このブログを始めたのが2007年12月でそれから丸7年が過ぎた。耳鳴りが発症したのがその年の9月で、ブログの最初の記事にも耳鳴りのことを長々と書いている。ブログも7年、耳鳴りも7年だ。その間24時間休みなくジーンジーンと左耳の奥、つまり頭の中で鳴り続けている。今はもう沢田研二の「勝手にしやがれ」じゃないけれど、勝手に鳴ってやがれ(笑)…という心境である。
…で、その7年前の耳鳴り発症の時から、不眠症になった。夜中に何度も目が覚めるのだ。そこからなかなか寝付けない。これも辛いので、医師に伝えて睡眠薬を処方してもらった。その前に、デパスという精神安定剤(これを飲むと何となく気分が落ち着く)ももらっていたが、もう少し睡眠効果の高い睡眠薬も服用することにした。それも7年間続けてきた。1回に2錠服用する薬だが、クセになってはいけないので1錠だけにしたが、まあまあ効いてくれて、睡眠障害も少しはマシになった。でも、毎朝デパスも飲んでいるし、さらに睡眠薬を服用するのは、できれば止めたいな…と思っていた。そんなとき、あるきっかけがあった。先月のことだ。
2ヵ月に1度、持病の心房細動(不整脈)に関する検査と診察で病院へ行っているが、先月その病院の待合で座っていた時、隣で高齢の女性がウトウトとしていた。そのウトウトの仕方が異様だった。まるで夢遊病者のようだった。「この人、大丈夫かいな?」と思っていると女性はハッと目を覚まし、すぐそばの受付の看護師さんのところへフラフラと歩いて行き「寝ていたんですけど…私の名前はまだ呼ばれていませんか?」と言った。「まだですが…」と看護師さんはその女性をじっと見て「眠いのですか? 眠いだけですか?」と問いかけた。様子がおかしいのでそう訊いたのだろう。「はぁ。眠い…だけ…」みたいな返事に対して看護師さんはカウンターから出てきて「睡眠薬を飲んでいるのですね?」と訊き「いつごろ、何錠飲みましたか?」と女性の両肩に手をかけて再び問いかけた。女性は半分眠っているような声で「昨日の晩、8時に4錠…夜中に4錠、また夜中に4錠、また夜中に…と計16錠飲んだことを伝えた。看護師さんは「まだお薬が体に残っていますね。そちらの部屋で横になってください」と車椅子に女性を乗せて別室へ運んで行った。女性はまた朦朧となっていたようだった。
この光景を目の前で見ていた僕は、睡眠薬の恐ろしさにぞっとした。薬を飲んで眠って目を覚ましてまた薬を飲んで…を繰り返し、一晩に16錠も飲むなんて…。ドラマなんかでは見たことあるけれど、実際にそういう人を見たのは初めてだった。僕は軽い薬を1錠だけだが、その薬に依存していることは事実である。これは止めたほうがいいかなぁ。でも、それでまた不眠症がひどくなったら身体に悪いしなぁ…と思い悩んでいるうちに名前を呼ばれ、診察室に入った。
結局、診察では睡眠薬のことには触れなかった。そして会計を済まし、薬の窓口でいつものように何種類かの薬をもらって中身を確認したら、何ということか、睡眠薬が入っていなかった。「薬はいつもどおりでいいですね」と担当医師は言っていたが、それならこの薬も入っているはずだ。しかしゾルビデムといういつもの睡眠薬が入っていない。医師が忘れたのだ。窓口で薬剤師さんが「これで良かったでしょうか?」と訊いたので「睡眠薬が入っていませんが…」と言おうとしたが、やめた。とっさに「なければないで、何とかなる」と思ったのだ。これまでの薬が十数錠残ってもいたし、まぁいいや…。
それから1ヵ月余りがたった。十数錠残っていたのもほとんど飲んだが、ここ何週間は全く睡眠薬なしで眠っている。ないのだから飲めないのは当たり前だ。しかし飲んでいたときとほぼ同じで、夜中に目は覚ますが、割に眠れている。結果として、医師が忘れてくれたことがよかったわけで…(笑)。
病院の待合でぞっとするような光景を見たあと、医師が睡眠薬だけ処方するのを忘れたというのは、きっと何かの必然だ…と思いたい。薬は、なるべく少なくするに越したことはありませんものね。
しかし、手放しで喜ぶわけにはいかない。またいつか、薬がなければ眠れなくなる時が来るかも知れないし、これまでも、そういう経験が度々ありましたので。
それはそれで、覚悟しておかなければ。