田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

人狼VS猫の群れ イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-15 20:49:53 | Weblog
8

めまぐるしく人から狼へと変貌する。
その能力をたのしそうに誇示している。

勝平に迫ってきた。
誠に迫ってきた。
翔太に迫ってきた。

九尾神社の正面階段をじわじわと上ってくる。
三人は撃ちまくった。

「ジイチャン!! 倒しても、倒しても人狼は減らないよ」
「そのようだな。でも確実に倒した人狼は生き返ってはいない」
「それだけ、数が多いということだ、翔太!! ひるむなよ」

誠が翔太を励ます。
翔太はひたむきな、真っ直ぐな目で父親を仰いだ。

「この街がわれ人狼の故郷だということを知らないのか。元犬飼村は、犬を飼っている村ではない。われわれが人狼なのだ。望めば異形のものに変身できる異能集団なのだ」

離れているのに頭にびんびんひびいてくる。
心から心に伝わる声だ。

人狼が青い月にむかって猛々しく吠えた。
狼の群れが鼻面を月にむけて吠えた。
勝平、誠、翔太の三人のいる境内は半月型に取り囲まれていた。

いくら射倒しても、確かに、敵はへらない。
石垣にとりついた。
石のさくを乗り越えようとしている。
階段を駆け上がってくる人狼もいる。

このとき、虎縞の二匹の猫、ミュウとムックはピンと尾をたてて唸りだした。
さきほどから低く唸っていた。
いや、コナラ、白ブナ、カエデの林についたときから唸っていた。

境内の樹木の下草をわけて黒猫がミュウの脇にあらわれた。
大きい。
雄猫だ。
ミュウがうれしそうに体をこすりつけている。
黒猫があらわれたのが合図だった。  
うそだろう。
と、翔太は声をだした。

うそだぁ!!

なにが起きているのだ。
あとからあとから、猫の群れがつづく。   
人狼と相対した。              
境内の石垣の真下だ。
月に吠える人狼の群れ。
人狼に歯をむく猫の集団。
人狼と猫との戦いの開始をつげる遠吠えだ。


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人狼は不滅なのか イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-15 16:18:18 | Weblog
7

光る獣の目。
目。
目。
目。
目。
目目目目目。

ドウモウナ唸り声。
攻め寄せて来る人狼に。
矢をはなった。
翔太は矢をはなった。
ギャンという悲鳴があがった。
青い燐のような目がいくつか消えた。
すかさず射つづける。

どこにこんなに狼がいたのだ。
勝平、誠、翔太の三人は。
九尾神社の境内から群がる人狼を見おろしていた。
ボス狼のよびかけにおうじたのだ。
副谷は仲間を呼び寄せるために。
すぐには勝平を追って来なかったのだ。
教室の地下にのこって血をすすり仲間を呼び寄せていたのだ。

日本狼は絶滅しているはずだ。
外来種なのか?

いやこいつらは悪魔の化身だ。

狼でもない。
ひとの形はしていても人でもない。
外からの侵略なのか?
人狼は不滅なのだろう。
みるまに人の形態に変身する。
いやこの姿のほうがわかりやすい。

なんの変哲もない人形の獣。
人の体をのっとる悪魔。

夜霧のあちこちから凶暴な人狼があらわれた。
人の形態のままのもの。
狼の姿に変身したもの。
猟銃をかまえた。
勝平と誠も猟銃を撃ちだした。

銃声が森の上空にこだました。



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人狼月にほえる イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-15 07:36:34 | Weblog
6

「やっぱり……あのときのコゾウか」

声だけがひびいてきた。  
枯れ草の動きが止まっている。 
静かな宵の静寂が破られようとしている。

「おまえの横にいる。マゴだな。名前はなんという」
「翔太だよ」
「ほう、翔太にもおれの声がきこえるのか。勝平よ、あのときのおまえとそっくりだな。ずっとおまえのことは、気になっていた」
「おれを追いかけてきたのは人狼、おまえだったのか」
「副谷軍曹と呼んでもらいたいな」    

人狼が吠えた。
怒号だ。

「なんでなんだ。どうしてだ。今頃になって動きだすとは……食欲を満すだけではあるまい。なにがねらいだ」
「人狼の世界を拡大するためさ」
「どうして、いまになって」
「わからないのか。終戦の日から、六十年と六か月六日……経過したのだ。その日に完全に人狼として復活したのだ」

666。
やはりこの者は悪魔なのだ。

史上まれにみる残虐な犯罪が増えている。
とくに児童にたいする鬼畜にひとしい殺しが起きている。
ここから5キロとは離れていない日光の今市大沢で。
1年生の女児が刺殺される残虐な事件がおきた。
人狼の放つ凶悪な波動に触発されている。
変質者がその波動に同調しているのだ。
鋭利なナイフを人狼の牙がわりにして児童を襲いだしている。

勝平は呆然と副谷をみる。
こいつらやはり悪魔だ。

「それにしても、人間ってやつは、どうしてそんなに早く歳をとる。わしが、うとうとしている間に、すっかりジジイだな……」
「いうな。だからおれには、息子がいる。孫がいる。こうして永遠にいきつづけるのだ」
「人はこうして……命を長らえていくんだよ。ジンロウのオジサン」
「気安く、呼び掛けるな」
「もういちど訊く。なぜおれたち迫害する」
「わかっているはずだ。人狼の姿を見ることのできるあんたらの能力が邪魔なんだ」
「やはり、ただそれだけのことで」

人狼はあの頃から井波と副谷の体をのっとって生きてきたのだ。
いままでも、むかしから、つぎつぎと人の体をうばってきたのだろう。
勝平に理解できるようにいまは副谷の体で現われている。

だがすべて擬態だ。  
いかなる姿にも変容することができる。

悪魔だ。 
こいつらは悪魔の化身だ。
青白く冴えた月。
銀色に粉を人狼の周辺にまきちらしている。

銀色に輝く星々のなかの女王。
青白き月。 
狼は月に吠えている。
遠吠えに呼応して群れてきた。
 


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