3月30日といえば…
「フランシーヌの場合」という歌を思い出す。
フランシーヌの場合は
あまりにもおばかさん
フランシーヌの場合は
あまりにもさびしい
三月三十日の日曜日
パリの朝に燃えたいのちひとつ
フランシーヌ~
1969年(昭和44年)の3月30日。
パリで1人の若い女性が亡くなった。
シンナーをかぶって焼身自殺したのだった。
自殺した場所が、ベトナム戦争をめぐって開催中の
「拡大パリ会談」会場近くの路上だったことと、
ビアフラ飢饉で死んでゆく子供たちの写真を
身につけていたことから、抗議の自殺と思われた。
これが、ある新聞にベタ記事として載った。
そんな、ごく小さな記事に目にとめた作曲家の郷五郎と、
作詞家のいまいずみ・あきらが、「フランシーヌの場合」
という曲を作ったのである。歌手は新谷のり子。
事件からわずか3ヶ月後(同年6月15日)に発売され、
その後、80万枚という大ヒットとなった…。
…ということは、すべて、あとから知ったことだった。
僕はこの年、20歳で、この曲が発売された6月に、
自転車での北海道往復旅行へ出発した。
もちろん、フランシーヌの事件のことは知らなかった。
そして、その約2ヵ月後、旅行も終盤となった8月の中旬、
僕は東京で、旅行中知り合った人の寮で数日間滞在していた。
ある夜、新宿の街の中を一人でブラブラしていた僕は、
ガイドブックを見ながら、歌声喫茶に行くことにした。
「灯」という店に入って、2階席に座り、飲物と軽食を注文した。
(驚いたことに、ネットで見ると今もその『灯』はありました)
http://www.tomoshibi.co.jp/sinjyuku/
中央にステージがあり、ギターを片手に歌っていたのは、
本物の歌手なのか歌手の卵なのか素人なのか知らないけれど、
客席から、曲に合わせて大合唱が起こったりしていた。
こんな場所に来たのは、生まれて初めてのことだった。
そして…何曲かのあと、
ひとりの女性がステージに出てきて、
「フランシーヌの場合」を歌ったのだ。
その歌を聴いたとき、胸がジーンと熱くなった。
これまで聴いたことのなかった歌なのに、
涙が出るほど、心を揺り動かされたのだった。
今でもこの歌は、頭から離れない。
3月30日になると、
「さんが~つ さんじゅうにちの~ にちようび~」
という歌が、自然に口をついて出てくるのである。
今日は、その3月30日である。
フランシーヌのことがあってから、47年が経った。
今ではもう、誰もこの歌を歌わないけれど、
僕の心の中では、永遠に響き続けている。
自転車旅行の、思い出とともに。
~ フランシーヌの場合~ 新谷のり子
https://www.youtube.com/embed/2dah_5_6gPs?feature=player_embedded
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