田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

口をふさがれた イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-07 23:12:45 | Weblog
6

ちがう、先生の声がいつもの声とちがう。
暗い。
低く暗い。
しわがれて男の声のように太い。

ちがう。
これは先生の声じゃない。
わたしのことなんかすこしも恐がっていない。
後ろを振り向こうとしたが動けなかった。

眩暈がした。
暗いのは先生の声だけではない。 
暗く陰湿な声に保健室まで光を失っていく。
それなのに薄闇が鏡になった。
うしろにいる先生の表情まで鮮明に映している。

おかしい。   
闇の中で背後の先生が見えるなんてどう考えてもおかしいのだ。
秀子はじぶんが、意識の目でみているのだとわからない。
上半身が震えだした。

「そうよ。そうよ。もっと恐がって」

ちがう。

わたしのよく知っている先生とちがう。

いままでの先生とはちがうものになっている。

いままでの先生とはまったくちがう。

「そうよ。そうなのよ。先生が怖い存在だってことが……ようやくわかってもらえたようね。うれしいわ。うれしいわ」
けっして聞いてはいけない。
これは悪魔の声だ。
秀子は恐怖のために意識が混乱した。
じぶんのおかれている状況がようやくわかった。
口をふさがれた。  
息がつまる。 
苦しい。
息ができない。
耳がきんきんする。
必死で抵抗した。
立ち上がるんだ。
なにかヤバイ感じ。  

動けない。 
苦しい。    
顔が恐怖と窒息感でゆがんでいる。
苦しい。
 

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悪魔の声 イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-07 18:31:07 | Weblog
5

「ババァ。うざいのよ……」
だれかが、小声で言う。
我田先生がねちねち小言をいっている。

6年1組のクラスだ。
かつて翔太がいたクラスだ。
イジメにあったクラスだ。

「あらぁ。秀子さん。わたしがいつからババァになったの。まだ結婚もしていないのよ」
秀子のこえだと分かってしまった。

「その顔で男ひっかける気かよ」
「あらあら、うれしいこといってくれるのね。あんたらには、わたしの美しさがわからないのよ。ガキが。あんたらまだ小学生ですよね」
「きまってるじゃん。いちおう我田先生の生徒ですからね」
「わかってるのね。先生に逆らうとどういうことになるのかじっくりと教えてあげるから保健室にいきなさい」
「いいのかよ、いきがって……」
秀子はぷりぷりしながら席を立った。

「いかないほうがいいんじゃない。今日の我田先生いつもとちがうみたい」
隣の席から富子が注意する。
「へいき、へいき。いざとなったらたたきのめしてやる」
1、65メエトルもある小学生は小柄な担任の女教師について保健室にはいった。
先生用の肘掛けのあるフエイクの革張りに椅子にふんぞりかえった。
うしろから先生に頭をかかえこまれた。
動けない。
いがいと力強い腕だ。
あばれたが動けない。
「なにするんだよ」
秀子は背中の我田にドスの効いた声をかける。
とても小学生とはおもえない恫喝に満ちた声。
いつもなら、秀子のこの一喝でおとなしくなる。
先生だって例外ではない。 
我田の動きが一瞬止まった。    
それみろ、いくらいばっていてもセンコウはセンコウダ。
いくら暴力教師といわれていても強いものには逆らえない。
なぐりあいになればぜったいに負けないからね。
我田が秀子の脅しの声に怯んだ。
動きが止まった? 
ちがう。
今日はなにかちがう。
どこか、へんなのだ。
怯えて挙措がとまったわけではなさそうだ。
秀子を叩こうとした手をひっこめたのは。
そんなしおらしい心情からではなかった。   
我田は楽しんでいた。
先生はこれから起きることを思い。
これからの動作が。
いかにご主人さまによろこばれるか。
知っていたので……楽しんでいたのだ。
「さあ……。どうしょうかしらね」
秀子はギクットした。



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