音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■■ヴォルフガング・ベッチャー先生との録音 その3 素顔のベッチャー先生■■

2007-12-24 17:07:49 | ★旧・曲が初演されるまで
2007/5/16(水)

★マエストロ(巨匠)・ベッチャーのチェロを離れた微笑ましいエピソードを、ご紹介します。

5月4日は、午前中に大阪で最後の練習をした後、ホールのある山梨に移動しました。

名古屋から中央西線で、塩尻に向かいました。

スーパーヴュー特急の席は、先頭車両の最前列でした。

運転席と運転士を目の当たりに見ることができます。

マエストロは、実は、チェリストでなければ、電車の運転士になりたかったそうです。

直立して、子供のように、額をガラスにくっつけ、

チェロを弾く大きな手は、ヤモリの吸盤のようにピッタリと貼り付いています。

運転士が信号確認で指差しをするのを見て、それを真似して無邪気に喜んでいらっしゃいました。

ガラスには、5本の指の跡がくっきりと残っていました。

先生が、大好きな運転士さんでなく、チェリストになっていただき、私たちは、本当に幸せです。


★この列車からは、日本の美しい田園風景が見えました。

特に、田植え直後のキラキラと光る水田や、小糠雨に煙る田園風景、

霧に霞む山並みを見ることができました。

今回、録音いたしました「無伴奏チェロ組曲」のなかの、「田植え歌」や「五月雨」の風景です。

先生は、「これを見ることができ、とても、よかった。

曲のイメージがつかめました」とお喜びでした。


★3日目に「マエストロと呼ばないで、ヴォルフガングと呼んでください」とおっしゃいました。

「ヴォルフガングは、モーツァルトと同じ名前ですね」と私。

「ゲーテもヴォルフガングだよ」と、ご満悦な表情。

つい、その後も「マエストロ!」と言ってしまいますと、

「イエス、マエストリエ~ンヌ!」とふざける先生。


★乗り換えの塩尻駅で、ホームにワインの樽が展示してありました。

「僕の名前の“ベッチャー”は、この“樽”という意味ですよ」と先生はニコニコ。

「映画監督の“ファズベンダー”も、同じく樽という意味です」と解説してくださいました。


★このように、新緑の滴る美しい季節を旅しながら、録音ホールに辿り着きました。

▼▲▽△▼▲▽△無断での転載、引用は固くお断りいたします▽△▼▲▽△▼▲

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