田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

モズの生贄のように…… イジメ教師は悪魔の顔 麻屋与志夫

2011-10-02 16:54:11 | Weblog
8

あなた。 
あなた。
どうしたのよ。 
起きてきてよ……。
翔太をなんとしても私立の中学にいれたいの。
みんなで、がんばらなきゃね。
機嫌なおして。
さあ、食事にしましよう。
……腹をたてて、面当てで寝た振りなんかしないで。
まだがんばってもらわなきゃならないのよ……。

(そういうのを……どうなるものでもないことを……グチグチいうのは……やめたほうがいいな。美智子さん。呪われているんだ。わたしたちのまわりには邪悪なものがいる……そのモノたちと闘うだけでもつかれるのだ)

誠は妻にやさしく語りかけていた。
夢うつつのなかで妻にはなしつづける。

(もう疲れた。なるようにしかならない。美智子さん……そういうおまえさんみたいのを、ゴマメの歯ぎしりっていうんだ)

鼾のかげで、夫は妻に語りかけていた。

アイツが動きだした。
アイツに狙われたものは、いつまでもつきまとわれるのだ。
わたしは……とうの昔に悪魔につかまっている。
モズの生贄のような身分なのかもしれない。
ときどきおもいだして、悪魔がわたしをツイバミにくる。
高い枝に串刺しにされたカエルのような――哀れな存在。
それが、わたしなのかもしれない。
翔太を守らなければ。
勉強なんかどうなってもいい。
進学なんか気にするな。

翔太をアイツラにはわたさない。
守りぬかなければ。
カッターナイフが誠の夢のなかできらめいている。
頸動脈を切り裂かれたらこんな感じなのだろうか。
誠の首筋がはげしく痛む。
血がふきだしている。
だれなんだ。 
だれがわたしに血の償いをさせようとしているのだ。
だれが翔太おも、生け贄として欲しがっているのだ。
だれがわたしに殺意をもちつづけ……。
それをいまになって翔太で実行しようとしたのだ。

わが家えの殺意が復古しようとしている。
世の中、腕力がものいう。
武力を行使する。
暴力がはびころうとしている。

逃さないぞ。それは〈闇〉の中で嘯いている。
逃さないぞ。それは〈闇〉そのものとなって、追ってくる。
おまえら家族に〈刺客〉をむけたからな。
 
誠は、じぶんの悲鳴で悪夢から覚めた。
金縛りにあってうごけない。
歯ぎしりだけが空しくひびいている。



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悪魔の標的 イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-02 09:58:14 | Weblog
7

マンションに戻ってからが修羅場だった。

「なんてことをしたのよ」

美智子が誠の暴挙に声を荒げた。
誠の無謀さを非難した。
怒りが全身をおおっている。
炎をあげて――燃え立つような怒り。
凄まじい怒気が部屋の中で荒れ狂っている。

「ひどいわ。ひどいわ」

翔太を無断で病院から連れ出したことを怒っている。
直ぐにでも、翔太を病院に連れていくという。

受験生の健康管理がいかに大切か。
もし私立中学の入試がうまくいかなかったら……。
と泣きだしてしまう。
静かに見守ることができない。
美智子は取り乱してしまった。

「風邪だ」

扁桃腺がはれているだけだ。
薬ものまず。
ただ寝ているだけなら。
自宅でぶらぶらしていても。
同じことだ。
誠がついぞみせたことのない剣幕に美智子は沈黙した。

こんどは、いくら誠が話しかけても表情ひとつ変えず、口もきかない。

翔太にはベンザのカプレットを念のため飲ませた。
夫婦の争いの元。
翔太は。
ほどなく、けろっとして、友達のところに遊びにいってしまった。
 
誠は畳みの部屋で横になる。
まどろむ。
頭がづきんと痛んだ。
脳に激痛が走る。
汗が噴き出る。
狙われている。
狙われている。
姿の見えない悪魔が。
ぼくら家族を狙っている。
エレベーターの中で感じたよりも激しい眩暈がする。
くくくっと……。
暗黒の世界に。
ひきこまれるような感覚。    
地獄の底。
闇の底に。
ひきこまれる。
ノミコマレルような恐怖に全身ふるえる。

眠る誠をもうひとりの誠が上から見下ろしている。
部屋の様子がいやに鮮明だ。
誠は鼾をかいている。  
障子も、窓ガラスも鼾に共鳴するかのように振動している。




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ノミコマレル恐怖 イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-02 04:18:53 | Weblog
6

相部屋。
広すぎる病室。
節電しているのか。
ほかに入院患者がいないからか。
薄暗い。
陰気な病室の底で。
ベッドでもぞもぞと動いている翔太に。
ひとりぼっちでいるのに。
さびしかったともいわない。
健気な翔太に声をかける。

「帰ろう」
「……………」 
「早稲田のマンションにもどろう」

誠は翔太を急がせた。
その語調の激しさに翔太は怯えた。
なにが起きているのか認知できないでいる。
現実にこれから起ころうとしている現象を。
認識できる年ではない。

もっとも、誠にしてもじぶんの予感には――。
かすかな疑問はある。
わずかなためらいがある。
なにが起ころうとしているのか。
じっさいのところは……。
わからない。

(こちらの勝手にさせてもらう)

翔太を、データーを採集するためだけに。
入院させておくような処置に。
誠は不安を感じた。
宗教への勧誘もあるはずだ。
宗教団体の経営とは確認したわけではない。
とり越し苦労かもしれない。
妄想かもしれない。
じぶんの勘をたよるしかない。
じぶんの直感を信じるだ。
このまま放置しておけば。
勉はベットや。
白すぎるシーッや。
非人間的な医療機関の。
一部となる。
ノミコマレル。
病院に同化させられてしまう。
翔太を守るのだ。

この世には。
分からないことがおおすぎる。

動機をうまく隠して。
ちかよってくるものの存在が――。
増えつづけている。

この世では――。
暴力が膨脹しすぎる。

個の存在を消去する暴力がおおすぎる。

翔太は怯えながらも、父親のいうことに従った。



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