音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■■ ヴィオラ・ダ・ガンバ四重奏「みじか夜」の初演 ■■

2007-12-24 17:01:35 | ★旧・曲が初演されるまで
2006/11/29(水)

★11月26日の夜、駒込・上富士前の「カソリック本郷教会」で、私の新曲「みじか夜」が、初演されました。

「みじか夜」(Transient Night in Summer)は、4人のヴィオラ・ダ・ガンバ奏者のための曲です。

4人は、弦楽四重奏のバイオリンにあたる「トレブル」ガンバ、

ヴィオラに相当する「テノール」ガンバ(2人)、チェロに当たる「バス」ガンバの4人の奏者です。

「ガンバ」は羊腸弦を使うため、とても柔らかい典雅な響きがします。

その響きを残しつつ、弦楽四重奏とは異なる新しい表現を探りました。

特に、ガンバ4人による「ピッチカート」は、沖縄の音階とあいまって、

11月の肌寒い教会堂を、南の島の暖かい微風が包み込むような感じになりました。

当日のコンサートの最初の曲マイネリオ(1535~1582)というイタリアの作曲家の

「スキアラズーラ マラズーラ」という面白い呪文のような曲は、調弦をしているうちに、

曲が始まるような錯覚をおこさせる曲です。

「スキアラズーラ」は「隙あらば」の洒落だったのでしょうか???


★ガンバという楽器は、調弦の音を聞いているだけで、その柔らかで、たおやかな音色に陶酔しそうになります。

コンサートには、おヒゲの殿下の三笠宮寛仁さまも、来場されていました。

ご退院されてまだ日も浅いと存じますが、このガンバのやさしい響きで、きっと心を癒されたことでしょう。


★私は、チェンバロやガンバの曲をいくつか書いていますが、

バロック時代にすでに完成している「古」楽器のために作曲したり、聴いたりしますと、

「近代」楽器のときといつも違った印象を受けます。

その印象とは、誤解を恐れずに表現いたしますと、

「人を威嚇しない」ような楽器、ということです。

産業革命前のヨーロッパ、現代のように人間が歯車ではなく、

人と人が濃密に顔をつき合せ、会場もせいぜい教会程度の収容人数、

奏者の息遣いまで聞こえるような空間で演奏する楽器だからなのでしょうか。



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