田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

黒い病院 イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-01 17:47:21 | Weblog
5

誠は黒い波が渦巻くなかに踏み込んだ。
尋ねた。
気分はどうだ。
と……きいた。
顔もあげない。
苦しいとこはないのか。
返事をしない。
表情もかえない。   
急に咳をする。
とまらない。

「なんども咳がでるのか?」
「…………」
「ママは……?」
「完全看護だからこなくていいって、いわれていたよ」

顔もあげずにせかせかと応える。
翔太とはなしているうちに、誠のいらいらは、怒りとなっていた。
現代の最先端をいく医療設備をそなえた病院かもしれないが。
人間がいない。
母親まで追い出して。
ただ喉をはらした。
扁桃腺炎の子をストレスによる発熱だなんて診断して。
薬も与えず、箱庭療法をほどこしている。
妻からだいたいの病院のようすは聞いていた。

医者の、ご主人に相談する暇なんかありませんよ。
いますぐ入院させないと手遅れですよ。
という言葉にしても……異常といえば異常だ。
入院すると……アンケート用紙をもってきて。
お子さんに直接記入させてください。
と看護婦がいいおいていったという。
用紙は回収されもうなかった。

どんなことが記入欄にあったか。
翔太に問い質してもわからない。
ややしばらくして「宗教のこと調べられたよ」翔太がぼそっと呟いた。

「ぼくんちでは神沼には、仏壇があるから仏教だよね」 

唐突に――。
誠はさきほどの運転手の憎悪にみちた目が。
病院の建物に向けられていたことを悟った。
新興宗教の経営する病院なのかもしれない。
そう思えば、すべて納得できる。
巨大化した宗教法人が出資して。
病院や学校経営にまで事業を拡張している。
と週刊誌で読んだ記憶がある。

 今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。

にほんブログ村 小説ブログ ホラー・怪奇小説へにほんブログ村
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

黒い波動 イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-01 14:32:57 | Weblog
4

誠の姿が見えなかったのか。
ステーションからは、看護婦は出てはこなかった。
前屈み。
同じ姿勢でコンピューターの操作に余念がない。

廊下を進む。
天井で蛍光灯がバチバチ音をたてて点滅する。
それはリアルな現象だ。
まるで誠の不安に連動しているようだ。
邪悪な黒い波動が頬を刺す。
鼻孔に異臭がつまる。
息ができないほどねばつく粘性のいやな臭い。
病室ごとにある。
プラスチックの患者名の書いてあるカードが。
ケースからぬけて。
両側から誠に襲いかかってきた。
ひらひらただようように見えているのに。
誠の体を突き刺すように。
襲いかかってきた。
カード。
頬を刺す害意の波動。
鼻には異臭。
カードの攻撃。
誠は廊下を走りだした。

点滅していた光が、ついに消え。
薄暗くなる。
不意に視界狭窄が起きた。
極端な遠近法で描かれたように。
廊下の幅が前方で鋭角となっている。
行く手を拒まれている。
誠はよろけて思わず病室のドアをおした。

翔太が顔をあげた。
ベッドにすわってジオラマをつくっていた。
指に緑のプラスチックの小片が付着していた。
葉っぱらしい。

「好きなこと、なんでもやっていいんだよ」

興奮している時の癖だ。
甲高い声で誠にいう。
と――。
翔太は作業にもどる。
セメダインで、プラスチック製の模造樹木を固定していた。
盛り上がった丘に樹木を植え込んでいる。
森を形成しようと熱中している。
額に手を置く。
熱はない。    
声はかさかさしている。
接着剤のもつ刺激的な匂いが。
ベッドを中心とし、波紋となって広がっていた。


 今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
 お帰りに下のバナーを押してくださると…活力になります。
 皆さんの応援でがんばっています。

にほんブログ村 小説ブログ ホラー・怪奇小説へにほんブログ村
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする