音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■ 一生忘れない Inventionの≪ 暗譜方法 ≫■

2015-08-29 20:20:01 | ■私のアナリーゼ講座■

■ 一生忘れない Inventionの≪ 暗譜方法 ≫■
 KAWAI金沢インヴェンション・アナリーゼ講座
   「Invention & Sinfonia 第12番 A-Dur イ長調」

                 2015.8.29  中村洋子

 

 


★8月26日のKAWAI金沢「インヴェンション・アナリーゼ講座」では、

第二部として、 Mozart モーツァルトの

ピアノソナタ 「K.331 A-Dur 1楽章」の公開レッスンを開催しました。


★レッスンを受講された方は、わざわざ東京からお出でになりました。

音楽への愛情がにじみ出るような、いい演奏をなさいました。

レッスンをお聴きになった方からは、

「暖かいピアノの音色がまだ耳に残っています」という

嬉しい感想も、いただきました。


★このK.331第1楽章のテーマは、一見単純に見えますが、

実は、バッハの作品と同様、 counterpoint 対位法 が張り巡らされた、

かなり難しい曲であると、いえます。


演奏の良し悪しは、その対位法を分析し貫き、解きほぐし、

どう理解するかにかかっています。

対位法の構造が頭に入れば、演奏が自ずとついてくるともいえます。

それが西洋クラシック音楽です。

ムード音楽ではないのです。

 

 


★昨年秋に発見された、このK.331 の自筆譜には、

このテーマが書かれた部分は、含まれていません。


冒頭1小節目の右手「cis² d² cis²」の三つの音について、

スラーが1番目 cis² から2番目の d² まで掛っているのか、

あるいは、1番目 cis² から3番目の cis² まで掛っているのか、

明確になっていません。


★モーツァルト存命中に出版された初版の第1刷は、

「1番目 cis² から2番目の d² まで掛っているようにみえますが、

not clearly placed (はっきりとは記されていない)」と、

Henle の editor Wolf-Dieter Seiffert がコメントしています。

いずれにせよ、私はまだ初版を見たことがありません。

第4刷目では、「1番目 cis² から3番目の cis² まで」と

変わっているそうです。


★それについての、Edwin Fischer エドウィン・フィッシャー

(1886-1960)の、秀逸な解釈を交えながら、

どのように弾きましたらモーツァルトの意図に近づくか、

お話いたしました。

 

★結局、初版譜から決定できないのですから、

自分で考え抜くしかありません。

私は、私の結論を出しましたので、

公開レッスンでは、それをお話いたしました。

 


★一方的にお話しますアナリーゼ講座と異なり、

奏者の演奏に、具体的なアドヴァイスを加えながらの解説となりますので、

より理解しやすいかもしれません。

機会がございましたら、 また試みたいと思います。

 

 


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中村洋子 第12回 KAWAI金沢「Bach インヴェンション講座」(全15回)

「Invention & Sinfonia 第12番 A-Dur イ長調」
             ~ 一生忘れない Inventionの≪ 暗譜方法 ≫ ~

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■日  時 : 2015年 9月16日(水) 午前 10時 ~ 12時 30分
■会  場 : カワイ金沢ショップ 金沢市南町5-9 
           ( 尾山神社前 南町バス停より徒歩3分 )
■予  約 : Tel.076-262-8236 金沢ショップ


★深い憂愁に閉じ込められたような 「11番 ト短調 g-Moll 」。
それに続く「12番 Invention A-Dur 」 は真夏の太陽のように、
明るく力の漲った曲です。
Sinfonia 12番の 9~12小節目、20~23小節目バスは、
あたかも次の時代の様式を先取りしたような音型です。

★しかし、その音型の源泉はイタリアのAlessandro Marcello
アレッサンドロ・マルチェッロ (1669~1747) や、Antonio Vivaldi
アントニオ・ヴィヴァルディ(1678~1741)の協奏曲まで、辿ることができます。
それについて、具体的にご説明し、どのような楽器をイメージし、
どんな音色で演奏すべきか、お話いたします。

★類似した音型の曲は、Telemannテーレマン(1681~1767)の
「 Leichte Fugen mit kleinen Stucken 簡単なフーガと小品 」にも見られます。
これを Invention と併用しますと、Bachをより深く理解できます。
比較することで、Bach の素晴らしさが一層良く、分かるのです。
レッスンに直ぐ、応用できます。

 

 

★この12番を基に、もう一度「暗譜の方法」をおさらいいたします。
漫然と、反復練習して≪曖昧に指先で覚える≫のではなく
≪心と頭に、インヴェンションをゆるぎなく定着させる暗譜≫が必要です。
そのような≪暗譜≫ができますと、
「本物」の音楽と「そうではない音楽」とを判断する能力が、
自然に身に付きます。

私が考案し、実践してきました方法を、具体的に詳しくお教えいたします。
その際に重要なことは、≪Fingering≫の役割です。
「頭に焼き付ける」 ため、≪ Fingering ≫ にどのような機能をもたせるか、
≪ Fingering ≫ をどのように活用するかということです。

★Bachの最高の演奏家であったAlbert Schweitzer
アルベルト・シュヴァイツァー(1875 - 1965)は、著書で次のように書いています。≪平均的な音楽家が、もし、本物の芸術と偽物を、厳しく、見分ける能力をもっているとすると、それはまさに Bach の Invention のお陰であるといえる。
Invention を練習したことのある子供は、それがたとえ、ピアノ習得のための機械的な練習だったとしても、多声部の作曲法を、既に身につけたといえる。
それは生涯、消えない≫

インヴェンションを、生涯にわたって忘れないためにも、「本当の暗譜」が必要なのです。

 

 

 

 私の著書です、「一生忘れない暗譜の方法」を具体的に

詳しく説明しています。

また、バッハ、ショパン、ラフマニノフなど大作曲家を一層、

深く、理解できるようになると思います。

http://blog.goo.ne.jp/nybach-yoko/d/20160203

 

 


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             All Rights Reserved
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