電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

香月美夜『本好きの下剋上』第1部「兵士の娘」第I巻を読む

2017年10月12日 06時02分28秒 | -香月美夜
香月美夜著『本好きの下剋上〜司書になるためには手段を選んでいられません」第1部「兵士の娘」第I巻を読みました。このシリーズは、本編がWEB小説ですでに完結しており、全部を無料で読むことができます。実はすでに一度読み終えていますが、その面白さにハマってしまい、現在T/Oブックスから刊行されている紙の本も集め始めたという次第です。そういう事情ですから、新刊であってもネタバレに配慮する必要は薄いだろうという判断です。



主人公・本須麗乃は無類の本好きで、大学を卒業後には大学の図書館に司書として就職が決まっていたのに、地震で崩れてきた自宅の書棚の本に埋もれて死んでしまいます。次に目覚めたのは、どことなく中世ヨーロッパ風の街エーレンフェストの職人街の一角に住む兵士の娘・マインとしてでした。ライトノベルによくある奥の手、「転生」です。

ところがこの街には、文字はあっても本がほとんど見当たらない。たまたま見つけた本は、羊皮紙に書かれ革で装丁された豪華な貴重本で、貴族の持ち物しかないのです。「本がなければ作ればいい」と、虚弱な身体を嘆きながらマインの幼なじみ・ルッツとともに奮闘します。エジプトのパピルスは編むのに挫折、メソポタミアの粘土板もダメ、中国の木簡や竹簡も、間違えて暖炉で燃やされてしまいます。とにかくこの「Do It Yourself !」の過程が、元理科少年にはいちいち面白い。深く深く共感してしまうのです(^o^)/

途中、副産物としていろいろ作りだしてしまうのが、リンスインシャンプーだとか手編みのトートバッグだとかレース編みの立体的の髪飾りというようなものなのですが、実はこれらが物語を前に進めていってしまいます。もうひとつ、門番の助手としてこの世界の文字を覚え、筆算力を活かして書類の計算チェック係として重宝されるなど、麗乃時代の教育の成果も充分に役立っています。

そうして、この巻のハイライトは、商人になりたいルッツの願いをマインが仲介して、新興のギルベルタ商会の主人ベンノとの接点が生まれ、そこで「植物紙を作る」という課題がクローズアップされるあたり。マインとルッツは、紙を作ることができるのか?



老母によれば、小学生時代、学校から自宅まで本を読みながら歩いて帰る生活で、担任の先生から「危ないから家庭で注意してください」と言われたという前歴を持つらしい(^o^;)当方には、なんだか親近感がわく主人公です(^o^)/
一度WEB版で読み終えてはいますが、紙の本で読む楽しさはまた格別です(^o^)/

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