3月7日。
「恒例」 の松原徳洲会病院の循環器科への検査&診察に行った。
最近は不整脈も糖尿病も肝臓の数値もわりあい安定しているので、
去年まで毎月行っていたのを、2ヶ月に1回に減らしてもらった。
小雨の中、8時40分にモミィを幼稚園に送って行き、
その足で駅に向かい、近鉄電車に乗って河内天美まで。
その駅から病院までは、歩いて5分の距離だ。
9時半に採血をし、待合で1時間余り待って、名前を呼ばれた。
年末年始の飲み過ぎが原因で不整脈がひどかった時期も、
なんとか切り抜けたようで、今は薬でうまく調整できている。
診察室でも、主治医と笑い話を交えながら談笑する…という雰囲気だ。
深刻めいた会話は皆無で、診察もすぐに終わる。 まあ、結構なことだと思う。
会計を済ませ、番号札をもらって投薬窓口で待つこと約30分。
ようやく自分の順番が来たが、僕の薬の量は他の人の平均量の何倍もある。
不整脈薬、尿酸値薬、ワーファリン、睡眠導入剤、精神安定剤…。
それらが各々60数日分出るわけで、薬剤師さんがひとつひとつ丁寧に説明するので、
僕の後ろにズラ~っと並んで待ってくれている人たちが気になっていたら、
「後ろの方、どうぞ、こちらのほうへ」 と、窓口にもう一人の薬剤師が現れた。
ビニール袋いっぱいの薬をリュックに入れて再び近鉄電車で藤井寺に戻った。
12時をちょっと過ぎている。 さて、これからどうするか…?
コスパでサウナにでも入ってから家に帰り、ビールを飲むのも悪くないな。
なにせ、きょうは特別な日なんだからな~ とぶつぶつ独り言を言いながら、
コスパのビルへ歩いて行くと、その入り口に、スーツ姿の男性が立っていた。
そして、その男性は、何かを懐かしむような目で、僕をじっと見つめていた。
「誰だろ…?」
と、最初はその人物を識別できなかった。
つい先日も、何十年と会わなかった人から声をかけられたことがあった。
その時も 「のんさんだよね。 ○○です」 と言われるまで誰だかわからなかった。
そしてこのときも 「ん…? 誰…?」 と思って、頭の中で記憶を検索した。
近づいてきた男性を見て、それが誰かとわかるのに3秒ほどかかったろうか…。
「これからコスパへ行くん…?」
そう声をかけてきた男性は、次男だった。
要するに、僕の息子だったのである。 とほほ。
後でその話を妻にしたら 「なんで自分の息子がわからないの?」 と笑われた。
次男も藤井寺市内に住んでいるのだから、いつ会ってもおかしくないのだけれど、
思いも寄らぬときにいきなり目の前に現れても、ピンと来ないものなのだ。
しかもスーツにネクタイ姿なんてイメージにないので「誰やのん…?」 となる。
こっちはいつものリュック姿だったので、次男はすぐに僕とわかったという。
「な~んや。 誰かと思たがな」 と僕は少し照れた。
藤井寺市内の建設会社に勤務する次男は、昼ご飯のためここへ来たという。
「昼ご飯、どこで食べるの?」 と僕は聞いた。
「そこへ入ろうかと思ってる」 と次男が、目の前のカレー店を指した。
「CoCo壱番屋」 の看板が上がっている。
僕は毎日のようにこの店の前を通るが、一度も入ったことがない。
外食では必ずビールを飲むので、カレーや丼の店には入る機会がないのだ。
しかしたまには食べてみたいと思う気持ちは、少しある。
よし、決めた。 今日の昼はビールを断念して、ココイチのカレーを食べよう。
「いっしょに食べよう」 と言って、二人でカレー店に入った。
何年ぶり…。
いや、次男が大人になってから、初めてではないか。
いつも、まわりに家族の誰かがいたから。
こうして2人だけで、昼食を食べるな~んてことは、まずなかった。
次男の子どものケイは1歳8ヶ月になる。
人見知りが強く、わが家に遊びに来ても、僕たち夫婦の顔を見ては泣く。
そのくせ、モミィが近づいたときには泣かず、むしろうれしそうな顔をする。
ケイも相手が子どもだと、安心するのだろうか。
「あした、会社休みだから、みんなで夜ご飯食べに行ってもいい?」
「ええよ。 モミィが喜ぶよ。 ところで、ケイは何が好きなんや?」
「このごろ何でも 『イヤ~』 と言って、食べないものが多くなって…」
「ふ~ん。 まあ、わが家に来たら気分が変わって、また食べるかも」
「だったらいいんだけどね」
そんな他愛ない話をしながら、昼食が終わり、彼は自転車で会社へ戻った。
僕は満腹になり、コスパへ行くのをやめ、そのまま歩いて家に向かった。
風が強く、冷たかった。
40年前の今日は、暖かく穏やかな春の一日だったなぁ、…と遠い日を思った。
今日は、僕たち夫婦の40回目の結婚記念日だった。