田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

勝平ジイちゃんが危ないよ イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-03 09:26:15 | Weblog
第六章 翔太の覚醒。

 悪しき者の角はことごとく切り離されるが
 正しい者の角はあげられるであろう。             詩編 七十五 十

 1

美智子が誠を揺り起こす。
すこし邪険に。
……やはり退院させたのはまちがいだったのだ。
また翔太は熱をだしたにちがいない。
なにか、わけのわからないことをいっている。
うなされるいる。 
まるで、目覚めているときとおなじ口調で……。

カツヘイジイチャンが危ない。
お父さん、起きてよ。ジイチャンが戦っているよ。
とうわ言のようにいいつづける。

「誠ちゃん起きて。なんか翔太がおかしいのよ。誠ちゃん、起きて」

「お父さん、起きてよ。ジイチャンがあぶない」

翔太がベッドに起き上がった。
まだ目はとじている。   
でもねぼけているようすはない。
すごくはっきりとことばを口にしている。
妻と翔太に呼びかけられている。

きこえていた。
誠にはわかっていた。
誠は目覚めかけていた。
浅い眠りの淵に漂っていた。
病院の、医者の態度を理解しかねて眠れなかった。
やはりカルト宗教の支配下にある病院なのだろうか。
残念ながら、それをたしかめるための友人はいなかった。
医者の友だちは何人かいる。
だが、彼らは友情よりも同業者とのつきあいを優先する。
フランクになんでも話なしてくれるだろうか。
わからない。
だいいち、平和ボケした日本。
異様なものにたいする警戒心が。
欠如している。
特に学校や児童がらみの事件では。
なにか……これは……おかしい。
なにか起きそうだ、と認識できない。   
凶悪な犯罪が起こる。
あとから防犯をさわぎだす。
被害者がでてしまってから、残ったものへカウンセラーがかけつける。
心のケアなどを叫ぶ。

ひさしぶりで家族が全員そろった。
大学にかよっている冴子と理佐。
二人の娘たち。
翔太、妻の美智子。
いつのまにか、うつらうつらしていた。
だから翔太の声は、はじめから耳にひびいていた。

「マコチャン。起きてよ。
もうだいじなときには、いつものんびりとねているんだから」

翔太はまたすやすやと眠っていた。
横になってしまった。

「翔太。なにがあったんだ? ジイチャンになにが起きているんだ」
 

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