音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■チャイコフスキーの「四季」とウラジーミル・トロップのCD(続)■

2009-05-11 22:58:13 | ■ 感動のCD、論文、追憶等■
■チャイコフスキーの「四季」とウラジーミル・トロップのCD(続)■
                       09.5.11  中村洋子


★5月21日の「第10回 バッハ・インヴェンション講座 」では、

バッハの「フランス組曲」と「インヴェンション」との

関係についても、お話したいと思っています。

両曲は、大変、密接な関係にあり、

「舞曲」という表題が、ついていなくても、

ヨーロッパの、クラシック音楽は、

舞曲的要素が、含まれているかどうか、

注意深く分析して、演奏に生かすべきだと思います。


★チャイコフスキー「四季」も、「12月」は

「 Tempo di Valse 」 (ワルツのテンポ)と、

記載されていますが、残りの月も、

舞曲あるいは、彼のバレー音楽との類似を、

見て取ることが、できます。


★トロップ教授の、チャイコフスキー「四季」についての、

解説の、続きです。


★「3月~雲雀の歌」 冬が終わり、あらゆる生き物が息づき始める。

荒々しさではなく、柔らかく、繊細で、優雅な曲。

13小節目の、2拍目メロディーは、雲雀の鳴き声を模している。


★「4月~松雪草」 気温が上がり、大地が緩み、雪が溶け、

天気も、変わりやすくなる。

はかなくも、もろい喜びと、悲しみの混ざり合っているような曲。


★「5月~白夜」 この曲は、

エピグラフ「なんと、すべてが心地よい夜だろう。

この北の故国に感謝する。氷と雪の王国から、

この新鮮で、清々しい5月が、やってきた」 と、

密接に、かかわり合っている。

全曲に、優しさと平穏さが満ちている。


★「6月~舟歌」 夏の気配が、にじみ出ている。

夜の音楽。

32小節目は、川面に寄せる、波の動きを模しています。


★「7月~草刈人の歌」 合唱曲的な要素が入っており、

畑で働く農民が、歌っている。

最後の2小節は、刈り取りを終えた畑、

何も残っていないが、熱い空気だけが、残る。

そんな雰囲気が、漂っている。


★「8月~刈り入れ」 夏の最後。

人々は、ずっしりと実ったライ麦を、

根元から、手際よく、刈り取っていく。


★「9月~狩」 ライ麦の収穫が終わると、

さあ、狩のシーズンだ。

“ いまだ、いまだ、さあ行くぞ ” と、角笛が鳴り響く。


★「10月~秋の歌」 ロシアの10月は、長く厳しい真冬を前に、

先が見えないような “ 悲劇的な ” 月である。

喪失。

チャイコフスキー自身も、10月に亡くなった。

これは、ニ短調で作曲されているが、

ニ短調という調は、悲しみを増幅させる。

ベートーヴェンのソナタも、同様である。


★「11月~トロイカ」 トロイカは、

かつての、ロシアの3頭立て馬車のこと。

喪失の悲しみは、次第に元気を回復していく。

(以下は私の推測です)

大変な、お母さんっ子だったチャイコフスキーは、

子供時代、全寮制の寄宿舎で、

生活していたことが、ありました。

お母さんが、寄宿舎を訪問後、

トロイカに乗って、また帰っていきます。

寂しさから、そのトロイカの後を、涙ぐみながら、

走って、追いかけたのかもしれません。



★「12月~クリスマス」

(トロップ教授のお話は、年の初めのほうに力が入り、

後半は短いコメントのみで、12月はありませんでした)

エピグラム「クリスマスの夕べに、娘たちは、占いをした。

脱いだスリッパを、門の向こうに放り投げた」

(ジューコスフキーの詩)

以下は、私の分析です。

日本でも、雨占いで、下駄を空に向けて、放り投げましたが、

娘たちがスリッパに託したのは、自分の恋占いでしょうか。

この曲は、ワルツの形式です。

母に早死にされたチャイコフスキーが、

母存命中の味わった、それはそれは暖かい、

家庭的なクリスマスに、思いを馳せ、

偲んでいるようです。


               (写真は、ムラサキカタバミの花)
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