僕のほそ道   ~ のん日記 ~

  
これと言ったテーマはなく、話はバラバラです。 つい昔の思い出話が多くなるのは年のせい? 

気の毒な話

2017年02月26日 | 日常のいろいろなこと

週に4日、駅前のフィットネスクラブ「コスパ」に通っている。木曜日の休館日を除く平日の午前10時頃から12時半頃まで、プールで泳いだりジムでストレッチや簡単な筋トレをしたりしている。

気が進まない日もあるが、用のない限りなるべく行くようにしているのは、毎日が日曜日状態で、家の中でダラダラするのを防ぐためでもある。

何年も通っているおかげで、コスパでは多くの顔見知りも出来た。まあ、たいていは僕より年上の70歳代の人で、80歳を超えている人もいるけれど、皆さん、驚くほど元気である。コスパへ来ているから元気なのか、元気だからコスパに来ているのか…たぶん両方だろうけど、しかし中には体の不自由な人もいる。

そのうちの一人は車椅子の女性で、お父さんが僕と同い年というから40歳前後だろうか。コスパでは、プールで泳いでいる。

プールサイドまで、座ったままお尻の力で前に進み、ザブンと入水するのだが、水の中ではふわふわと、独特の泳法で気持よさそうに泳いでいる。

名前はヒロミちゃんという。

何年か前に偶然外で会い、「アイスクリームが食べたい」と言うので、近くのサーティワンに一緒に入って食べたことがある。

またある時は、駅で(ヒロミちゃんは電車で通っている)モミィと一緒にいる時にバッタリ出会って、それから僕の顔を見るたびに、「モミィちゃんは元気?」と聞くのが口癖になっている。

彼女が駅からエレベーターで降りてきた所で会うと、「押して~」とせがむので僕が車椅子を押してコスパまで行ったことも2、3回あった。これは僕に限らず、コスパの仲良しの人(まぁ女性ですが)に会ったら「押して~」と言っているようで、愛嬌いっぱいの明るい女性なのだ。


もう一人は、歩行が困難な70代後半の男性だ。毎日、ロッカー、プール、ジム、お風呂などで会い、挨拶をする。

よく話しかけてこられるが、僕がそれに答えても、その人は耳が遠くて僕の言葉が聞えないらしく、また自分の話の続きをするので、会話にならない。

ムツっとした表情で、誰とでも話す人ではないが、僕はその人と、もう何年も前からいろんな「一方通行会話」を交わしている(笑)。

その男性の症状は、歩く時の第一歩がなかなか踏み出せないのである。じっと立っている時は両足が震えている。歩こうとするのだが、小刻みに足踏みをする状態で、前に進まない。

だから、コスパへ行くエレベーターでも、みんなが乗って、その人が入ってくるのを待つのだが、小刻みな足踏み状態でその場から動けず、かなりの間、エレベーターの中の人たちは待たされる。本人はムッツリとして物も言わないので、急いでいる人は眉をひそめたりしている。

その足踏み状態から一歩を踏み出すと、もう、まったく足の悪い人には見えず、ちゃんと歩く。階段の上り下りもできる。そんな状態で、プールで水中歩行や、ジムでストレッチやバイクこぎなどに精を出しておられる。

しかし、歩くのがいったん止まったら、次の一歩には時間がかかる。

だから、ロッカーの狭い入口で、靴を脱いだ後や履いた後などに、ずでんと転倒することが多く、いつも入口近くのロッカーで着替えている僕は、そんな姿を見て、驚いて走り寄ったことも何度かあった。「大丈夫?」と言うと、「うん、うん」とうなずく。何度もバランスを崩したり倒れたりしているわりには、ケガをされないのは幸いだった。

うわさでは、要介護1に認定されている、とも言われていた。(ちなみにコスパへは電動自転車で通っておられた)

そういう身体の状態なのに、毎日のようにコスパに通っているのはえらい、と常々思っていた。普通なら家にいるだろう。

しかしそうすれば、気分も滅入り、体調も崩しがちになってくると思う。こうしてコスパに来ているからこそ元気も保てる、というものである。

だけど、もし自分だったら、この状態で、果たして来ることができるか、と考えると「無理!」と言わざるを得ない。

陰で「よくあんな状態で来るよなぁ。ワシやったら絶対に家におるわ」と、批判的に言う人もいたが、僕は「いや、あの人はえらい」とずっと思っていた。

その人を、最近、見かけなくなった。

病気でもされているのか、と少し気になっていたが、ある時、別の人との会話の中で、「〇〇さん、やめたなぁ」と、その人の話が出たときは驚いた。

「えっ、やめはったんですか?」「うん。1月いっぱいで、退会しはった」


僕はもっと詳しく聞きたかった。その話によると…

「やめたというより、やめさせられたんと違うか?」ということだった。

「どういうこと?」

と僕が聞くと、〇〇さんはそういう障害があるので、コスパ側が以前からやめてもらうように勧告していたという。

会員の人たちから「あれは危ないで」とか「エレベーターもあの人が乗るまでずっと待ちっぱなしや」とか、いろいろな声が出ていたようである。それでコスパ側もやむを得ず勧告を出していたのか、あるいは、この施設内でもしものことがあれば責任問題にもなりかねない、とコスパ側が思ったのか知らないが、〇〇さんがやめたのは、たぶん勧告が強まったからではないか、という話だった。

そうだったのか。

もし強制的にやめさせられたのなら、気の毒なことだ。これによって、〇〇さんが外出する機会はグンと減るのではないか。

外を散歩したら、車や自転車が通り抜けていくし、信号などもあるので、それこそ危険である。コスパだと、転倒さえ気をつけていれば他の危険はない。顔見知りもできて気分転換にもなる。その日課がなくなってしまったのだから。

時々、あのムッツリした顔を思い出す。
今頃どうしておられるのだろうか? 

 

 

 

 

 

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