電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

オーマンディ指揮フィラデルフィア管でベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」を聴く

2016年07月24日 06時03分54秒 | -オーケストラ
よく晴れた休日、早朝まだ涼しいうちに果樹園に出て作業をした後、大汗をかいてシャワーを浴びて朝食。食後の休憩の際の音楽タイムは、至福の時間です。今回は、「クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~」(*1)で紹介されていたオーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団によるベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」の mp3 形式のファイルをダウンロードして、じっくりと聴きました。



実は、この録音については若い頃から興味を持っておりました。1970年のCBS-SONYのカタログにおける、ユージン・オーマンディの位置づけについてです。このレコードカタログにおける指揮者別の掲載順とタイトル数は、次のようになっています。

  1. レナード・バーンスタイン 47タイトル
  2. ジョージ・セル     35
  3. ピエール・ブーレーズ   11
  4. ロバート・クラフト     1
  5. ブルーノ・ワルター    48
  6. ユージン・オーマンディ   3
  7. クラウディオ・シモーネ他  4

ご覧のとおり、二枚看板が現役のバーンスタインと故ワルターで、来日予定のセルとブーレーズが強力にプッシュされているといったところでしょうか。
ここで、オーマンディとフィラデルフィア管の3タイトルというのは、

  • ベートーヴェン オラトリオ「橄欖(かんらん)山上のキリスト」
  • ブルックナー 交響曲第5番(原典版)、テ・デウム
  • ムソルグスキー 「展覧会の絵」「はげ山の一夜」

というものです。



はて、オーマンディとフィラデルフィア管といえば、かつてはベートーヴェンの交響曲全集もまとめ、米コロムビアのドル箱の一つだったのではないか。あの膨大な録音はいったいどこへ行ったのか? と探して見ると、案の定、二枚組2,500円というWシリーズとして、様々な組み合わせで展開されておりました。カタログで見るその数は、なんと42タイトル!



例えばこのベートーヴェン「英雄」は、チャイコフスキー「悲愴」、ベートーヴェン「田園」、ドヴォルザーク「新世界から」、ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第5番"皇帝"」と組み合わされて、計4種類のタイトルを構成しています。レコード会社の担当者にしてみれば、ネームバリューが商業的に便利であるだけでなく、内容的にもイチ押しの演奏だったのではないか。

CBS-SONYで、オーマンディがなぜ冷たい扱いを受けたのかは、想像をたくましくするしかありませんが、後の同社とカラヤンとの結びつきの強さを思う時、あの「絶対に許さない」と誓った(*2)カラヤンの影響力をつい連想してしまいましたが、年代的に食い違うみたい。どうやらワタクシの邪推のようです(^o^;)>poripori

でも、この演奏! 冒頭の充実した出だしといい、ゆったりとしたテンポで堂々と展開される、見事な「エロイカ」ではないですか! 第3楽章のホルンの響き等、実に見事です。たしかに、私の好きなジョージ・セルとクリーヴランド管による、きりりと引き締まって緊張感に満ちた演奏とは方向性が違いますが、当時の主流派だった「悠然たるテンポに基づく堂々たる英雄」の姿をよく表している演奏だと思います。忘れ去られるには惜しい、立派な説得力のあるものだと感じます。

私の場合、ジョージ・セルの他には、古楽の影響を受けた、速いテンポで活気あふれる演奏を好んで聴いていますが、でもこうしたオーソドックスな表現の魅力も充分に感じられます。誰が何と評しようと、いい演奏だと思います。

(*1):ベートーヴェン:交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」~「クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~」
(*2):カール・ライスターの「一番印象深かった録音」~「電網郊外散歩道」2005年5月

※文中の一部を訂正しました。(2016/07/25)


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「後の同社とカラヤンとの結びつきの強さ」 (pfaelzerwein)
2016-07-25 00:16:34
1987年11月からですね。カラヤンとの関係は盛田との関係となっていますが、ザルツブルクの自宅のアニフにプレス工場を作ったのが1986年ですからそれより一年前です。

1970年代にはソニーを通じてカラヤン云々の政治力はソニーには全く無く、後にはカラヤンも追い出される感じになるので、業界的には最終的にそれほどソニーが力を持たなかった証拠に、BMGも結局残りました。

オーマンディーの評価は、そのサウンドが今でも、クリーヴランドよりもフィラデルフィアには残っていることでしょうか。そもそもセルの方は欧州でも活躍した音楽家で系譜にも入りますが、オーマンディの方はヴァイオリニストで裸一貫でアメリカンドリームというのが違いますよね。勿論、こちらの方が商売になったでしょう。
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1987年11月 (pfaelzerwein)
2016-07-25 00:20:21
SONYによるCBSの買収です。
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pfaelzerwein さん、 (narkejp)
2016-07-25 17:40:56
コメント&ご指摘ありがとうございます。なるほど、1987年ですか。それでは私の推測は見当外れですね。もしかしたら、すでに米CBS時代にその傾向は始まっていたのかもしれません。それで、RCAに移籍の話が具体化した? このあたり、PCの勃興期にあたり、プログラミング三昧の生活だったためでしょうか、年代が記憶にありませんですね~(^o^;)>poripori
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オーマンディ再評価 (安倍禮爾)
2016-07-29 18:29:32
narkejpさん

 オーマンディは「通俗名曲指揮者」とか「娯楽路線指揮者」とか日本では言われてキャリアを終えた指揮者だったように記憶しています。同じころボストン交響楽団の指揮者だったエーリッヒ・ラインスドルフも「凡庸指揮者」とされて、日本では全く評価されませんでしたっけ。
 ただ、ここ数年、特にレコード藝術の再発売シリーズの評価で石原立教氏が、特にオーマンディを見直して、今の耳で聴くと何と正統的な再現演奏だろうと思った、とベートーヴェン全集やブラームス全集を高く評価していました。音が明るくてはっきりした演奏なので、60年代当時のフルトヴェングラーとかトスカニーニなどの演奏と比較されて「安く」見られたんでしょうか。
 私も最近オーマンディを買い直して聴いてみましたが、とってもシンプルで聴き易い優れた演奏だと見直したものです。眉間に皺を寄せているような演奏の方が我々日本人は、ベートーヴェンやブラームスに関しては好きなんですが、今になって聴き直すと、さらにラインスドルフ・ボストンの演奏なども昔は気付かなかったところがあるようです。
 オーマンディはRCAから強く誘われて移籍したそうですが、CBS時代の演奏もなかなかのものです。
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安倍禮爾 さん、 (narkejp)
2016-07-29 19:32:07
コメントありがとうございます。オーマンディの「エロイカ」は、なかなか良かったです。あらためて見直しました。
CBS-SONYでオーマンディの録音が冷遇された件、Wikipediaにそのあたりの事情が書いてありました。CBSがアメリカ生まれのバーンスタインに破格の待遇を出して、それに不満なオーマンディは1968年にはRCAに移籍していたようです。なるほど、他社のアーティストをプッシュするわけにはいかないということでしたか。
ヴァイオリニストから裸一貫で出世した彼は、不満があってもじっと我慢してしまうタイプだったのかもしれません(^o^;)>poripori
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