電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

畠中恵『うそうそ』を読む

2009年05月20日 06時30分46秒 | 読書
いつにもまして紛らわしい題名です。「そんなの、嘘!嘘!」の「うそうそ」ではなく、「たずねまわるさま。きょろきょろ。うろうろ。」の意味だそうな。畠中恵さんの『しゃばけ』シリーズ第五弾、『うそうそ』です。

病弱な若だんな一太郎が、箱根に湯治に行くというのですから、当シリーズをずっと読んできた読者としては、びっくり仰天です。しかも、地震と女の子の声と若だんなを殺めようという声がいきなり登場するとあっては、1日1章などと悠長なことを言ってもおれません。思わず読みふけってしまいました。後半の、小さな女の子の不安な心理描写はなんだか理屈っぽく説明的なのですが、天狗が群れ飛び、仁吉と佐助が本性のままに大暴れする場面や、朝顔の根を引っ張ると熱湯が噴き出す地獄谷の場面など、むしろ SFX を駆使したアニメーション映画に最適と思われるほどに、漫画的なファンタジーにあふれています。

いつもの病弱な一太郎のお話とはいっぷう異なる旅の物語は、三春屋の栄吉も登場せず、むしろ新龍や姫神などの新たな登場人物によって、新鮮な印象を受けます。

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