音楽の大福帳

Yoko Nakamura, 作曲家・中村洋子から、音楽を愛する皆さまへ

■■ シューベルトからシューマン、そしてブラームスへ ■■

2007-12-24 15:59:08 | ★旧・私のアナリーゼ講座
2006/12/14(木)

★月に2回、カワイ表参道で、アナリーゼ講座を開いています。

昨日は、シューベルト(1797~1828)の「アルペジョーネ・ソナタ」D821が、

いかに、シューマン(1810~1856)を通して、ブラームスに影響を与えているか、をお話ししました。

このソナタは、シューベルトが27歳の1824年に、作曲されたといわれます。

初演は作曲の年ですが、出版は、彼の死後である1871年、なんと約50年後です。

シューマンの没後15年後でもあります。


★しかし、シューマンは著書(「音楽と音楽家」:岩波文庫、吉田秀和訳)で

「僕は、シューベルトの様式や、彼のピアノの取り扱い方を熟知している」と述べています。

これは、一体どういうことなのでしょうか。

それは、シューマンが、シューベルトの兄(当時、存命中で1859年に没)の家に行き、

シューベルトの未出版楽譜を見せてもらっていた、という事実から、推測できます。

シューベルトは存命中、歌曲以外は評価されず、その他のたくさんの交響曲、器楽曲などは、

「難し過ぎる、誇張がひどい」などと評判が悪く、演奏されることは稀でした。


★そうしたなかで、《シューベルトを崇拝する》シューマンという若い作曲家が、兄の家を訪問しました。

当然、兄は、この上なく、嬉しかったことでしょう。

そこで、シューマンは、山積みになっていたシューベルトの楽譜を、

貪るように読み、勉強し、血肉化していったのです。

まさに「お宝の在りかは、天才だけが知っている」です。

当然、「アルッペジーネ・ソナタ」も知っていたことでしょう。


★「アルぺージョネ・ソナタ」には、シューマンの最も好んだ「和声進行」や

ブラームスが多用した「非和声音」が、重要なところに含まれています。

「ああ、シューマンの和声だ」、「ブラームスらしい音だ」という響きを、

実は、シューベルトのこの曲で聴くことができます。


★ブラームスらしい音(ブラームス・トーン)とは、「逸音を伴う3度進行」、

「巧みに隠された導音」、「異名同音を使った転調」が主な要素です。

具体的には、ブラームスのOp118のピアノ小品集に典型的な例があります。


★1月28日の「ブラームス・アナリーゼ講座」で詳しくお話する予定です。


■中村注 《彼のピアノの取り扱い方を熟知している》の『取り扱い方』は、

「ピアノ作品の作曲手法」が妥当な訳ではないでしょうか?



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