■10月31日、オンラインアナリーゼ講座・ベートーヴェン「悲愴」第2楽章■
~2楽章の強固な構成と和声、対位法、さらに作曲家は
どんな演奏を望んでいたか~
2020.9.15 中村洋子
★山上憶良の「秋野の花を詠める」の一首
≪秋の野に咲きたる花を指(および)折り
かき数(かぞ)ふれば七草の花≫
萩・尾花・葛の花・撫子・女郎花(おみなえし)・藤袴
・朝顔の七草です。
朝顔は現代の桔梗とも昼顔とも言われていますが、
我が家の実生の朝顔は、8月下旬になって花を咲かせ始め、
いまは、毎日たくさんの赤い花を咲かせています。
葛の花の紫もきれいです。
★コロナ禍により延期していました「アナリーゼ講座」を、
再開いたします。
https://www.academia-music.com/user_data/analyzation_lecture
★今回はBeethoven ベートーヴェン(1770-1827)のピアノソナタ
Op.13 c-Moll 「悲愴」の第2楽章を、取り上げます。
「第2楽章」のみ、としました理由は、全3楽章を休憩時間を含めた
2時間30分オンライン講座で疾走してお話いたしますより、じっくり
腰を据えて第2楽章のみを学び、その第2楽章の光が第1、3楽章を
皓皓と照らすことを期待しているからです。
★峻厳な第1楽章 c-Moll(ハ短調)から一転して、第2楽章は
深い安らぎに満ちたAs-Dur(変イ長調)で始まります。
第2楽章の形式は、「A-B-A´」の三部形式です。
曲の冒頭「A」の部分は、このように始まります。
★激しい感情の渦巻く中間部(Bの部分)は、
as-Moll(変イ短調)から
E-Dur(ホ長調)
という第1楽章の主調 c-Moll から掛け離れた遠隔調に到達します。
この調性や和声についても、分かり易くご説明したいと思います。
★そして、再び As-Dur(変イ長調)の穏やかな第3部(A´)と
なりますが、これは第1部(A)の単なる再現ではありません。
それを「Fuzeau フュゾー」社の初版ファクシミリから、
じっくり学びます。
フュゾー社は主に、大作曲家の初版譜ファクシミリを出版している
フランスの出版社です。
★「悲愴ソナタ」の自筆譜は、行方不明になっています。
初版譜は正確には、1799年ホフマイスター社から出版されました。
そのホフマイスター社と同じ銅板プレートを用いて、エ―ダー社から
1800年に出版されたとみられるのが、私たちがいま、ファクシミリで
手にすることができる、この楽譜です。
★私たちは何故、自筆譜や初版譜から学ばなければいけない
のでしょうか?
見やすくて、きれいに体裁が整えられた現代の「実用譜」だけでは、
どうしていけないのか?
私の答えは「No!」です。大作曲家の作品に近づく最短距離は、
自筆譜を学ぶことだからです。
人生は有限ですので、回り道をする時間はありません。
★Beethoven 存命中に出版されたこの初版譜は、失われてしまった
自筆譜の特徴を、多く残していると思われます。
皆さまには是非、このファクシミリによって30歳のBeethoven が
手に取った本物の初版譜を目の当たりにし、Beethoven の創造の
源泉を辿って頂きたいと思います。
★この講座では、この初版譜から汲み取ることのできる第2楽章の
強固な構成、和声、対位法、さらにBeethoven がどのような演奏を
望んで作曲したかを、詳しくお話いたします。
★「悲愴」第2楽章の和声について、少しお話いたします。
和声の規則では、連続5度(平行5度)は、《禁則》です。
2声部が完全5度で、連続して進行しますと、何とも耳障りで、
調和しないのです。
《連続5度の禁則》を避けるための「正しい進行」の一例です。
★Bachは、この連続5度をあえて、重要な場所で使い、
和声の響き、調和を打ち破り、良い意味での「和声的衝撃」を
与えている事を、当ブログや講座で時々お話しております。
この「悲愴」第2楽章でも、同じ効果を狙った連続5度があります。
この連続5度により、Beethoven が狙った効果は
何であったのでしょうか?
10月31日の「アナリーゼ講座」で詳しく、解説いたします。
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