちを虐待し。
あげくのはてに。
担任クラスの生徒をきりきざんだ女教師。
はったと虚空を睨んだ我田の目にはまだ狂気が宿っていた。
勝平がそっと瞼が閉じるように。
手のひらでなでおろした。

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人狼の餌場 イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-19 04:22:22 | Weblog
6

「勝平。いつかは、キサマとこうして対決できると……。たのしみにしていた」

悪魔的存在。
そのあらわれ。
である人狼がニカット歯をむいた。
井波少尉の顔になっている。

「キサマの肉はうまそうだ」
「どうしておれたちにアダなすんだ」
「人が苦しむのを見るのが好きだ。われわれには栄養源――元気の元になる。おまえたちの肉を食らうのが好きなのだよ。おいしいからな。ただそれだけの理由からだ。おまえたちの苦しみが、肉が、人狼の食料だ。この街はおれたちの餌場なのだ。ただそれだけのことだ」
「人狼、あんたらには理性はないのか」

パパは人狼たちに切りつけた。
低くかまえた剣がきらめいた。
月の光を断ち切るように、鋭く人狼を下から薙いだ。
たしかに人狼は月光の下では活きいきとしている。
人狼の足がドタっと地面に落ちた。

猫が群がった。
人狼の群れが井波を副谷を庇った。

周囲に盾を形成した。

乱戦。

そしていつのまにか、小野崎のおじさんがパパのよこにいた。

「たしかに見たぞ。こんなヤツが――これが学校に棲んでいたのか。この人狼が息子の敵だったのか!! 慧をイジメテいたのか」

悲痛な声をあげた。
ぼくらはみんな円陣をつくった。
回りにはまたまだ敵がいる。
とり囲まれた。

「ミユ、ムック。ボスだけをねらうんだ」

ぼくはパパと力を併せて念波をボスである井波に浴びせる。

もう戦うことが楽しくて、楽しくて。
だってこれって体ごと参加できるゲームだ。
ゲームの世界のぼくはヒローだ。
いままでだってこうして戦えばよかったのだ。
戦いなんだ。
ぼくらは戦うことを学ばなければならなかったのだ。

いちばんたいせつなことをぼくは避けて、逃げていた。

食うか食われるか。
殺すか殺されるか。

この世にはほんとうに悪魔がいるのだ。
悪魔とは戦わなければ、こちらが滅ぼされちゃうんだ。
いつでも、ぼくらには敵がいる。
悪魔がいる。

じぶんのために、次は愛する家族のために戦う。
そして、街のために。
故郷を愛することを忘れるな。 
家族を守ことを誓え。
武装するときがきたのだ。
じぶんたちのことはじぶんで守るのだ。
カツヘイジィジィの口癖だ。  
ジイチャンの教えだ。

これは男がわすれてはならないことなのだ。
ジィジィが人狼のボスに拳銃をうちこむ。


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