電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

スティーヴンソン『宝島』を読む

2010年11月04日 06時05分16秒 | -外国文学
読む本を選ぶとき、最近は本の新旧にはあまり関心がなく、むしろ活字の大きさが問題です。とくに、寝ながら読むことが多い文庫本は、どんなに懐かしい本であっても、文字が小さいと、そもそも字面を追って読むこと自体が困難です(^o^;)>poripori
で、光文社の古典新訳文庫に、字の大きさと読みやすさで、ついつい手が伸びます。たとえばこのスティーヴンソン『宝島』(村上博基訳)です。

この物語は、古典中の古典、少年少女冒険物語全集という企画があったならば、ジュール・ヴェルヌのいくつかの作品とともに、まず筆頭に挙げられるべき名作でしょう。

主人公ジム・ホーキンスは、父親が経営する港の旅亭「ベンボウ提督亭」(*)を手伝う少年です。自らをキャプテンと呼ばせる老水夫が滞在するようになり、片足の男を恐れ、船が来ないかを見張っているようです。やがて、ブラックドッグという男が現れ、黒丸票と惨事がもたらされますが、ジムは宿代を探す途中で、老水夫の木箱の中から一枚の地図を見つけ出します。これは、実は海賊フリント船長の隠した宝島の地図でした。土地の大地主のトリローニさんと、勇気ある医者で判事のリヴジー氏とともに、スモレット船長以下、ジョン・シルヴァーという片足のコックなど得体の知れない船員を雇い、帆船ヒスパニオーラ号を仕立てて、宝島を目指す冒険の旅に出ます。

当初、集まりの悪かった船員も、ジョン・シルヴァーが声をかけてようやく員数が揃います。でも船長は、自分が人選に関わっていない船員の顔ぶれが気に入りません。宝島が近づくにつれて、その懸念は現実のものとなり、反乱の気配が濃厚に漂います。そして、敵と見方をあぶり出すために、先に船員を島に上陸させたとき、反乱と殺戮が始まるのです。身軽なジム少年は、船旅の途中に、リンゴ樽の中で反乱の組織化の企てを耳にしていましたので、味方に警告し、上陸のボートに飛び乗ると、ただ一人、真っ先に島の内部に駆け込んで行きます。

この後の展開は実に思いがけないもので、ワクワクドキドキ、作者の腕前の冴えを感じさせます。もちろん、現実には荒くれ男たちの殺戮と暴力の嵐ですので、人畜無害中年の想像力はおっかなびっくりの及び腰になりがちですが、裁判で少年の正当防衛の立証はできるのだろうかとか、そんな余計な詮索はいたしません(^o^)/
あくまでも、これは物語であります。しかも、必ずしも少年のための冒険物語ではなくて、大人が読んでも充分におもしろいもので、確かに名作です。加えて、解説と訳者あとがきが興味深いことをも、忘れずに付け加えておきましょう。

(*):字が小さいと困るのは、例えばこれです。「ベンボウ」なのか「ベンポウ」なのか、はたまた「ペンボウ」か「ペンポウ」か、実に判読に困ります。 ブログ主宰者の皆様にも、文字の大きさについて、中高年に暖かい配慮をお願い申し上げまする(^o^)/

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2 コメント

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面白かった! (こに)
2014-01-08 16:01:44
名作は誰が何と言おうがやはり名作ですね~。
少しずつですが、昔々に読んだ『古典』と言われるものを再読していきたいと思っています。
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こに さん、 (narkejp)
2014-01-08 20:47:38
コメントありがとうございます。『宝島』、ほんとにワクワクドキドキのスリルですね。
世界の名作と言われる本の中でも、私はプーシキンの『大尉の娘』の新訳・新装版が出ないかと期待しておりますよ。ないのですね~、活字も大きめで、現代的な翻訳が。光文社古典新訳文庫の担当者さ~ん、よろしくお願いしま~す!
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